「疲れ」には2種類ある

次は、疲れには2種類あるんじゃないかという話です。

僕が疲れの違いを実感したエピソードがあります。

僕は初期研修の後、小児科医としてキャリアをスタートしました。若手時代は(日にもよりますが)朝から21時や22時まで続けて働くこともありました。そのころは「あ~~疲れた~~~」と思いつつも、スッキリとした気持ちで家に帰ることができました。

ところが児童精神科医になり、朝から18時くらいまで働くと、そっちのほうがものすごく疲れるのです。外来が伸びて19時、20時になった日なんて、終わったあとしばらく外来の椅子から立ち上がれないほど消耗していました。

「働く時間は減ったのにこんなに疲れるなんて、前と何が違うんだろう?」と思ったとき、一つの仮説にたどりつきます。「疲れの種類が違うんじゃないか?」ということです。

あなたの疲れはどっちの疲れ?

それは、「体の疲れ」と「心の疲れ」があるのではないか、ということです。

小児科医時代は、ある程度想像のつく風邪や肺炎、アレルギーなどパターン化された作業を大量にこなしながら、その中に混ざっている難しい症例の診断と治療に頭を使うような働き方でした。また、外来と病棟と往復したり、広い病棟を歩き回ったり、処置や診察で何回も姿勢を変えたりと、体の動きも多かった。

ところが児童精神科医になってからは、基本的に外来診療がメイン。一日中椅子に座って人の話を聞いています。しかも内容は人によって千差万別で、その内容もなかなかに重いものが多い。正解がどこにあるのか分からない闇の中を、一緒にうんうん唸りながらかき分けていく感じです。この「心が擦り減る疲れ」が、疲労感の原因なんだと感じました。

つまり、小児科医時代はどちらかというと体力的な疲れです。体は動かしているけど、お昼を食べる時間もそこそこに一日中活動していたことによる疲れ。一方、児童精神科的な疲れとしては、精神心理的な疲れです。さまざまな人の悩みや不安といった感情に触れ、患者さんと一緒にもがき、ぐったりする。そういう疲れです。

自分の疲れに必要なのは?体と心の休ませ方、ほぐし方をみつけよう

疲れたら休むのはもちろんなのですが、「どう休むか」「どうほぐすか」もけっこう大事かなと思います。

先ほどの僕の例は「心が疲れたから、心は空っぽにして体を使う」という解決方法でした。
でも人によっては「心が疲れたから、心が癒されるものを眺める」でもいいし、「体が疲れたから、体は休めてクロスワードパズルに熱中する」でもいいかもしれません。

休む方法には人に合ったものがあります。自分は何をすると楽になるのかを見つめ直していくのも、疲れをとるヒントになるかもしれません。
【新連載】精神科医・田中康雄先生――肩の力を抜いて相談して。精神科の役割と、大切にしていることのタイトル画像

【新連載】精神科医・田中康雄先生――肩の力を抜いて相談して。精神科の役割と、大切にしていること

発達障害支援で必要なことは?「できたら褒める」は要注意?児童精神科医・吉川徹先生を取材――発達障害を描いたCMプロデューサーが聞く【連載 #見えない障害と生きる】のタイトル画像

発達障害支援で必要なことは?「できたら褒める」は要注意?児童精神科医・吉川徹先生を取材――発達障害を描いたCMプロデューサーが聞く【連載 #見えない障害と生きる】

精神科医が、学校の「中の人」に!スクールカウンセラーとして現場で気づいた3つのコト【児童精神科医 三木崇弘先生】のタイトル画像

精神科医が、学校の「中の人」に!スクールカウンセラーとして現場で気づいた3つのコト【児童精神科医 三木崇弘先生】


追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。