食やニオイ、光と音がつらかった家族旅行。親を困らせたけど感謝している僕が思う楽しく過ごすためのポイントーー感覚過敏な15歳社長

ライター:加藤路瑛
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「子どもが喜ぶ姿を見たい」「子どもにたくさんの経験をさせてあげたい」「楽しい思い出を残したい」そう思って親が計画してくれる家族旅行。ですが、感覚過敏があると旅先でも苦労が多いかもしれません。親も大変ですが、子どもも苦痛に感じている場合もあれば、親のために我慢することもあるかもしれません。今回は感覚過敏の子どもと行く家族旅行をテーマにお話してみたいと思います。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

家族旅行での、食べもの問題

こんにちは。加藤路瑛です。僕自身、感覚過敏の特性があることから13歳のときに「感覚過敏研究所」を立ち上げ、感覚過敏の課題解決に取り組んでいます。当事者目線、特に子どもの視点で感覚過敏について話していきたいと思います。感覚過敏があると家族旅行で親がどのような工夫をしているのか、僕の視点を通して感じることをお伝えします。前回、感覚過敏の僕が小学校や中学校での宿泊学習でどのような苦労をし、そのような支援をうけたのかをコラムに書かせていただきましたが、今回は「家族旅行」ならではの問題などを書いてみたいと思います。
幼いころの筆者
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味覚過敏による偏食があると旅先での食事に悩むと思います。3、4歳のころは、子ども歓迎のペンションや民宿に泊まることが多かったようですが、宿で出される食事がほぼ食べられず、おやつで空腹を紛らわせながら、親は観光の途中で僕が食べられるメニューがあるレストランを探すことに苦労したそうです。
そのような経験を数回経て、親は旅行では食事がつかない素泊まりできる宿を探すようになったようです。部屋にキッチンがあるタイプのホテルやコンドミニアムを探し、朝と夜は親が料理をしてくれました。どんな食事だったか思い出せませんが、親の話では、ご飯を炊いてハムやたまご、レトルトカレーなど簡単な献立だっだそうです。部屋で食べる安心や親が作ってくれる安心感を感じていたのだろうと思います。

僕が食べられないことで、親がそのような苦労や工夫をしていることには気がつけませんでした。旅行先では、部屋で(親が)料理してくれるものを食べるか、ファミリーレストランで食べていたので、実は、ホテルで食事が出るということを知らないでいました。旅行で食べ物に困ったという記憶もありませんでした。

中学生になったころ、ようやく周囲が見えるようになり、多くの人がホテルや旅館では料理も楽しみの1つであることを知るようになりました。そして、ホテルを探している親が、「この料理おいしそう!」とスマホやパソコンを見ながら話しているシーンを何度も見るようになりました。「こういうところは、路瑛が大きくなったら2人で行こう」と言うような会話もしていて、「あ、両親はホテルや旅館の料理を食べたいのに僕のために我慢してくれているのだな」と気づきました。
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中学に入ってからの家族旅行では、心の中で「ごめんね」と思う回数が増えてきたと思います。

せっかくの旅行にきているのに、昼ごはんに食べたいものがなく、コンビニで食べ物を買って車の中で食べているときなどは特にそう感じました。僕は、レストランなどに入らずに車の中で食べられるものだけを選んで食べていられる状態がストレスがなく快適です。でも、いつでも食べられるコンビニ食やファーストフードのハンバーガーなどを車の中で食べている様子を見ると、「親には美味しいものを食べてもらいたいな」と心が少しチクッと痛みました。

その土地でしか食べられないものや、その場所にしかないお店もあります。それなのに僕は、そのようなお店に入るのは嫌だなと思ってしまう。親は僕の好き嫌いの傾向は理解してくれているようで、「この店に入ろう」と無理やり連れて行くようなことはしないので、「行きたくない」というようなワガママを言ったこともないのですが、せっかく旅行にきているのに、その土地の名物を食べようともしない自分を残念に思うこともあります。

味覚が過敏で偏食傾向が強いと旅先での食べ物には困ると思います。親は、子どもが食べられるものを探し、自炊できる宿泊先を探したり、素泊まりにしたりすることが多いと思います。食べられるもの、食べ慣れたもの、知っているお店の食べ物があると安心です。せっかく旅行に来たのだからと土地の名物を食べることを強要しないようにしてもらいたいと思います。
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でも、矛盾していますが、せっかく旅行にきたその土地の名物が何なのかは教えて欲しいなと思います。広島に行ったときに広島焼きを見ました。大阪に行ったときは、僕は食べなかったけど、親はたこ焼きを食べていました。自分は食べられないけど、その土地の名物を実際に見ることは知識にも経験にもなると思います。小学生のころの旅行の食べ物の記憶は少ないですが、中学1年で福岡に行ったときに、博多ラーメンに挑戦しました。熱海に行ったときに、刺身も挑戦してみました。このように食べ物に挑戦した記憶は、ほとんど食べられなかったとしても、自分から挑戦した記憶としてよい思い出になりました。子どもが自分から挑戦してみようかなと思えるような、土地の名物紹介は大事だなと思いますし、僕の親は食べられなくても、「ナイス挑戦!」と褒めてくれ、嬉しく感じていました。

