ADHD息子の片付け問題。「散らかっても片付けられる部屋」を目指して決めた15分ルールとは

ライター:丸山さとこ
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ADHDの特性によるものなのか、片付けが苦手な息子コウ。そんなコウは小学校低学年までは、収納環境を整えることである程度対応可能でした。ところが、高学年に入ってからは収納に工夫をしても声をかけても部屋が片付かないことが増えていきました。

1日かけても片付けを終えられない日も出てきたコウの様子を見ていると、どうやら原因は「物の量の多さ」にあるようでした。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

片付けの秘訣を伝授?「物の数を少なくしてみよう!」

部屋が片付かないコウに「15分で片付く物の量にすればいいんじゃない?」と提案する私
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年齢と共に増えていく所持品の数々!

ADHDの特性によるものなのか、コウはとにかく片付けることが苦手です。それでも、覚えやすく出し入れしやすい収納環境を整えることで、小学校低学年くらいまでは声をかけたときに片付けることができていました。

ところが、コウの年齢が上がるにつれて片付けは少しずつ“難しくて嫌なもの”になっていき、5年生になったころには部屋がいつも散らかっている状態になってしまいました。その原因は、物の量の増加でした。

「物の数が多すぎ&適当な場所にしまう」でグシャグシャになっていく部屋

年齢と共に入れ替わりつつも、教科書や本や工作道具はゆっくりと増えていきます。

基本的にはゲーム機やタブレットで遊ぶことの多い年齢とは言え、けん玉・パズル・ボードゲームなどのオモチャも地味に増え続け…気づけば管理しなければならない持ち物の総数が大分増えていました。
グシャグシャに散らかった部屋を見て「これはスゴイことに…」と絶句する私と我に返るコウ
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そうなると、物を使う度に出しっぱなしにしていくコウは「大量の物」を前に嫌になったり疲れたりしてしまいます。

食事や就寝の前など定期的に片付けるようにはしているものの、「2時間でよくここまで散らかせたね!?」と驚くほどグシャグシャになった部屋を前に親子共々、茫然とする日が増えていきました。

厳しすぎ!?「15分で片付けられる量だけ出す」ルール

終わらない片付けに心が折れてしまうコウ

大きくなり過ぎた片付けの負担に立ち向かうのはかなり大変で、次第にコウ一人では「今日中に終わらなかった…」という日も現れ始めました。
片付けるコウを見て「物が多すぎて、しまうのが面倒になってしまうのだろうな」と推測する私
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そんなコウをときに励ましときに見守り、ときに(ケンカしつつ)手伝いながら片付けを進めていく中で、『これはもう、コウが把握管理できる物の量を越えてるんだな…』ということをひしひしと感じるようになりました。

1つひとつの物をしまうところは分かってはいるものの、物が多すぎて、”しまう”という作業自体が面倒になっている様子のコウ。

そんな彼を見て、私は「これはもう物を減らすしかないな」と思うに至りました。

コウが片付けに集中できる時間は15分なのかも?

観察や話し合いや試行錯誤を繰り返した結果、コウが集中力を保ったまま片付けをできる時間は15分くらいだろうということが分かってきました。

20分を過ぎてくると次第に動きが鈍くなり、しまう場所も適当になっていくのが見て取れます。
片付け始めて15分過ぎると心が折れていくコウは、20分経ったころには動きも鈍くなって…
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15分を過ぎた時点で一度切り上げ、休憩を挟んでから続きを行う方法も試してみましたが、どうやら完全に飽きた状態からのスタートになってしまうようでした。「それはそうだよな。嫌いなことを休憩後に再開するのは面倒だよな…」と思うと納得の結果だと感じられました。

それらのことから、”15分で片付けられる物の量”が現在のコウにとっての適切な量なのだろうという仮定を立てて、片付けを組み直すことになりました。

少しずつ物を減らして「散らかっても片付けられる部屋」に!

片付けについて話し合いつつ「物の量が多すぎて管理できる限界を超えていると思う」と伝えると、「そうなってると思う。片付けにかかる時間が長すぎるし…」と、うなづくコウ。

それなら一度減らしてみようか…ということで、「今これは部屋に出ていなくてもいいかも?」という物をコウに選んでもらい、“普段遊ぶときには開けない箱”に入れてもらいました。(出したいものがあるときは、同数の物と入れ替えるシステムにしました)

そうして15分で片付けられる量まで物を減らすようにすると、コウの部屋は“散らかっても片付けられる部屋”になりました。
片付けについて話し合いながら進めていくコウと私
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使い終わった物をいつでも戻せるようになったわけではないため、今でも部屋はだいたい散らかっていますが、コウの負担は減ったようで以前よりも気楽に片付けをするようになりました。

物を減らすまでは片付けに半日から数日かかることも珍しくなかったので、15分で片付けられるようになってからは「そろそろ片付けて~」と言いやすくなったのが何よりありがたいです。

これからも「ごはんだよ~部屋片付けて~」と言いながら地道に片付けを推奨しつつ、方法を一緒に模索していきたいなと思います。

執筆/丸山さとこ
(監修:初川先生より)
片付けが苦手な人は多いですね(かく言う私も片付けがとても苦手です…)。片付けが苦手なコウくんに対して、低学年時は環境調整で対応し、高学年になってからはお母さんが鋭い観察とアイデアでうまくご対応されたという今回のエピソード。とても素晴らしいです。片付けに挑むコウくんのキャパシティとコンディションを観察によってよくぞ見極められ、そして例えば「どうして片付けできないの! 」のような叱責に傾くことなく対応されています。物には執着がある割に、片付けてしまうと(物をしまって見えなくなると)「ない」ことになり、執着も薄れるお子さんもいると思います。片付けにまつわる困難さはさまざまですが、大人が怒っても片付けはできるようにならないので、今回のような工夫でお互い納得のいく手立てが取れるといいですね。
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