「不登校じゃない、学ぶ場所を変えただけ」感覚過敏で私立中を退学、N中・S高での学びを選択して

2021/10/30 更新
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感覚過敏だけが理由ではありませんが、教室の騒がしさやニオイがつらく、学校を休みがちになった中学1年生が、新しい学びの場所として選んだフリースクールやオンラインスクールでの生活をお伝えします。

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加藤路瑛
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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

そもそも集団生活をする学校が音やニオイなどの環境面で合わない子どもは多い

こんにちは。加藤路瑛です。15歳、高校1年生です。自分の困りごとである感覚過敏の問題を解決したいと思い13歳のときに「感覚過敏研究所」を立ち上げ、感覚過敏の課題解決に取り組んでいます。当事者目線、特に子どもの視点で感覚過敏について話していきたいと思います。

今回は、感覚過敏のことも含めながら、中学や高校に登校せずオンラインスクールを選んだ場合の生活や、学習面、そしてリアルな現状について僕の体験を通してお伝えします。
不登校の理由はさまざまですが、感覚過敏などによって学校の環境に合わない子どもは少なくありません。

ホームスクール&ホームエデュケーション家族会がホームスクール&ホームエデュケーションを実践している164世帯に実施したアンケート調査によると、「家庭を拠点とした教育・学びを始めた理由・きっかけ」の1位は「学校の環境が合わない(音、光、匂い、授業時間の長さなど)」で、全体の66.5%を占めていたというデータもあるようです。

実際、僕も中学校の教室での、騒がしさやお弁当のニオイなどで教室にいることが苦痛で、休み時間は校内の静かな場所を探して過ごすようにしていましたし、過敏さによる体調不良で保健室に通う回数も増えていました。

そのような中で次第に学校にいることに苦痛を感じるようになり、中学1年の3学期からは学校を休みがちになり、最終的に中学2年生の9月に当時通っていた私立中学を退学しました。

私立中学を退学した中学生はどうなるかというと、地元の公立中学校の所属となります。しかし、学校生活の音やニオイなどが不登校の要因だと分かっているのに、地元の公立中学に通うという選択を僕はできませんでした。

僕が選んだのは角川ドワンゴ学園N中等部でした。N中等部は、学校教育法で定められた学校ではなく、フリースクールやインターナショナルスクールなどのような学びの場と類似するものです。N中等部は「プログレッシブスクール」という表現をしていました。ですので、地元の公立中学に籍をおきながら、フリースクールに通うことになります。
現在は完全オンラインコースもありますが、当時は、N中等部にはオンラインコースはなくキャンパスに通学して学習するスタイルでした。地元公立中学が認めてくれれば、N中等部の出席日数がそのまま地元公立中学の出席日数になる場合もあります。

僕も籍を置くことになる地元中学に相談に行き、N中等部の出席日数をそのまま公立中学の出席日数に認めてもらうことなりました。書類上は不登校生ではないのです(笑)したがって、卒業証書は地元中学から出ることになります。

N中等部での生活

N中等部は通学日数を週1、週3、週5コースから選ぶことができます(現在はオンラインコースもあります)。僕は週5コースを選びました。N中等部で、いろいろな体験や学習ができると期待したからです。

N中等部では「他人の意見を否定しない」というような、グランドルールというものがありました。グランドルール以外のルールはありません。ですから、服装も髪型も基本的には自由です。休み時間に、持ってきたSwitchなどのゲームで遊ぶのも自由ですし、パソコンで動画を見たりゲームをするのも自由です。授業中にトイレに行ったり、飲み物を飲むのに先生の許可はいりません。
僕は嗅覚過敏が強いので、お弁当の時間は1人で離れて食べるほうが気が楽です。N中等部では、同じように1人で食べている人も普通にいて、1人でいるのも、そんなに目立ったりすることはありません。僕は、ゲームなどやらせてもらうこともありましたが、結構、一人でヘッドホンをして好きな音楽を聞いて、過ごしていました。そういう状態も特別ぼっちという感じではなく、好きなように過ごしているという感じです。