周囲の状況や自分の状況が把握できるような年齢になると、自分が食べられないことで、親が旅行での食事を楽しめていない現実に気がつくかもしれません。とはいえ、自分自身はなかなか食べられないのですが…。子どもが小さいときは難しいと思いますが、親が旅先での食事を楽しめる方法があるといいなと思います。例えば、コンビニやスーパーなどで子どもが食べられるものを買って、親は、テイクアウトできるその土地の名物を買ってホテルの部屋で食べるのもありだと思います。

旅先での、ニオイの問題

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中学生のころ、温泉旅館に泊まったときに、脱衣場に芳香剤やアロマオイルのような香りのするものが置いてあって、気持ち悪くなったことがあります。連泊している宿でしたが、次の日は僕は大浴場には行かず、部屋のシャワーですませました。せっかく温泉に来ているのにもったいないことです。

これは、自分で不快の原因が脱衣場のニオイだと判断でき、また自分でシャワーでいいと対策を考えらえる年齢だったからできたことです。もし、これが小学生での出来事だったとしたら、僕は気持ち悪くなった理由も分からず、ただ「気持ち悪い」しか言えなかったかもしれません。そうしたら、体調が悪いのかとか、食べ物にあたったのかなどと親は焦ってしまうかもしれません。または、「早く出たい」とお風呂に入ったばかりなのに出ようとして親をイライラさせてしまっていたかもしれません。

子どもが温泉を嫌がるとき、脱衣場のニオイが嫌だったのかもしれませんし、温泉のニオイ自体が苦手なのかもしれませんし、シャンプーなどの香りがいつもと違って嫌なのかもしれません。ニオイではなく、湿度やお湯の温度、照明やシャワーの圧力、反響する音などが不快なのかもしれません。
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僕はニオイの弱めの温泉は結構好きで露天風呂も入るのが好きです。でも、やっぱり、部屋のお風呂に入るほうが気が楽でした。ちょっと大きくなってから、露天風呂が部屋についている宿があることを知りました。まだ泊まったことはありませんが、部屋に露天風呂があったら、落ち着いて入れるように思います。家族風呂もいいと思います!
ほかにも、古い旅館やホテルの埃っぽいようなニオイが苦手でした。レンタカーのニオイも苦手でした。ただ、小さいころは、不快な理由は表現できなかったので、今、振り返って「そう言えばあのときに嫌だったのは、車のニオイだ!」と気がつくことがあります。

僕の親は旅先でたくさんの体験をさせてくれました。カヌーやシュノーケリング、ゴーカートや乗馬などの体を動かすものから、金箔貼りや草木染め、和紙作り、ガラス吹きなどのクラフトもたくさんしました。工場見学もたくさんしました。
さまざまな体験をした様子
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たいていは楽しい記憶として残っているのですが、つらかった記憶として残っているのは醤油作りです。発酵した大豆の香りなのでしょうか?体験中に気持ち悪くなって休ませてもらったことがあります。醤油は普段も使っていたので、自分で作るのを楽しみにしていた分、最後までやれなくて悲しい気持ちになりました。
醤油づくりの様子
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嗅覚は記憶を司る脳の領域に近く、香りと思い出はセットで記憶されやすいと言われているそうです。楽しい旅行の思い出が嗅覚過敏があることで、少し嫌な記憶になってしまうのは残念なので、お出かけの前にニオイの想定もして回避できるものは回避できるといいと思います。

浴衣は着られない。肌触りの問題

旅館に泊まるときに宿泊客のために用意されている浴衣。ちょっと憧れるのですが、生地が痛く感じました。シーツの素材も「なんか嫌だな」と思ったこともあります。生地に敏感な子どもの場合は、パジャマは持参がいいでしょうし、タオルケットなど普段使っているものを持っていくと安心して寝られるかもしれません。

僕は小さいころは「服は痛いもの」だと思っていました。みんな我慢して着ていると思っていたので、旅先で服が嫌だと抵抗したり、怒ったりした記憶はありませんし、親に聞いても、特に問題がなかったと言っています。

旅行先の体験として、シュノーケリングをしたり、乗馬をしたり、ゴーカートに乗ったりと衣服やマスク、ヘルメットなどを装着していました。親から見て嫌がった様子はなかったそうです。不快感がありながら着ていたのか、不快感を認知できていなかったのか、それとも不快感は感じてなかったのかは記憶がありません。

ただ僕の場合は靴下以外は、我慢しなければならない状況なら我慢して身につけられる状態です。ですので、楽しみのほうが強くて衣服やヘルメットなどの不快感は我慢できる状態だったのかもしれません。
ゴーカートに乗る様子
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ただ、このように書くことで、感覚過敏は我慢できるものと勘違いされることが心配です。僕の場合は、触覚にくらべ、味覚、嗅覚に関しては我慢することが難しいです。そもそも味覚と嗅覚の刺激を避けて行動しています。人によって、過敏の度合いも違いますし、我慢できる範囲も違います。

レジャーで身につけなければならないものが耐えられない苦痛という場合もあります。ライフジャケットやヘルメットなど命を守るものをつけるのが難しい場合もあります。子どもが着用を嫌がったら、無理せずその体験は諦めるということも大事だと思います。
シュノーケルをする様子
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次ページ「テーマパークでの、光や音の問題」

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