親子関係・友人関係はトラブルだらけだった発達障害の私。いま、結婚生活が良好な秘訣

ライター:宇樹義子
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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=33000006946

私は実家では発達障害の特性を理解してもらえませんでした。また、家族関係もピリピリと緊張したものでした。家庭での苦しい記憶がたくさんあり、家族以外の人ともとうまくやれない自分が幸せな家庭生活を送れるようになるなどとは思っていませんでしたが、いま私は夫との穏やかでリラックスした生活を味わっています。

一緒に暮らすようになった当初のぶつかり合いを経て得た、私の夫との共同生活上の3つの秘訣をお伝えします。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

人間関係でトラブルだらけだった私が、幸せな家庭生活を送れる?

私は生まれ育った家庭では特性の理解をしてもらうことはできず、苦しい記憶ばかり残っています。学校生活でも友人関係はうまくいきませんでした。ですから、そんな私が結婚し、幸せな家庭生活を送れるようになるとは、想像もできませんでした。

ですがいま、私は夫との穏やかでリラックスした生活を味わっています。 一緒に暮らすようになった当初のぶつかり合いを経て得た、私の夫との共同生活上の3つの秘訣をお伝えします。

1.「私のトリセツ」を共有する

私には発達障害に伴うさまざまな特性があり、ちょっとしたことで疲れやすかったり、日常に必要な作業の得手不得手が激しかったりするなどの傾向があります。これらの特性をうまく乗り切るために、私は夫との間で徐々に「私のトリセツ(取扱説明書)」のようなものを共有するようになりました。

一度に複数のことを訊かない/指示しない

私はワーキングメモリが小さくてシングルタスク傾向なので、一度に複数のことを訊かれたり指示されたりすると、混乱してミスをしたりフリーズしたりしてしまうことがあります。なんでもパッパッと手際よく済ませることができる早口の夫とは最初ここの調整に苦労しました。

最近は私たちの間で「一度に複数のことを訊かない/指示しない」は普通のこととして浸透しましたが、先日少し面白いことが起きました。私がヨガをしているときに夫が何かちょっとややこしい質問を私にしたのです。

私がとっさにピタッと止まって「ごめん、いまメモリが足りない!」とだけ絞り出したら夫は「なるほど、わかった(笑)」と答え、すぐに意図が通じました。要するに私は、同時に複数のことをしたり考えたりすることが苦手なのです。

一度に複数の音を流さない

私には聴覚過敏があるので、基本的にはテレビも必要なときにしかつけません。音楽も好きなのですが、どんなに好きな音楽でも小一時間聴いていると耳が疲れてきて、止めてしまうぐらいです。

しかし、夫はテレビをつけたまま作業したり、さらにはテレビをつけたままPCで動画を流しながら作業したりするのが平気です。むしろ多少雑音があるぐらいのほうが落ち着くぐらいとのこと。

私は複数の音楽や番組が耳に入ってくるのが短時間でも耐えられないので(頭がパンクしそうな感じがします)、夫がうっかりテレビとPCで動画を同時に流しているときは「ごめん、どっちか消して」と頼みます。彼はほとんどの場合、なんの気なしにテレビとPCで動画を同時に流しているだけなので、「ああ、すまんすまん」と快く応じてくれます。

お出かけはゆるいスケジューリングで

私は何かと疲れやすいので、外出や旅行はかなりゆるいスケジューリングにしてもらっています。「半日出かけたら半日休む、翌日は出かけない」「旅行では移動に疲れてしばらく動けなくなることを織り込み済みで予定を組む」といった感じです。

一緒に暮らすようになった当初、夫は土日となると良かれと思って立て続けにあちこちに連れていってくれたのですが、毎度体調を崩す私を見ていて「もしかして体力的にきつい?」と訊いてくれました。夫の善意がありがたいだけに少し無理して出かけていた私も安心して「実はきついんだ」と話し、半年ぐらいのうちになんとなく大丈夫なペースが掴めるようになりました。

音の大きなイベントは2時間以内で切り上げる

夫は音楽や賑やかなイベントが好きで、やはり一緒に暮らし始めた当初、一生懸命一緒に連れていってくれました。

でもやはり、聴覚過敏のある私には音の大きなイベントは長くて2時間が限界。2時間半や3時間となるとみるみる顔色が悪くなってぐったりし、帰り道でひどい片頭痛に襲われる私を見ていて、夫も私が本当に大きな音が苦手なのだと理解してくれたよう。半年ぐらいたつ頃には、いろいろと配慮してくれるようになりました。

音の大きなイベントは2時間までにする。クラシックコンサートなどできるだけ音の静かなものにしたり、できるだけスピーカーから遠い席を選んだりする。私が耳栓をつけながら楽しむことを許してもらえる会場にする。

上記の条件に当てはまらないイベントへは、夫は一人で行ったりほかの友人知人と行ったりするようになりました。どうも最初は、家に私を一人で残して出かけることを悪いと思っていたようなのですが、ぜんぜん構わないよと伝えたら安心してくれたようです。

出かけるときには早めに見通しがつくように

夫はフットワークが軽い人なので、突然「いまからどこどこに出かけるよ」と言われても平気なたち。でも私は違います。体調を崩しやすい私は、どういう行程でどういうところにどれくらい行くのかと照らし合わせていろいろと準備が必要だからです。

