『手洗い』『うがい』の教え方や練習方法。発達障害がある子への伝え方や置き換えルールも

2021/08/13 更新
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子どもが健康に安全に成長していくために、日々の生活で、できるようになってほしいことはたくさんあります。でも、こだわりがあったり、感覚が敏感すぎたりして、どう教えたらいいのか分からないということはありませんか? 今回は発達コンサルタントの小島賢司先生に、感染症予防に必須の「手洗い」・「うがい」について教えてもらいました。

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発達障害のキホン
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監修: 小島賢司
地域療育センターあおば
診療科
理学療法士
普段は横浜にある療育センターで勤務し子育て世代のサポートをしています。 もう一つの顔は「発達コンサルタント®︎」としてオンラインで子育ての悩みや不安に対して個別性に着目した最適な子育てを無料でコンサルタントしています。療法士、保育士、歯科など子どもに関わる全国の専門家へオン/オフラインでの研修に関わっています。

「汚い」という概念は、どうやってできあがる?

「手洗い」・「うがい」は、何のためにするのでしょうか。健康を維持するために、ウイルスやばい菌を落とす、つまり「汚いものを体から取り除く」という目標があります。これが理解できないと、「手洗い」も「うがい」も自ら取り組んでできるようにはなりません。この「汚い」という目に見えない概念がどう育っていくのか考えてみます。

0歳のころは、おしっこやうんちが出る感覚を少しずつわかるようになる時期です。しかし、まだおしりに何か「汚い」ものがついている、という認識はないでしょう。大人がおむつ替えをしたあと、「きれいになったね」や「さっぱりしたね」と声かけすることが大切な時期です。1歳から1歳半くらいになると、うんちが出たあとそのままにしておくとおしりに何かがついていて気持ち悪い、と「自分と異物」の認識ができるようになってきます。

1歳半~2歳ごろになると、過去の記憶を思い出せるようになり、「このモゾモゾする感じはうんちやおしっこが出るんだな」と予測したり、出たときに「おむつかえて」と伝えたりするようになります。この違和感のある何かが自分の体についていることが「汚い」という状態だと理解し、「汚い」の概念を覚えていきます。

「ごっこ遊び」がもたらす生活動作の練習機会などが大切

その次は「目に見えないものをきれいにする」という「手洗い」「うがい」の動作のステップに進みます。この「汚い」を認識する過程がないと「だって何もついていないからきれいだもん」ということになってしまうからです。

2~3歳というのは、遊びのバリエーションが根本的に変わる時期で、「ごっこ遊び」ができるようになります。目に見えないものを空想し、演じ、ものに役割を託すといったことができるようになります。「ほら、手にばい菌がついてるよ」と言われて、「ここにばい菌がいるんだ、ばい菌は汚いんだ」ということをイメージして、手を洗うという行動につながります。

やがて、「洗いなさい」と言われたら洗う段階を経て、言われなくても手洗いする習慣化が徐々にできていきます。子ども自身が「さっき泥んこ遊びしたから、手が汚れている」と考え、手洗いしようと考えられるようになってはじめて、「自分で手洗いできる」状態となるのです。

「手洗い」という動作をスモールステップで考えてみる

どのような日常生活動作でも、実際のやり方を教えるときには、動作を分解してスモールステップで教えます。

「手洗い」という工程は以下のような手順になっています。
①蛇口から出る水に手をつける
②石けんをつけて手をこすり合わせる
③手についた石けんを水で流す

これらをどのような成長過程を通して学んでいくのかを見ていきましょう。

①の『手を水につける』というのは、赤ちゃんのころに水に触れて遊ぶことがスタートとなるでしょう。次の段階として、水遊びをしてもいい場面とそうでない場面を親子のコミュニケーションを通して学んでいきます。
②の『手をこすり合わせる』は、さまざまな歌に合わせた動画などもあると思うので、好きなものを参考にしてください。「お父さん指から~♪」と手遊び歌を取り入れると、歌で指の名前を覚えたりしながら、楽しく洗うことを覚えられます。さらに手洗い歌などを通して動作の模倣、風景を想像することで、③の工程で手についた泡を水で流す動作や石けんのヌルヌルがなくなっていく感覚を見通し持って取り組んでいくことができます。

最初のうちはしっかりとした洗い方は求めず、「できた」という経験を糧に徐々に動作がうまくなっていくように見守ることが大切です。
ごはんやおやつの前、外から帰ったときに「手を洗おうね」と伝え、手を洗う、それがだんだんにルーティン化して、2歳ごろから言われなくても手を洗おうとするようになります。ある日突然、「手洗い」を自発的にするわけではなく、少しずつステップを踏んで、できるようになっていきます。

【こんなときはどうする?】①「汚れている」がうまく伝わらない場合は?

それでも「手が汚れている」ということがうまく伝わらない場合もあります。
例えば自閉症などの特性のある子どもの場合、目に見えない汚れを『きちんと落としてね』など曖昧な指示の理解が難しいことがあります。
子どもの特性をふまえて手洗いの様子を視覚化して『この手順で手を洗えば良いんだな!』と伝えてあげることが大切です。
手洗いの可視化
手洗いの可視化
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【こんなときはどうする?】②うまくできないときは「置き換えルール」で対応する

感覚の特性が強い場合、例えば水が冷たくて嫌な子、濡れるのが嫌いという子や、手洗いが水あそびになってしまい「終わり」にできない子など、スモールステップに分けても①の『水に手をつける』段階でうまくいかない子もいます。そのときは、消毒用アルコールティッシュなどで拭いてあげる「置き換えルール」を一緒に取り組んでいけると良いでしょう。
嫌がることを強要しないことが大切です。そのときはできなくても、成長とともに次第にできるようになることもあります。

