『手洗い』『うがい』の教え方や練習方法。発達障害がある子への伝え方や置き換えルールも

ライター:発達障害のキホン
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子どもが健康に安全に成長していくために、日々の生活で、できるようになってほしいことはたくさんあります。でも、こだわりがあったり、感覚が敏感すぎたりして、どう教えたらいいのか分からないということはありませんか? 今回は発達コンサルタントの小島賢司先生に、感染症予防に必須の「手洗い」・「うがい」について教えてもらいました。

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監修: 小島賢司
地域療育センターあおば 診療科 理学療法士
普段は横浜にある療育センターで勤務し子育て世代のサポートをしています。 もう一つの顔は「発達コンサルタント®︎」としてオンラインで子育ての悩みや不安に対して個別性に着目した最適な子育てを無料でコンサルタントしています。療法士、保育士、歯科など子どもに関わる全国の専門家へオン/オフラインでの研修に関わっています。

「汚い」という概念は、どうやってできあがる?

「手洗い」・「うがい」は、何のためにするのでしょうか。健康を維持するために、ウイルスやばい菌を落とす、つまり「汚いものを体から取り除く」という目標があります。これが理解できないと、「手洗い」も「うがい」も自ら取り組んでできるようにはなりません。この「汚い」という目に見えない概念がどう育っていくのか考えてみます。

0歳のころは、おしっこやうんちが出る感覚を少しずつわかるようになる時期です。しかし、まだおしりに何か「汚い」ものがついている、という認識はないでしょう。大人がおむつ替えをしたあと、「きれいになったね」や「さっぱりしたね」と声かけすることが大切な時期です。1歳から1歳半くらいになると、うんちが出たあとそのままにしておくとおしりに何かがついていて気持ち悪い、と「自分と異物」の認識ができるようになってきます。

1歳半~2歳ごろになると、過去の記憶を思い出せるようになり、「このモゾモゾする感じはうんちやおしっこが出るんだな」と予測したり、出たときに「おむつかえて」と伝えたりするようになります。この違和感のある何かが自分の体についていることが「汚い」という状態だと理解し、「汚い」の概念を覚えていきます。

「ごっこ遊び」がもたらす生活動作の練習機会などが大切

その次は「目に見えないものをきれいにする」という「手洗い」「うがい」の動作のステップに進みます。この「汚い」を認識する過程がないと「だって何もついていないからきれいだもん」ということになってしまうからです。

2~3歳というのは、遊びのバリエーションが根本的に変わる時期で、「ごっこ遊び」ができるようになります。目に見えないものを空想し、演じ、ものに役割を託すといったことができるようになります。「ほら、手にばい菌がついてるよ」と言われて、「ここにばい菌がいるんだ、ばい菌は汚いんだ」ということをイメージして、手を洗うという行動につながります。

やがて、「洗いなさい」と言われたら洗う段階を経て、言われなくても手洗いする習慣化が徐々にできていきます。子ども自身が「さっき泥んこ遊びしたから、手が汚れている」と考え、手洗いしようと考えられるようになってはじめて、「自分で手洗いできる」状態となるのです。

「手洗い」という動作をスモールステップで考えてみる

どのような日常生活動作でも、実際のやり方を教えるときには、動作を分解してスモールステップで教えます。

「手洗い」という工程は以下のような手順になっています。
①蛇口から出る水に手をつける
②石けんをつけて手をこすり合わせる
③手についた石けんを水で流す

これらをどのような成長過程を通して学んでいくのかを見ていきましょう。

①の『手を水につける』というのは、赤ちゃんのころに水に触れて遊ぶことがスタートとなるでしょう。次の段階として、水遊びをしてもいい場面とそうでない場面を親子のコミュニケーションを通して学んでいきます。
②の『手をこすり合わせる』は、さまざまな歌に合わせた動画などもあると思うので、好きなものを参考にしてください。「お父さん指から~♪」と手遊び歌を取り入れると、歌で指の名前を覚えたりしながら、楽しく洗うことを覚えられます。さらに手洗い歌などを通して動作の模倣、風景を想像することで、③の工程で手についた泡を水で流す動作や石けんのヌルヌルがなくなっていく感覚を見通し持って取り組んでいくことができます。

最初のうちはしっかりとした洗い方は求めず、「できた」という経験を糧に徐々に動作がうまくなっていくように見守ることが大切です。
ごはんやおやつの前、外から帰ったときに「手を洗おうね」と伝え、手を洗う、それがだんだんにルーティン化して、2歳ごろから言われなくても手を洗おうとするようになります。ある日突然、「手洗い」を自発的にするわけではなく、少しずつステップを踏んで、できるようになっていきます。

【こんなときはどうする?】①「汚れている」がうまく伝わらない場合は?

それでも「手が汚れている」ということがうまく伝わらない場合もあります。
例えば自閉症などの特性のある子どもの場合、目に見えない汚れを『きちんと落としてね』など曖昧な指示の理解が難しいことがあります。
子どもの特性をふまえて手洗いの様子を視覚化して『この手順で手を洗えば良いんだな!』と伝えてあげることが大切です。
手洗いの可視化
手洗いの可視化
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【こんなときはどうする?】②うまくできないときは「置き換えルール」で対応する

感覚の特性が強い場合、例えば水が冷たくて嫌な子、濡れるのが嫌いという子や、手洗いが水あそびになってしまい「終わり」にできない子など、スモールステップに分けても①の『水に手をつける』段階でうまくいかない子もいます。そのときは、消毒用アルコールティッシュなどで拭いてあげる「置き換えルール」を一緒に取り組んでいけると良いでしょう。
嫌がることを強要しないことが大切です。そのときはできなくても、成長とともに次第にできるようになることもあります。
次ページ「■目に見えない口の中、苦しい姿勢、難易度が高い「うがい」」

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