「今日どこどこに行かないか」と言われるたびに「そんなに急に言われても…」と渋っているうちに、だんだん私たちの中でルールができていきました。

外出はできるだけ当日には言い出さない。短い外出は前日まで、遠出は最低3日前までに伝える。どういった乗り物にどれぐらい乗るか、行き先の環境(音、光、人出、ニオイ、暑さ寒さなど)などの見通しがつくように説明する。

私はそれを聞いて、持っていく薬や服飾品、体調の調整などをします。泊りがけの旅行ともなると1週間前から体調の調整に入ったりします。

こうした工夫の結果、外出の最中や外出から帰ってきたあとに体調を崩すことがほとんどなくなりました。とはいっても泊りがけの旅行などすると疲れてしまって翌日は1日寝ているような状態にはなりますが…

得手不得手をふまえて家事分担をする

私は自分のこだわりが発揮できるため掃除と洗濯が得意ですが、料理はマルチタスクで体力を使うためにどちらかというと苦手です。夫は真逆で、掃除洗濯が苦手、料理が得意で特に人にふるまうのが大好き。

というわけで、私たちは互いの得手不得手をふまえ、掃除洗濯は私、料理(と食材の買い出し)は夫、という形で家事を分担しています。

多忙な夫に気を遣って無理して私が食事を作ろうとしていた時期もあったのですが、結局は私の負担がやたらと大きくなってしまう割には夫の助けにならないことがわかったのでやめました。

私が部屋と衣服を清潔で快適に保ち、夫が温かくて美味しく栄養バランスのよい食事をつくる。わが家の家事はこんな形で回っています。

2.屋内環境には妥協しない

私は些細な環境の変化で体調を崩してしまいやすいので、屋内環境の快適さの優先順位はかなり高くしています。

たとえば、遮光・遮熱カーテンをうまく使う。窓から入ってくる眩しすぎる光や西日、夏の暑さなどを、遮光・遮熱機能のあるカーテンで防ぎます。夫は「せっかく昼間なんだから開けていたらいいのに」と言いますが、そこは説明して妥協してもらっています。

最近、部屋のシーリング照明にも、調光・調色機能つきのLED照明が出てきています。こうした機能つきのLED照明に変えてから片頭痛が少なくなったように思います。私が特に夕飯後は暗めの黄色っぽい光に調光するのを夫は暗くて不便だと思っているようですが、そこも妥協してもらっています。たまに夫の部屋に入るとまぶしくて目がチカチカします(笑)

LED照明には人によって合う合わないがあるようですが、私には、高周波の音が聞こえるし熱も発生しやすい蛍光灯よりもLED照明のほうが合っていたようです。

住む部屋自体も、できれば暑さ寒さが激しくないような物件を選ぶようにしています。出費はかさみがちですが、窓がペアガラスだったり建物の断熱がしっかりしていたりすると、季節や朝晩、部屋ごとの室内環境の差が小さく抑えられます。

空調も、この気温がいいとかこの湿度がいいとか、エアコンの風はうるさいからだめだとかあるので、加湿器を置いたり自室の暖房はオイルヒーターにしたりするなど工夫しています。
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3.食事どきの団らんを大事にする

夫は忙しい人ですが、できれば毎日、食卓でリラックスした会話の時間を持つように工夫してくれています。

夫は食べるのが早く、皿洗いも食べ終わった食器からどんどんやってしまうタイプですが、ひととおり自分の分を洗ってしまうと再び食卓につき、私が食べ終わるまでいろいろおしゃべりしながら座っていてくれます。

夫が遅くなったりして夕食が一緒にとれないときも、極端に遅くないかぎり私はなんとなく起きて待っていて、夫が晩酌しながら食べる食卓に私もつきます。

最近そういう晩酌時間のつきあいもできていないな、というときには、なんとか週末の日中に二人でお茶を淹れて一緒にお菓子を食べながらおしゃべりしたりもします。

お互い、実家ではこうした食卓でのリラックスした団らんの時間を持てずに寂しい思いをしてきたので、ここは二人ともとても大事にしているところです。

一時期、夫が単身赴任していたときはこうした「食事どきの何気ない無駄話」が共有できず、何か用事があるとビデオ通話で用件だけ話して切るような生活を続けていたときは、なんとなく気持ちがすれ違ってとても寂しかったし喧嘩も多かったのを覚えています。

発達障害があっても幸せな家庭生活を実現することはできる

発達障害のある人はさまざまな特性を抱えているので、人と穏やかな共同生活が送れるのか心配な人は多いかもしれません。しかし、私は組み合わせや互いの努力によって、発達障害者が誰かと幸せな家庭生活を得ることは十分可能だと思っています。

少なくともここに一例、発達障害があっても幸せな家庭生活を実現した例があるので、どうぞ希望を持って工夫していってほしいと思います。

専門家コメント 鈴木直光先生(筑波こどものこころクリニック院長)

まずはパートナーに発達障がいに関する一般的な知識を入れてもらうことから始めるといいと思います。その中で特有の問題があれば取説として私を理解してもらうようにしていけばいいのです。
そういった意味で「私の取説」は一番効果があると思われます。子どもが神経発達症の場合は親御さんがペアレントトレーニングを受けてお子さんの取説を習います。基本は傾聴と承認です。
パートナーにも傾聴と承認ができれば幸せな家庭生活を実現することができるはずです。そして神経発達症という特性の理解と支援も重要です。パートナーも理解や支援で努力が必要なので、感謝の気持ちも忘れてはいけませんね。(監修:筑波こどものこころクリニック院長 鈴木直光先生)
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