ASD小6息子と母とのちょうどいい距離感がわからない!言葉と中身の発達のギャップに、どこまで対応する?ーー児童精神科医 三木先生に聞いてみた!

2021/10/05 更新
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ASD・ADHDである息子のコウは、自分や状況を客観視することが苦手です。そのためか、”経験を振り返って理解や気づきを得ること”を一人で行うのは難しいところがあります。

そんな彼にサポートを行う中で浮かんでくる「親としてどのような距離でどう関わればよいのか?」という迷いについて、児童精神科医の三木崇弘先生にお聞きしました。

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丸山さとこ
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監修: 三木崇弘
フリーランス児童精神科医
スクールカウンセラー
兵庫県姫路市出身。愛媛大学医学部卒・東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了。早稲田大学大学院経営管理研究科修士課程在学中。 愛媛県内の病院で小児科後期研修を終え、国立成育医療研究センターこころの診療部で児童精神科医として6年間勤務。愛媛時代は母親との座談会や研修会などを行う。東京に転勤後は学校教員向けの研修などを通じて教育現場を覗く。子どもの暮らしを医療以外の側面からも見つめる重要性を実感し、病院を退職。 2019年4月よりフリーランス。“問題のある子”に関わる各機関(クリニック、公立小中学校スクールカウンセラー、児童相談所、児童養護施設、保健所など)での現場体験を重視し、医療・教育・福祉・行政の各分野で臨床活動をしている。

経験をかみ砕いて消化するのが苦手なコウです

経験を積んでいくのが難しいコウをどうサポートしていったらいいのか、距離感などに悩みます。
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「どこまでどのように関わっていいの?」サポートの加減に悩んでいます!

子どもが物事への理解や気づきを得て学習していくためには、経験というデータの積み重ねが大切なのだろうと思います。けれども、ASD・ADHDである息子のコウは、経験をかみ砕いて消化することが苦手なようです。

そんな彼に対してサポートを心がけつつも「どこまでどのように親が関わってよいものなのか?」と日々迷うことについて、児童精神科医の三木崇弘先生に伺いました。

感情や状況を言語化するサポートは、コウにも必要なものだけど…

丸山(以下、――)経験というデータを得ていくことに関して気になっていることがあります。息子の場合、むき身のまま経験をたくさんしても、理解の解像度の低さによって「そこで得るもの」が凄く少ないことがありまして…。

それを私が拾い出して「ここにはこういうことが含まれているんだよ」と今まで教えてきましたが、『この関わり方で良いのだろうか?』という迷いがあります。

小さい子どもが相手なら、状況や心情を大人が代弁するところだけれど…?
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――例えば、幼児に対しては親が「痛いね・楽しいね・おいしいね」と感情を表現して、「今ここで何が起きているのか」も言葉で構造化して子どもに共有する形で教えていきますが…それは最初、思考の代弁みたいなところから始まっていきますよね?

三木先生:うんうん。

――それを小さい子にするのは何もおかしくないけれど、大きい子にすれば過干渉や支配みたいな話にもなりかねないわけで…それをどの程度していって、どのあたりからどの程度手を引いていくのか。
息子の身体的な年齢ではなく発達に合わせてやっていくのが良いのだろうと思いますが、「教えていることは幼児の発達段階にあたる内容だけれど、息子の自意識は幼児ではない」という状況についてどう配慮するとよいのか、お手本のない難しさを感じています。

表面の言語に合わせつつ、中身のレベルは中身に合わせるという方法

「成人の発達障害者向けの書籍は”大人向け”の言語で書いてある」と三木先生
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三木先生:(成人の発達障害者向けの書籍の話から)僕、大人のやつあんま見たことないんですけど、どんな書き方になってるんですか?

――ビジネス書などのノウハウ本の書き方に近いなと感じます。

三木先生:なるほど、大人向けの言語で書いてあるっていうことですね。じゃあ、僕それでいいと思うんですけど…えっと、その話から先にすると…定型発達の子って中身の発達と表面の発達が、ある程度リンクして進んでいくじゃないですか。一方で、発達に障害のある子はそこにギャップがあるよねっていうのが、ひとつ焦点になってると思います。

伝え方は表面の言語に合わせて、でも中身のレベルは中身に合わせるっていう、僕はシンプルにそうだと思うんです。成人向けの発達の本がそうなってるのは…中身はあんまり一般的な大人向けじゃないと言ったら失礼ですけど、大人になるに当たって必要な基本的なスキルの説明を、でも大人になってる人向けに説明するために、大人の言葉で書いてある。子ども向けみたいに「こんなことをしましょうね~!」っていう書き方にはなってないわけじゃないですか。

