不登校の子どもをサポートする教育支援センター(適応指導教室)とは?支援の内容や、利用方法を解説
子どもが学校に通えなくなってしまった場合、子ども本人にはもちろん、保護者にもさまざまな不安が生じるかもしれません。「勉強はどうなるんだろう」「今後友達関係を築いていくことはできるのか」「学校に戻るタイミングはどのように決めたらいいのだろう」など、子どもや保護者の悩みや不安はそれぞれです。今回のコラムでは、不登校の子どもと保護者をサポートする役割を担う「教育支援センター(適応指導教室)」を取り上げ、その概要を説明します。

教育支援センター(適応指導教室)ってどんなところ?
指導にあたるのは、教員免許を保持する職員が多く、他には臨床心理士や社会福祉士等の資格を保有する職員がいる場合もあります。また、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの心理、福祉の専門家が配置または派遣されている場合もあり、子どもや保護者がカウンセリングを受けるなどの機会を用意している教育支援センターもあります。
出典:https://www.mext.go.jp/content/1422155_005.pdf2 設置の目的
○ センターは,不登校児童生徒の集団生活への適応,情緒の安定,基礎学力の補充,基本的生活習慣の改善等のための相談・指導(学習指導を含む。以下同じ。)を行うことにより,その社会的自立に資することを基本とする。
どんな子どもが利用している?情緒的混乱や人間関係の不安を抱える子どもが多い
不登校の理由は子どもによってそれぞれ。「友人関係」「勉強が分からない」「先生との関係」「クラブ活動に関する問題」など、学校生活を巡る問題が不登校のきっかけとなった子どもたちが多い一方で、「不安感」「生活の乱れ」「家庭の状況」などを挙げる子どももいることから、不登校の理由が複雑化していることが分かります。
特性のある子どもに対する理解は社会全体として進みつつあるものの、一般的な小学校や中学校では適切な指導や支援がまだまだ不十分なこともあります。そのため、それぞれが抱える課題を克服できず、友達関係がうまく築けなかったり、勉強についていけなくなったりなどの問題が生じ、不登校になってしまうケースが増えています。
利用スケジュールや具体的な指導内容は?
1日の過ごし方は子どもにあわせて調整がされることが多いですが、基本的なスケジュールは決まっているところが多くあります。例えば東京都武蔵野市「チャレンジルーム」の場合、1日の流れは以下の通りです。
出典:http://www.city.musashino.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001...9:15~朝の会・読書
9:30~個別学習 学習はそれぞれで進め困ったことがあったら相談員に声をかける
12:00~昼食
13:00~集団活動 スポーツ、調理など
14:15~掃除・帰りの会
14:45~帰宅
学習支援に関しては、ほとんどの施設で個別指導が行われており、授業形式の学習支援をしているのは30%未満となっています(平成29年度調査 ※)。決まったカリキュラムに沿って学習を進めるところと自習を主に行っているところがあり、教材は学校の教科書や持参した市販教材などが使用されます。
また多くの施設で子どもとの個別のカウンセリングを取り入れており、相談やカウンセリングが不登校の子どもたちのサポートに欠かせないものとなっていることが分かります。
同時に、保護者に対しての相談・カウンセリングも多くの施設で実施されています。子どもが不登校になったのは、自分の責任であると考える保護者も少なくないため、カウンセラーが話を聞きながら子どもへの対応のあり方を共に考えていくのです。必要に応じて家庭訪問が実施される場合もあります。施設によっては保護者会やグループカウンセリングなどがあり、同じ境遇の子どもを持つ保護者同士が話をすることで気持ちが楽になるなどの効果があったと話す保護者も多いといいます。保護者同士で互いの子どもへの対応について学び合う機会を提供している施設もあるようです。
在籍する学校との連携も
「教育支援センター整備指針(試案) 」の中では、教育支援センター(適応指導教室)と学校との連携について以下のように記されており、子どもの様子や支援の方向性、学習の成果などについての連携はもちろん、該当児童生徒が学校に復帰したあとも在籍校と連携して継続的なサポートを実施していくことが大切な役割の一つとなっています。
