発達障害のわが子に「中学受験」の選択肢!?中学以降の進路選びで大切なコトとは【編集長インタビュー企画】

ライター:発達ナビ編集部
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小学校は通常学級で学んでいたけれど、中学校以降の進路はどうしよう?高校受験を見据えると公立中進学でいいのか、中学受験で中高一貫校を狙ったほうがいいのかなど、わが子の将来のためにはどんな環境で過ごすのがよりよいのか――悩みを抱える親御さんは多くいらっしゃいます。そこで、特性のある子の中学進学について、LITALICOライフのコンサルタントで、発達障害のある子の中学受験に関する勉強会講師もつとめる高橋孝輔さんに話を伺いました。高橋さんは、私立中学受験に特化した学習塾での講師の経験も持っています。

発達障害がある子の中学校選びについてどう考える?

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発達障害がある子どもの小学校卒業以降の進路を考えるとき、中学校での3年間だけを考えて選ぶ、というより、その先の高校や大学、専門学校、そして就労まで見据えてどんな進路がわが子にとって最善だろうと考える親御さんは多いのではないでしょうか。でも、どの選択肢をとるべきなのか逡巡している方が多いのもまた事実です。

そこで今回、LITALICOライフのコンサルタント・高橋孝輔さんに話を伺いました。中学受験塾の講師として指導に携わる傍ら、LITALICOライフのコンサルタントとして、発達障害のある子とそのご家庭の受験や進路、将来のライフプランに関するご相談を受けています。

発達障害があるお子さんが中学校選びをするとき、そして中学受験という選択をするとき、考えておきたいことはどのようなものなのでしょうか。

3年後の高校受験を見据えて、中学受験を検討する家庭も

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発達ナビ編集部 牟田暁子(以下、――):発達ナビのユーザーの皆さんは、お子さんの進路について悩まれていて、特に中学校進学となると、高校受験や、その先の進路まで頭をよぎります。公立の中学校に進んで内申点をちゃんととれるのか、中学受験を視野に入れたほうがいいのか…。

高橋さんはLITALICOライフで勉強会や個別相談を担当されていますが、相談に来られる方は、中学校進学についてどのようなお悩みをお持ちですか?また、お子さんの年齢はどのくらいの方が多いですか?


高橋孝輔さん(以下、高橋):中学進学に関するお考えは皆さんそれぞれで、小1から考える方もいれば、小5・小6でという方もいます。多いのは、小3から小4ですね。お子さんの特性に合わせてどういう進路を選ぶべきか、中には高校やその先の就労まで視野に入れていらっしゃる方もいますが、相談の中で多いのは、発達特性はあるものの学力に大きな心配のないお子さんで、公立に進むのか、それとも中学受験をして私立中を選ぶかのお悩みです。

――:公立の中学校だと3年後には高校受験。内申書が影響しますよね。テストの点数以外に、授業態度や生活態度など、学力以外の部分も評価対象になるため、特性があるお子さんだと、そこが心配になるという声も耳にします。

高橋:そうですね。中学受験を検討される親御さんの場合は、中高一貫の学校なら高校受験がないことや、中学受験では内申書が必要ない点に魅力を感じている方もいらっしゃいます。

――:小学生の段階で受験勉強を頑張って、中高の6年間の学生生活のゆとりをもって送ろう、という考え方ですね。

志望校選びは、どうやって考えればいい?

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――:将来の就労を踏まえてというのもありますが、多感な10代の時期の6年間を過ごす場所ですし、どんな学校を選ぶのかは大事ですね。そこで出会う先生や友人、どういう校風の中で過ごすかは、そのあとの人生に影響しそうです。どういう基準で学校を選ぶとよいと考えていますか?

高橋:私は、親御さんにまず、お子さんが得意なことは何かを聞くようにしています。例えば、1つのことを極めるタイプで歴史が好きだとしたら、歴史系の部活があるかどうかという視点で学校を選んでもいい。公立だと、歴史の授業はありますが、部活まではないところが大半です。私立はその学校独特の文化を持っていて、ユニークな部活がある学校も多いです。

歴史でなくてもコンピューターやスポーツでもいいのですが、つまり、お子さんが好きなこと、得意なことを伸ばせる環境を重視するという選択です。お子さんが幸せを感じながら、伸び伸びと学べそうな学校を選ぶことをおすすめしています。中には特性への配慮に力を入れている私立中学もあります。

――:中学受験というと偏差値に目が行きがちですが、本人が楽しく通えるかどうかは、とても大事ですね。将来に向けて、ポジティブな一歩を踏み出せる学校生活をおくってほしいですから。

お子さんにとって、ベストな環境を考える

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高橋:もちろん、私立だから全部の学校がいい、お子さんに合うということではありません。例えば、管理型で校則が厳しいという環境がそのお子さんに合わなければ、私立でもいい選択にはなりません。逆に、ある程度決められたルールの中で過ごしたい、自由すぎると何をしていいか、困ってしまうタイプのお子さんには管理型のほうが合っているかもしれません。お子さんに合う学校の見極めはとても重要です。

――:わが子に合う学校を見極めなくてはいけませんね。

高橋:そうですね。お子さんにとってベストな環境を知っているのは、やはり親御さん自身なんです。LITALICOライフの個別面談ではそういったお子さんの特性にあった進路について、親御さんと共に紐解いていくこともあります。

――:校風については、文化祭に行くといいと聞きますが、具体的にどういうところを見てくるといいとお伝えしていますか?

