■目に見えない口の中、苦しい姿勢、難易度が高い「うがい」

次に「うがい」ですが、「手洗い」よりもハードルは高いです。口の中、見えないところの動きを想像することや、頭を後ろに倒すという姿勢は認知面、運動面の発達が裏付けられています。

まず必要な運動機能について。2~3歳の子どもに、「ガラガラ」や、「おくちぐちゅぐちゅ」をしてみましょうと言っても、体の機能が育っていない子にはとても難しいです。これらを練習してできるようになっていても、口を閉じて水を口に含み、しっかり体を立てて上を向き、口を開けたまま息を吐くことができなければ、うがいはできません。

「うがい」を分解してみよう

それでは、「手洗い」と同じように、「うがい」の動作を分解してみましょう。

「うがい」という工程は以下のような手順になっています。
①口に水を溜めること
②喉頭で水をガラガラする
③水を口から吐き出す


①は、コップから水を口に入れ、飲まずに口に溜めておくこと。口の中に水を留めていられない子は、飲んでしまうか、口の端から漏れてしまうか、すぐにピュッと外に吐き出してしまいます。

②は、上を向いてのどをガラガラさせるのは、水がのどから奥へ侵入しないように、息を吐き続けながら鼻呼吸ができないとできない難易度が高い動作です。

最後に③は、①で口の中にためた水を、自分の意志で吐き出します。口の中の汚れを出すという行動です。

「うがい」の場合も大事なことは、「汚い」という概念の形成ができていることです。目に見えない口からノドの汚れを、きれいにするのです。
口頭での指示が難しい場合に関しては手洗いと同様に視覚化してあげると良いと思います。

うまくできないとき、つまずくときは『置き換えルール』で対応しよう

うがいの練習方法

「うがい」は呼吸のリズムを乱すので難易度が高い動作です。立って頭を後ろに倒すという姿勢自体も窮屈なので、そもそもしたがらない子が多いです。ガラガラとのどを水でゆすぐときのコツは、声を出すこと。あ~~と低い音、ア~~と高い音を出して遊んだり、お話したり歌ったり。「手洗い」のときに歌うのと同様に、楽しくするのがいいですね。
口に水をためたまま上を向くことができなければ、お口ぐちゅぐちゅだけでもOKです。

うがいの『置き換えルール』、顔を拭く

誘ってもうがいをしたがらない、そもそも運動機能の面で一連の動作が難しい場合には、顔を拭くだけでもOKです。ウイルスは粘膜から感染するので、目をさわったり鼻をほじったりするとウイルスを体内に侵入させてしまいます。顔を拭くことで、うがいができない子どもを守ることができます。これは、赤ちゃんにもやってあげるとよい「置き換えルール」です。

顔を拭くことも嫌がるときには、タオルの温度を調整してみてください。冷たいのが嫌いならタオルを温める、暑いときなら冷やして、その子が気持ちいいと感じる状態をつくってあげます。そして拭くまえに、具体的な冷たさを教えてあげます。「これは氷のように冷たいよ」なのか「肉まんみたいに温かいよ」なのか、予測できるように教えます。

過敏な子どもは、予測と違ったことに強く反応しますが、予測ができると落ち着くことがあります。予測してみて、どういう結果が返ってくるかで受け取り方が変わるので、過敏の子にはなるべく実際に起こる情報を具体的に伝えてあげましょう。

「できた」ときの褒め方、「できない」ときの対処法

「手洗い」・「うがい」の動作ができたとき・できなかったときに、大人が気をつけておきたいことがあります。

褒めるときに大事なのは、子ども本人の目標を達成しているか

褒めるときには、本人が求めていたことに対応していることが大切。「手がきれいになる」ということを本人が求めていれば、「きれいになったね」が褒め言葉になりますが、洗いたくもないのにいやいや手を水につけたのなら、『洗面所まで来たこと』を褒めてあげます。

子ども自身が目標としたことを達成したかどうか、が大事であって、親が子どもに「手を洗ってほしい」と思っていて、それができたから「うまく洗えたね」と褒めるのではありません。本人が、帰宅して手洗い場に行くと決めていたら、手を洗うこと自体はうまくできなくても『手洗い場に行った』という行動を褒めてあげてください。

できない・やらない理由はコミュニケーションで読み解く

やらない・できないときには、まずは前述の「置き換えルール」での対応が有効だと思います。そのときに、「なぜいやなの?」「代わりに何なら大丈夫なの?」ということを、子どもによく聞いてみましょう。親の気持ちと子どもの気持ちを歩み寄らせることが親子の「コミュニケーション」です。上手にお話できない場合でも、前後の文脈を読み取ると、なぜいやなのかは徐々にわかるようになります。

対話は大切です。今の関わりが、5年後10年後に活きてきます。子どもの人格形成に早期から保護者は関わり、小学校入学ごろから親離れしていくときに、それまでに培ったことが生きてきます。苦手なことにチャレンジするとき、得意をもっと高めるときに、「なぜできない? どうしたらできる?」を対話しながら考えることが必要なのです。
次ページ「まとめ・共感を大切にして、日常動作を教えてほしい」

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