「正当な要望」と「クレーム」の線引きポイントとは?教師をやる気にさせる3つのステップも――保護者と教師がパートナーとなるために【明治大学教授・諸富祥彦】

ライター:諸富 祥彦
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私は20年あまり、千葉県内の中学や高校でスクールカウンセラーをしてきました。また、30年近くにわたって多くの小中高の先生方と親密な関係を築き、1999年からは「教師を支える会」を主宰しています。長年、保護者と教師の双方からの悩みをうかがってきました。前回に続いて今回も、保護者の方に向けて、先生とより良い関係を築くためのアドバイスをお伝えしていきたいと思います。

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執筆: 諸富祥彦
明治大学文学部教授
明治大学文学部教授。教育学博士。 世界を変えるため、時代の精神(ニヒリズム)と「格闘する思想家・心理療法家」(心理カウンセラー)。 日本トランスパーソナル学会会長、日本カウンセリング学会認定カウンセラー会理事、日本生徒指導学会理事。教師を支える会代表、現場教師の作戦参謀をしている。

教師が保護者から言われてうれしい一言

前回のお話

もし担任が「ダメな先生」だったら?わが子の「困った行動」を伝えられた親がすべきこと【明治大学教授・諸富祥彦】のタイトル画像

もし担任が「ダメな先生」だったら?わが子の「困った行動」を伝えられた親がすべきこと【明治大学教授・諸富祥彦】

このコラムをお読みの保護者の方に質問です。学校の先生が保護者から言われて「うれしい」一言をご存じでしょうか? 
ちょっと考えてみてください。

「先生が担任で本当に良かったです」
「来年も先生が担任だといいのに」
「先生のおかげで〇〇ができるようになりました」


いろいろとうれしい言葉はあるでしょう。
私が、知り合いの先生から聞いて「なるほど」と思ったのは――

「何かお手伝いできることはありますか?」

という一言です。その先生は、次のように語っていました。

「僕たち教員は、猫の手を借りたいほど忙しいです。でも、保護者の方に実際にお手伝いいただく場面というのはあまりないんです。それでも、僕たちの気持ちをくんでくれて『何かお手伝いできることはありますか?』と保護者の方に言われるとうれしいですね」

教師のやる気をアップさせる保護者とは?

子どもが学校で良い体験ができるように教師を応援する親。逆に、何かあったら教師に文句をつける親。
どちらが教師のやる気をアップさせる保護者であるかは明白でしょう。
教師にクレームばかりつけていると、めぐりめぐって保護者や子どもに〝損〞が返ってきます。

「あの保護者の言うことは大げさだから、話半分に割り引いて聞こう」
「あの子どもにかかわると、背景にはあの親がいるのか……」

そんなふうに教師に思わせて、意欲を削いでしまうと、教師がその保護者の子どもとかかわることに苦手意識をもつようになるのは想像にかたくないでしょう。

先生にお願いするときの3ステップ

保護者から先生にお願いをするときには、次の3つのステップを踏むと効果的です。
 
1つ目は「先生、いつもありがとうございます」と感謝を示すこと。

2つ目が、抽象的な要望ではなく、具体的な行動レベルのお願いをすること。
 
3つ目が、勇気づけです。


「ほかの先生じゃダメだけど、先生だったらやってくださると思って」
「信頼している先生だからこそ、申し上げるのです」


などとその先生のことを「信頼している」「期待している」というメッセージを伝えて、先生のやる気を喚起させるのです。
特に、40代の保護者と20代の先生という組み合わせだと、保護者から見て先生が頼りなく思えてしまいがちです(これが、保護者が50代だと「20代にもいいところがある」と余裕が出てくるものです)。20代の若手教員を一番否定しがちなのが、40代の保護者なのです。
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