出典:https://www.mext.go.jp/content/1422155_005.pdf8 学校との連携
○ 指導員等は,不登校児童生徒の態様に応じ,その支援のため,在籍校との緊密な連携を行うものとする(定期的な連絡協議会,支援の進め方に関するコーディネート等の専門的な指導等)。
○ 指導員等は,不登校児童生徒の学校復帰後においても,必要に応じて在籍校との連携を図り,継続的に支援を行うことが望ましい。
○ 指導員等は,児童生徒の実情等の的確な見立て(アセスメント)にそった児童生徒の個々の回復状況を把握し,守秘義務に配慮した上で,本人,保護者の意向を確かめて在籍校に学習成果等を連絡するものとする。
○ 指導員等は,不登校に関し,学校に対する専門的な指導・助言・啓発を行う。
ほかにも、学校復帰を望む子どもに対しては、学校からの配布物やプリント教材を適応指導教室に届けたり、行事の案内の連絡をしてもらったりなど、少しずつ学校との接点を増やす関わりをする場合もあります。
利用を検討するときには?対象となる条件や必要な手続きについて
利用の条件
例えば東京都目黒区の場合は、以下の通りです。
出典:https://www.city.meguro.tokyo.jp/kyoiku/gakko_kyoiku/support/emil.html対象
区立小・中学校に在籍する長期欠席児童・生徒で、本人及び保護者が入級を希望し、在籍学校の校長が必要と認めるものです。
出典:https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/kyouiku/kenkyu/oshirase/tekiou/入室条件
本人に「まてぃだ教室」に通室する意思がある。
保護者が教室への送迎が充分に可能である。
入室判定基準
学校へ行く意思があるが行けない。
登校時になると、腹痛・頭痛・嘔吐・発熱などの身体症状を呈する。
家に閉じこもり、ほとんど外出しない。
対人的な接触を避ける傾向にある。
精神的な疾患ではない。
本人に「まてぃだ教室」に通室する意思がある。
利用までの流れ
代表的な手続きは以下の通りです。
1.「教育支援センター」などへ面談を申し込む
本人、保護者、そして学籍のある学校の考えが考慮されます。
2.保護者が「入室願書」を記入・提出する
保護者が「入室願書」を記入し、在籍学校長へ提出します。
3. 在籍学校長が「入室申込書」を作成・提出する
保護者から提出された「入室願書」を元に校長が「入室申込書」を作成し、「教育支援センター」に提出します。
4.「入室決定通知書」が送付される
「教育支援センター」から学校と保護者へ「入室許可通知書」が送付されます。
通室が決定したら、職員と本人や保護者が相談しながら、通室スケジュールや取り組む内容などを決定していきます。個別の支援計画を作成し、支援内容などについて利用継続の必要性などについて定期的な検討を行う施設もあります。
不登校の子どもが利用する「フリースクール」とはどう違う?
教育支援センターは公的な機関ですが、フリースクールは個人や民間企業、NPO法人等の団体が運営しています。そのためフリースクールの場合、支援の方針やカリキュラム等は運営団体によって異なります。また、公的な機関である教育支援センターは利用に費用が発生しないのに対し、フリースクールは各施設ごとにかかる費用が異なります。身近に教育支援センターもフリースクールも両方ある場合には、見学などを通して支援内容、費用、施設の雰囲気等を確認して検討できるとよいですね。
なお、フリースクールへ通う場合に出席扱いとされるかどうかは校長による判断となるため、相談しておく必要があります。
不登校の子どもたちが自分に合ったサポートを受けられるように
不登校の子どもが抱える不安や課題はそれぞれに異なります。それらを乗り越え社会のなかで自立できるよう、焦らずに日々を過ごすための手段の一つが、教育支援センターの活用です。
教育支援センター以外にも、不登校の子どもをサポートする制度やサービスはさまざまです。不登校の悩みを抱えている子どもや保護者はまずは抱え込まずに、市町村の相談機関に連絡してみてはいかがでしょうか。
※は平成29年度調査、令和元年発表の「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」結果データを引用しています。

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