高橋:校風は入ってみないと、正直分からない部分はありますが、文化祭に行くなら、見てほしいのは先輩の様子です。先輩の遊び方といいますか、はじけ方、人との接し方、雰囲気や風貌など。それを見て、お子さん自身がこの学校で中2、中3になったら、自分はこういう感じになるのかな…とイメージが重なるかどうかもポイントです。

――:学力に少し心配がある場合はどうでしょうか?

高橋:私立中学校は、受験つきの通常学級だと考えてください。学力に不安がある場合、受験をなんとか乗り切れたとしても、入学後に、ふだんの授業でそのお子さんにとって“ずっと大変な環境が続いてしまう”ことになります。テストの点数や学内成績がオープンになることもあるので、周りの友だちと比較して本人が気にしてしまうなど、自信を失ってしまう場合もあります。その点も考慮するとよいかと思います。

――:確かに、そういうことは起こりうるでしょうね。本人はずっと頑張らなきゃいけないし、それを強いるのはつらいですよね。

高橋:私立中学を選択する場合はもう1つ、念頭においていただきたいことがあります。お子さんの得意なところを伸ばせるという意味で、私立を選択するのはよいと思います。ただ、特性のある子だから、そこに手厚くフォローを求めて選ぶとなると、少し違ってきます。

一般的に私立中学校は療育という観点で教育をする場ではないのです。障害の有無にかかわらず、生徒それぞれがいろいろな個性や凸凹を持つなかで、当然診断のつく子もつかない子もいて、先生は手が届く範囲で指導することになります。そこは理解しておいたほうが、あとあとイメージと違ったということにならないかと思います。

公立中学進学はどうか?通常学級、それとも特別支援学級?――高校受験では内申点が必要?

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――:個別相談にいらっしゃるご家族で、公立の中学校の通常学級か特別支援学級かで迷う方もいらっしゃると思います。その場合、どんなアドバイスをされているのですか?

高橋:発達特性へのフォローを優先するなら、療育に軸足をおく特別支援学級をおすすめすることが多いです。内申点がつかない(ついても低い)ため、高校受験時の選択肢がなくなるのではと心配される方も多いのですが、内申点がなくてもチャレンジできる学校は増えてきています。

例えば、通信制高校や高等専修学校などは、内申書は不要です。通信制高校は卒業までに何年かかっても構いませんし、決められた単位数をとれば高校卒業資格を得られます。また、高等専修学校は手に職をつけるための学校で、看護や服飾、プログラミングやデザインなど、8つの分野があり、興味のある分野の知識を深めることができ、就労の道筋も見えやすいという利点があります。

――:学力はあるものの特性による困り感があって、どういう学校を選べばいいか分からない親御さんもいらっしゃるのですが、そういうケースについてはどのようなお話をされるのでしょう?

高橋:学力のあるお子さんなら私立中学受験も選択肢としてありますが、学校生活に不安があるようでしたら、特性のあるお子さんを多く受け入れている学校もあります。一般的な私立中学校とは異なり、特性への配慮があったり、個性を尊重してその子に合う学習方法や環境を考えてくれたり、就労体験も積めたりする。そういった学校を探すのも手です。

中学受験はご家庭の将来を大きく左右する。ライフプランと一緒に考えることが重要

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――:中学受験に話を戻しますね。

私の息子も中学受験をしましたが、受験勉強は子どもとの二人三脚でした。息子は漢字が苦手なのですが、例えば社会や理科の問題を解いて×だとしますよね。そのとき、漢字が間違っているのか、それとも本当に分かっていなくて間違えるのかが判断がつかなくて。ですから、社会や理科などは問題集を見ながら口頭テストをしました。それとは別に、理科の漢字ノート、社会の漢字ノートと教科別に作りました。漢字は漢字で覚えるためです。口頭テストで9割がたこたえられるようになり、漢字も書けるようになってから初めて、一人で問題を解くことをさせました。職場の昼休みはまるつけやオリジナル問題集づくりでつぶれるし、夜は塾へのお迎えや口頭テストでつぶれるし…なかなか大変でした。