■目に見えない口の中、苦しい姿勢、難易度が高い「うがい」

次に「うがい」ですが、「手洗い」よりもハードルは高いです。口の中、見えないところの動きを想像することや、頭を後ろに倒すという姿勢は認知面、運動面の発達が裏付けられています。

まず必要な運動機能について。2~3歳の子どもに、「ガラガラ」や、「おくちぐちゅぐちゅ」をしてみましょうと言っても、体の機能が育っていない子にはとても難しいです。これらを練習してできるようになっていても、口を閉じて水を口に含み、しっかり体を立てて上を向き、口を開けたまま息を吐くことができなければ、うがいはできません。

「うがい」を分解してみよう

それでは、「手洗い」と同じように、「うがい」の動作を分解してみましょう。

「うがい」という工程は以下のような手順になっています。
①口に水を溜めること
②喉頭で水をガラガラする
③水を口から吐き出す


①は、コップから水を口に入れ、飲まずに口に溜めておくこと。口の中に水を留めていられない子は、飲んでしまうか、口の端から漏れてしまうか、すぐにピュッと外に吐き出してしまいます。

②は、上を向いてのどをガラガラさせるのは、水がのどから奥へ侵入しないように、息を吐き続けながら鼻呼吸ができないとできない難易度が高い動作です。

最後に③は、①で口の中にためた水を、自分の意志で吐き出します。口の中の汚れを出すという行動です。

「うがい」の場合も大事なことは、「汚い」という概念の形成ができていることです。目に見えない口からノドの汚れを、きれいにするのです。
口頭での指示が難しい場合に関しては手洗いと同様に視覚化してあげると良いと思います。

うまくできないとき、つまずくときは『置き換えルール』で対応しよう

うがいの練習方法

「うがい」は呼吸のリズムを乱すので難易度が高い動作です。立って頭を後ろに倒すという姿勢自体も窮屈なので、そもそもしたがらない子が多いです。ガラガラとのどを水でゆすぐときのコツは、声を出すこと。あ~~と低い音、ア~~と高い音を出して遊んだり、お話したり歌ったり。「手洗い」のときに歌うのと同様に、楽しくするのがいいですね。
口に水をためたまま上を向くことができなければ、お口ぐちゅぐちゅだけでもOKです。

うがいの『置き換えルール』、顔を拭く

誘ってもうがいをしたがらない、そもそも運動機能の面で一連の動作が難しい場合には、顔を拭くだけでもOKです。ウイルスは粘膜から感染するので、目をさわったり鼻をほじったりするとウイルスを体内に侵入させてしまいます。顔を拭くことで、うがいができない子どもを守ることができます。これは、赤ちゃんにもやってあげるとよい「置き換えルール」です。

顔を拭くことも嫌がるときには、タオルの温度を調整してみてください。冷たいのが嫌いならタオルを温める、暑いときなら冷やして、その子が気持ちいいと感じる状態をつくってあげます。そして拭くまえに、具体的な冷たさを教えてあげます。「これは氷のように冷たいよ」なのか「肉まんみたいに温かいよ」なのか、予測できるように教えます。

過敏な子どもは、予測と違ったことに強く反応しますが、予測ができると落ち着くことがあります。予測してみて、どういう結果が返ってくるかで受け取り方が変わるので、過敏の子にはなるべく実際に起こる情報を具体的に伝えてあげましょう。

「できた」ときの褒め方、「できない」ときの対処法

「手洗い」・「うがい」の動作ができたとき・できなかったときに、大人が気をつけておきたいことがあります。

褒めるときに大事なのは、子ども本人の目標を達成しているか

褒めるときには、本人が求めていたことに対応していることが大切。「手がきれいになる」ということを本人が求めていれば、「きれいになったね」が褒め言葉になりますが、洗いたくもないのにいやいや手を水につけたのなら、『洗面所まで来たこと』を褒めてあげます。

子ども自身が目標としたことを達成したかどうか、が大事であって、親が子どもに「手を洗ってほしい」と思っていて、それができたから「うまく洗えたね」と褒めるのではありません。本人が、帰宅して手洗い場に行くと決めていたら、手を洗うこと自体はうまくできなくても『手洗い場に行った』という行動を褒めてあげてください。

できない・やらない理由はコミュニケーションで読み解く

やらない・できないときには、まずは前述の「置き換えルール」での対応が有効だと思います。そのときに、「なぜいやなの?」「代わりに何なら大丈夫なの?」ということを、子どもによく聞いてみましょう。親の気持ちと子どもの気持ちを歩み寄らせることが親子の「コミュニケーション」です。上手にお話できない場合でも、前後の文脈を読み取ると、なぜいやなのかは徐々にわかるようになります。

対話は大切です。今の関わりが、5年後10年後に活きてきます。子どもの人格形成に早期から保護者は関わり、小学校入学ごろから親離れしていくときに、それまでに培ったことが生きてきます。苦手なことにチャレンジするとき、得意をもっと高めるときに、「なぜできない? どうしたらできる?」を対話しながら考えることが必要なのです。

まとめ・共感を大切にして、日常動作を教えてほしい

生活動作を教えるときに、子どもが「できるようになる」ことよりも、「隣でやっているあなたのことを気に掛ける」ことを大切にしてほしいです。人は、隣の人と同じ行動をしているときに共感し、社会性を育んでいきます。全てに共感しなくても、少なくても子ども自身が楽しかったり、隣にいる人が楽しんでいたり、そして相手を意識するということが、日常生活の中で行われていくことが良いと思います。「手洗い」や「うがい」を通して、そんな瞬間を感じ取れたらより良い親子の関係をつくっていけるのではないでしょうか。

取材・文/関川香織
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