学習面は、国語・数学・英語のオンラインカリキュラムはありますが、自分の好きなテキストで勉強してよく、時々オンラインの確認テストがあります。しっかりテストがあるわけではないので本人が真面目にやるかどうかにかかっていて、やらなくても誰も何もいいません。

僕は正直、N中等部時代に中学の勉強はほとんどやりませんでした。通っていた私立中学では中学2年の夏の段階でほぼ中学3年生の範囲の学習をしていたこともあり、N中等部でがっつり勉強する意欲はありませんでした。

また、プログラミングの授業やプロジェクト学習などは、楽しめる人もいれば楽しめない人もいると思います。

通っている生徒の多くは、不登校の代替として選んでいる印象がありました。コミュニケーションが得意でない人も多いように思いました。何かしら、今の学校教育に合わなかった人が集まっているのかもしれません。

中学3年生当時は、コロナ禍で通学ができなくなりましたので、僕は通学週1コースに変更しながら、週1回、オンラインで授業に参加しました。2020年度からはネットコースも誕生しましたが、週1コースにしました。ちなみに、オンラインでの動画授業は、24時間好きなときに自由に視聴して勉強できる環境です。

学習面は自立と自発が必要で、プロジェクト学習やプログラミング授業は本人次第とは思いますが、僕は総合的にN中等部に進学して満足していました。

生徒を個人として尊重して接してくださる先生方と、無理をせず存在できる環境は僕にとって気が楽でしたし、「N中等部」という所属先があることの安心感はありました。そして、ちょっと人とは違う先進的なスクールを選んだというような誇りのような気持ちもあります。
N中等部卒業式での写真
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高校もそのまま通信制高校へ

高校は角川ドワンゴ学園N高等学校へ進学する予定でした。N中等部生がN高等学校へ進学するとき、高校の通学コースを選ぶとき、一般よりも早い時期にエントリーすることができ、早い時期に入学許可をもらうことができます。人気キャンパスで定員いっぱいで申し込み中止になるような自体がない限り、それほど大きな特典ではありませんが、進学先を迷っているとき、お守りとしてN高の入学許可を持っておくのは気持ちが落ち着く人もいるかもしれません。

僕の場合は、N高等学校だけでなく、S高等学校が新設されるという情報があったので情報を待ちました。そして、S高等学校を選びました。スクーリングを受ける本校が沖縄かつくばかの違い以外はないという説明でしたので、1期生という言葉の魔力で僕はS高等学校の1期生になりました。

通学はいっさいせず、オンライン学習のみのネットコースです。N高・S高の通学コースというのは通学して数学や英語をやるのではありません。一般的な高校卒業に必要な内容は通信制高校としてオンラインで授業を受けて、課題を提出して単位を取ります。では、通学コースは何をしているかというと、簡単にいうと習い事としてカルチャースクールやビジネススクールに通っていると思ってください。プログラミングや英会話、プロジェクト学習をキャンパスでやるのです。

僕はネットコースのみなので、これからのキャンパスでの取り組みは一切なく、単純に高校卒業の単位をとるだけの目的で利用しています。N高・S高も大学受験用のコンテンツも用意していますが、活用するかは本人次第です。

学習は毎月課題提出内容が決まっており、それまでに動画を視聴し、確認テストに回答していきます。動画は飛ばして見ることはできませんし、視聴しないでテストだけうけるようなこともできないようになっています。好きな場所で好きな姿勢で好きな時間に受講できるのはやっぱり楽です。集団の中で制服をきて、みんなと同じように先生の話を聞き、同じスピードでテストに答えていくようなことが苦手な僕にとって、マイペースに静かに勉強できるのはストレスが少ないです。

通信制高校生の生活

制服姿の筆者
Upload By 加藤路瑛
N高・S高は購入も任意の制服があります。通学コースの生徒も着ても着なくてもOKです。通学の服装も自由です。僕はネットコースで通学したので制服は買っていません。写真は、入学式で新入生代表をさせてもらったときにお借りしたものです。多分、これが最初で最後の制服姿かもしれません。

基本的に感覚過敏で服を着るときに痛みを感じるので、制服があるような生活は好みません。普段の勉強は、布団の上で寝転がってノートパソコンで講義を見ています。フリーダムです(笑)

