私立中で初めて手にした、いじめとは無縁の6年間。学歴カーストがASDの私を守ってくれた…?発達障害がある子の学校選びに思うこと

ライター:宇樹義子
私立中で初めて手にした、いじめとは無縁の6年間。学歴カーストがASDの私を守ってくれた…?発達障害がある子の学校選びに思うことのタイトル画像

公立の小学校で成績優秀だった私。好成績や実家の裕福さへの嫉妬と、コミュニケーション障害や体育の苦手さへの嘲笑がからんだいじめや虐待を受けつづけました。それを見ていた兄が両親に対し、私を私立中学に進学させるように進言。兄の進言のとおりに同じような子たちの集まる中高一貫の進学校に進んだ私は、初めて幸せな時代を過ごしました。小学校と中高、どんな日々だったかについてお伝えします。

お嬢様向けの進学校を受験

小学校は地元の公立に通っていた私。成績が良く、家が裕福なために嫉妬を買うだけでなく、運動が苦手だったり、言動が突飛だったりする…… 良くも悪くも目立つため、周囲とまったくなじめませんでした。児童からはいじめを、教師からは虐待を受けるうち、高学年になる頃には二次障害を発症していました。

周囲が中学の進学をどうするかと考え始めた頃。しつこいいじめを受け、特性上体力的にもきつい中で毎日登校するだけで精一杯だったのもあってボーッとしていて、私はなんとなく「自分も地元の中学に行くんだろうな」と思っていました。

そんなあるとき、地元の公立中学に通う兄が、涙ながらに両親に直訴します。
「義子を私立に入れてやってくれ!」

地元の公立中学は荒れていて、ひどいいじめも横行している。義子がそんなところに行けばいじめ殺されるか、いじめを苦に自殺するかのどちらかだ、と兄は言うのです。

いじめの内容とはたとえば、女子生徒の長いスカートを全部めくり上げて裾を頭の上で結ぶというもの。当然下着は丸見えで、一人で体勢を立て直すこともままなりません。このいじめは、頭の上で結ばれたスカートが巾着袋を絞ったように見えるため「きんちゃく」と呼ばれていたそうです。

「義子を私立に入れてやってくれ」 …公立中学生だった兄が、両親に涙の直訴

兄の涙ながらの訴えに両親は深刻な表情になり、「それでは義子に合いそうなお嬢様向けの進学校を探そう」ということになりました。私は子ども向けのスーツを着せられ、母に連れられていくつもの学校を見学してまわりました。

両親も兄もみな自分のために動いてくれていたのに、当時の私は自分の障害に自覚もありませんし、どこか他人事のように感じていました。「みんながそう言うなら、まあ私は私立に行くのだろうな。疲れるなあ、面倒くさいなあ」ぐらいの感じでした……。

結局私の進路は、推薦で中高一貫のお嬢様向け進学校に決まりました。塾には作文対策などのために半年ほど通っただけです。内申もペーパーテストも良かったため、おそらくかなりの好成績での入学でした。

当時感じた、「似た属性の人たち」で集まることの大事さ

私は徐々に、「似た属性の人たちで集まることって大事なんだなあ」と感じるようになりました。

みなある程度以上裕福な家の子なので、私の家が多少裕福だからといって目立つことも妬まれることもありません。最終的に東大などの最難関大学を目指す子が集まっているその進学校では、勉強ができることがいわゆるスクールカーストを上げます。私はここに移ったことで、本人は変わっていないのにスクールカーストが最下位から最上位に上がったのです。

基本的にみんなどちらかというと運動が不得意だし、運動ができることがスクールカースト上重視されないので、体育でバカにされることもありません。小学校のときのように休み時間に運動を強制されることもなく、本を読んでいればむしろ熱心で立派だとされました。

コミュニケーション障害からくる言動の突飛さから、気づくと数人のグループから敬遠されていたり(私抜きでこっそり休みの日に遊びに行っていたりする)、数人のグループから軽くコソコソと噂話されるようなことはありましたが、いじめと言えるほどのことは起きませんでした。

それどころか、何やら様子がおかしいと思っていると、「宇樹を複数の子で奪い合いをしていた」ということも起きました。近くで見ていた子によると、「宇樹は成績がいいだけじゃなくて何事にも一家言持ってるし、独特なところがあって面白いから、近くで見ていたいんでしょ」とのことでした。

いずれにしろみな上品で、誰かに嫉妬したり誰かの足を引っ張ったりということよりも自分のやるべきことに集中しようというタイプだったので、学校全体としてあまり深刻な人間関係トラブルは起きませんでした。
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