――そうはならないですね。

三木先生:それと同様に、発達に障害のある子たちっていうのは、表面も同年代の子たちよりはちょっと幼めのことが多いんじゃないかなと思うので、伝え方と内容をその子向けにアレンジする。例えば「実年齢12歳だけど、言語は10歳相当でいけるな!でも中身は8歳だね」みたいなところで、8歳の中身を10歳相当の表現で実年齢が12歳の子に向けて出すっていう感じでしょうか。そこはね…なんかもう、感覚になっちゃうと思う…。

――感覚ですね、難しいですが…普段から凸凹の凸に注目すると凹が、凹に注目されると凸が見えづらいというところがあるので、本当にそうなのだろうなと思います。

「表面言語が高めの子」に要注意!?凸によって見えにくくなる凹の話

発達の凸凹が大きめな子どもの場合、凹に注目されることで叱責が増えたりするほか、「あれができないのだから、これもできないだろう」との考えからチャレンジの機会が減ることもあり、保護者としては凹だけに注目しないよう意識するシーンも多いかと思います。

一方、凸への注目は”長所を伸ばす”などの理由から良いこととされがちですが、それにより”凹による困難・苦手さ”が見えにくくなることもあります。三木先生にも、今振り返ると「凸により凹が見えなくなっていたのではないか?」と思う経験があるそうです。
表面言語が高めの子どもに対して大人たちはだまされがち…!?
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三木先生:人によると思うんですけど、IQ高めというか、表面言語が高めの子に対して、僕たちがけっこう騙されてるかもしれないという自覚を持つことが凄く大事だと思っています。「しゃあしゃあと喋ってるけどホンマに分かってるかなー」みたいな目線を持ってみて、その子の理解をこちらが過信していないか考えてみる。なのって、結局、僕もよく分かんないんですけど(笑)。

僕の患者さんでも、中学生くらいのときに「大学院生ですか?」みたいなしゃべり方をする子がいて、でもやっぱり今思うと、もうちょっと子ども扱いしてあげたほうがよかったかもっていうところはあって。相手の理解とか、あるいは情緒的な納得・受け入れの度合いを見極めるのは難しいっていうことがよく分かったケースだったなと思っています。

――表面言語の高さに騙されるというお話よく分かります。理解や感情などが伴っているかどうかは表面言語の高さとは別の話なのだな…と、息子と接していて思います。それとは逆に彼の”幼さ”のほうに引きずられる場合もあって、『それも大変そうだな』と思うときがあります。学校も含めて、世間で起きるそれらのズレは”起こるもの”としてやっていくのが現状としてはベターかな?と思っているので、今は「私がそれをしていないか?」ということが気になっている状態です。

三木先生:それはまぁでも、常に振り返りをしながらやっていってもらえれば、そんなに大きなトラブルにはならないと思いますよ。一番危ういのは、「保護者として私ちゃんとやってる」って思ってる人なんだと僕は思うんですよね。

――それはとても気がかりなところです。

「常に振り返りをしながらやっていく」ということ

「私から見たコウ」の情報だけで相談をしているのが不安で…

――保護者として、『私は子どもの現状を把握して対応している』という思い込みの落とし穴に落ちてないかな?っていうのは凄く…ハラハラしながらの毎日で。

三木先生:あーいやでも、そこまでちゃんと考えてる人って思ったより少ないんで、いいんじゃないですかね?

――そうなんですか?ずっと手探りできていて…「今日の彼は、今の彼はどんな感じ?」と息子から返ってきた様子を見ながら手探りで接していくものの、これで合っているのかどうかもよく分からなくて。この子を見ていこうと思いつつやってはいますが…。
相談するにあたって「私が見た息子の姿」しか伝えられていないことに不安がつのります!
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三木先生:今日おっしゃってる構造の理解とかで、「いやーそれはマズイやろ」と思ったところは一ヶ所もないんで…なんか、いいんじゃないかなーと思いますよ。
ただその、「これでいいのかな?」っていう確認をできる場所みたいなのは、確かにどこかにあるといいかもしれないんですけど…。

――そうなんです。私の話はあくまで『私が見た息子の姿を私の視点で話していること』に過ぎないので…。お世話になっているスクールカウンセラーの先生は「お母さまからお話を伺っていた通りですね」とおっしゃってくださいましたが、今でも”私目線の悩み”だけを伝えて相談している現状には変わりなく、『息子の客観的な現状を分かった上で相談できる場があれば…』と思っています。