ネットコースで友達ができるかどうかも心配される人がいますが、これも本人次第です。N高・S高全生徒が参加しているコミュニケーションツール(Slack)で生徒は交流できます。ゲーム仲間を集めたり、アニメや音楽など共通の話題で繋がったり、同好会もたくさんあります。活用できるかは本人次第で、先生が人間関係のサポートをしてくれる訳ではありません。

また、有料・無料のさまざまな特別講座が企画されています。声優の方の講義が聞けたり、写真撮影の勉強ができたり、ワークショップや海外留学の情報セミナーなど。そういうものの中に興味が持てるものがあるかもしれません。情報は全てSlackで流れてくるので、僕はこれが苦手です。ですがセミナーの案内などは保護者のメールアドレスにも届くので、保護者の方もご安心ください(笑)
入学式で新入生代表を務めたときのアバターの様子
入学式で新入生代表を務めたときのアバターの様子
Upload By 加藤路瑛
N高・S高の新しい取り組みとしてはVR学習です。先ほど入学式で新入生代表で挨拶をしたと書きましたが、入学式の一部はVR上で行われました。僕も配信スタジオにいましたが、式ではアバターで登場しています。もうリアルボディーも不要です。

VR授業を受けられる学び方もあります。
VR使用光景
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仮想空間に地球儀が出てきて回すことができたり、本を開いたりできますが、使用は必須ではありません。僕はVR酔いがひどいので、実はVR学習はあまりやっていません。

最近は発達障害の小さい子のソーシャルスキルトレーニングもVRで行ったりするようですが、視覚情報と平衡感覚や固有覚が不均衡になりますので合わない人もいるかもしれません。僕はVR学習は一旦、撤退をしていますが、とても面白い世界なので、VR酔いの解消方法を考えてまた取り組みたいと思っています。ヘッドセットは触覚過敏、聴覚過敏、視覚過敏があるとなかなかつらいものなので、この部分の改善も必要だと思っています。

通信制高校は課題さえこなせればあとは自由です。僕は自由な時間で、感覚過敏の研究や商品開発などもしていますし、アルバイトもしています。ゲームもしますし、アニメなども見ます。

通学というものから解放された生活は本当に楽です。ただ、自由すぎるので、生活は乱れます。朝4時くらいに寝て昼に起きるということも少なくありません。その生活を不規則だとかだらしないと怒るような保護者だと窮屈だろうと思いますが、僕の親は自由にさせてくれています。

まとめ

僕は中学から一般的な学校に通う生活をやめています。それを他人は「不登校」と呼ぶのかもしれませんが、僕は自分が不登校だと思ったことは一度もありません。

学ぶ場所を自分が快適だと思う場所に変えただけです。


もちろん、中学で私立中学を退学するとき、悩みました。それは自分の人生が変わるとか、人と違うことをする不安というよりも、「親に申し訳ないな」という葛藤です。私立中学にせっかく入学して、そのまま高校にも進学できるのに、その道を嫌だと言うのです。普段は自由にさせてくれる親が、僕の中学退学だけはすぐにいいとは言ってくれませんでした。

ですから、不登校になるとか、フリースクールに通うとか、通信制高校に通うというのは、本人が自分の人生を悩むと言うより、親が深刻に考えているから、それを子どもが見て、申し訳ないことをしているように感じるのだと思うのです。

それは、多分、子どものことを真剣に考えてくれるからこその否定や不安の表現なのだと思いますが、なんとかなると思います。どうか、学校に行くかどうか、人と同じような学校に行けるかどうかで悩みすぎないようにしてほしいと思います。

どの道が正解かなんていうことはわかりません。本人も親もわかりません。ただ、今思うのは、自分が快適だと思う場所を選べる自由を、心から感謝しています。

今は高校1年生ですが、大学進学も考えています。どの場所が快適か、考えながら自分の居場所を探したいと思います。
執筆:加藤路瑛

(監修者・井上先生より)
他の人と違う道を選ぶことは、親御さんも本人も勇気がいる人も多いかと思います。加藤さんの実際の体験のなかでの感想はとても重要なものです。多様な学びの場があたりまえの選択肢として認知されるようになってほしいと思います。
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