高橋:それはスゴイ!こういう熱量が高校受験のときに出るかというと、出ないんですよ。中学受験特有のことなんです。高校受験のころは思春期もからむため、親の言うことを素直に聞かない時期に入っていますし。中学受験を選択するということは、自分の子どもが受験する=中学受験生の親になるという選択でもあるんです。人生の舵をきるような、その後の家族の将来に大きな影響を与えることなんです。

――:実際のところ、経済的な影響も大きいですね。学費だけでなく、塾の費用も結構かかります。息子も小学4年生で塾に通い始めた当初は、集団で授業を受けるタイプの塾は合わなくて、個別指導塾へ通いました。また、受験前の何カ月かは家庭教師をつけたため、かなりの出費でした…。

高橋:私立で中高6年間の学費、塾代を含めると、総額で1000万円とも言われています。その場その場での対応では間に合わないので、計画性をもって、お金の準備が必要ですね。兄弟がいたら、2倍、3倍とかかることも考えておかなくてはいけません。

進路についてご相談にいらっしゃる親御さんには、あえて最初に将来像を投げかけます。「お子さんに、将来どういうふうになってほしいですか?」と。その段階では漠然とした答えが返ってきます。将来を描こうとしても、その途中途中でどういう道があるのかが分からないので、描けないのです。そこで、さまざまな情報を提示しながら、一緒に整理していきます。

どういう仕事につくと幸せに暮らせそうか。大学に行くか行かないか。大学に行くなら高校卒業資格が必要。そうなると、どういう高校を選ぶのか。逆に、手に職をつけて早く自立する道を選ぶなら、大学は不要で専門学校を選ぶなど。将来像から逆算すると、具体的な道筋が見えて、必要なお金も見えてきます。

――:子どもにできるだけのことはしてあげたい。そう思うものの、具体的にどう考えて、いつから準備すればいいかはよく分からないという親御さんも多いと思いますが、一緒に整理してもらえるのはいいですね。

高橋:教育費がかかるとなったときに、親御さんはそれを削る判断には至らないことが多いです。教育費の優先順位は非常に高い傾向にあります。その分をどこから捻出するかというと、ご自身の老後の資金を一時的にそちらに充てるというケースが目立ちますね。老後はまだ先のことと思っていらっしゃる方が多いですが、中学受験は学費も老後の資金も合わせて、ライフプランと一緒に考える必要があるんです。

――:発達ナビのユーザーの皆さんはお子さん思いです。お子さんのためにより多くの選択肢を持っておきたいと思われますから、自分自身のことは後回しになりがちな面もあります。老後の資金についてもちゃんと気づかせてもらいながら、発達特性も踏まえた進路の相談にのってもらえるのは、嬉しいですね。

中学受験をテーマにした勉強会を開催中

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――:中学受験など中学校以降の進路のことは、通常は塾や学校に相談することが多いですが、特に中学受験について等は特性のある子だと相談しにくいという人も多いようです。

高橋:そうですね。塾の先生は、障害の領域について詳しくない場合もあります。経験的に、多動の傾向がある子、学習障害、自閉症の子は分かっても、適切なアプローチができているかは、その先生によると思います。

LITALICOライフでは、発達障害のある子の保護者の方を対象に、中学受験をテーマにした勉強会を開催しています。発達特性も踏まえた進路について知ることができる機会です。無料なので、ぜひ気軽にご参加いただきたいです。

――:お子さんの特性はそれぞれ違うので、進学については悩むのは当然のこと。中学受験についても、特性に理解のある学校情報、志望校選びのポイント、さらにはお金のことまで、総合して聞くことができるのは安心ですね。

高橋さん、今回は分かりやすくお話しくださり、ありがとうございました。

LITALICOライフの無料勉強会に参加するには?

LITALICOライフでは、「中学受験」をテーマにした保護者向けの勉強会を開催しています。発達障害に理解のある学校例、志望校選びのポイント、塾選びのコツと活用法、具体的な学費や準備することなど、発達障害のある子の中学受験のポイントがギュッと詰まった内容です(所要時間は1.5時間)。希望者には個別に進路相談なども実施しています。
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お話を伺ったコンサルタント

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高橋孝輔(たかはし こうすけ)
私立中学受験に特化した学習塾で理科の講師として、さまざまな生徒の指導にあたる。そのキャリアを生かして、LITALICOライフでは、のべ300名以上の保護者やお子さんと関わり、進路選択において多数のサポート実績をもつ。

LITALICOライフについて

LITALICOライフはお子さまとご家族が「自分らしい人生」を歩んでいくために障害分野とファイナンス、その両方の専門家としてライフイベントやライフプランの見直しを相談できるパートナーです。社会資源やサービス・お金の知識といった幅広い内容を身につけることができる勉強会や、専門領域をもつコンサルタントとの個別面談・プランニングを提供しています。

取材・文/安井万季子
撮影/田村健児
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