三木先生:これはでも…これから先どんどん減っていくでしょうね…。

――年齢的に…。

三木先生:そうそう年齢的に。

やっぱり年齢の壁は厚いなぁ…!と感じる話になりましたが、以前書いたコラムで触れていた「思春期の子どもにとっての学びのネットワーク」が、私の”身近な家族ゆえの思い込み”に対する緩衝材になってくれるといいな、と思いました。濃くなってしまいがちな親子の関係を相対的に薄めるシステムがあることで、少し安心できそうです。
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コウもまた「振り返りながらやっていくこと」が大切

とはいえ、それだけでは「コウが学びのネットワークを作れば万事解決!」と大船に乗ることはできません。ASD・ADHDであるコウは、特性の影響もあるのか安定した人間関係を築くことが苦手だからです。

友達付き合いが長くなると、「最初はコウに付き合ってくれていた子がコウのルーズさとしつこさで嫌になってしまう」「最初は仲良く遊んでいたのに次第に命令をされるようになる」などのトラブルが起こりやすく、特に後者のパターンは一度トラブルが起きると長期化しやすい傾向があります。

そんなコウの状況に対して、三木先生からは『彼自身もまた人との関係性について振り返りをしながらやっていくことが大切』なのだとアドバイスをいただきました。
根本的な解決のためには「客観視」や「振り返って整理」を自分でしていくことが必要
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三木先生:うーん…そうですね~…関係性の問題ってすごく何ていうか…表現の仕方が難しいのですが、「トラブルを引き寄せがち」なお子さんっているなって思うんですよ…子どもに限らず大人もなんですけど…。

――いますね。

三木先生:何ていうか、とにかく、人生にトラブルが起きがちな生き方をしてる人とか…まぁ物事の捉え方も含めそうなんですけど、そこをある程度客観視できるといいですよね。そうすることで、無用なトラブルは減らしていくことができると思うんです。最初は大人と一緒に始めるのでいいんですけど、自分で振り返って整理していくみたいなプロセスは多分自分で進んでいかないと、その手のトラブルはなくなっていかないと思うんですよね。

――そうなんですよね。親としては見ていてハラハラする気持ちもありますが、同時に『小学生の内に本人が多少懲りるまでトラブルがいきついて良かったな』と思うこともありました。

三木先生:あーそれはそうですね。それはやっぱり本人が自覚していくっていうのはめちゃくちゃ大事なので。

――そうですね。でも今後、もっと大きなトラブルとか…「ちょっと誘われて断れなくて」と言いながら悪いことをしでかしたり、そういうことも息子はありえるだろうな…みたいな覚悟は、もうこっそり決めてはいます。サイフも隠しておこうかと(笑)。

三木先生:なるほどなるほど(笑)。まぁでも、丁寧に構造化してフィードバックしていけば理解ができるお子さんのようなので、それは凄くよかったですよね。

自信の有無に関わらず必要な「振り返り」の大切さに気づきました

今後起こりそうなトラブルのことを想像すると頭と胃が痛くなることもありますが、トラブルは「成長の種」でもあるのだろうと思います。

以前、「Aくんが断っても断っても無理やり『そこを何とか』って誘ってくるんだよ」とコウが悩んでいた時期がありました。それが落ち着いてからしばらくたったある日、彼は「Aくんの強引なところに困ってたけど、僕、よくお母さんに同じことをしているんだなって気づいたんだ…今までごめんね」とポツリとつぶやきました。それを聞いて、『コウも人との関係を通して自分を振り返ることがあるんだ!』と驚いたのを覚えています。
友達との関係から自分を振り返って気づいたことを教えてくれるコウ
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また、今回三木先生のお話を伺う中で『自信のなさと”振り返りができているかどうか”は別のことなんだな…』と気づけたのは、私にとって大きな収穫でした。

・「自信があるから」と振り返ることをしない、自信満々な状態
・ただ不安なばかりで振り返りをしない 、自信がない状態

自信の面からは一見真逆に見える両者の状態ですが、振り返りをしないのであればどちらも同様の危うさを抱えているのだということが分かると、何だか不思議な感じがします。目から鱗を落としつつ、『自信の有無に関わらず、振り返ることは大切。そのために人の手を借りることも大切!』なのだと改めて思いました。

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