抱きしめたいけど拒否される!?感覚過敏のある息子が教えてくれた感覚の違い。気づいた今、心がけていること

ライター:ウチノコ
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こんにちは、ADHDと自閉スペクトラム症の診断を持つ小学2年生、むっくんの母ウチノコです。子どもをぎゅっと抱きしめるって、しみじみと幸せを感じる瞬間の一つかと思います。だけどむっくんは小さなころから抱っこが苦手な子どもでした。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

むっくんのことを抱きしめたい

子どもを抱きしめて、隙間なく体をくっつける。ぬくもり、肌のやわらかさ、シャンプーの匂い、背中にまわる小さな手のひら。安心して体を預けてくれる様子に子どもからの信頼を感じ、愛おしさが育くまれていく大切な抱っこの時間。

だけどむっくんは小さなころから抱っこが苦手な子どもでした。私はこのかわいらしい子をぎゅうっと抱きしめてしまいたいのに、抱きしめるとのけぞって逃げ出したり、癇癪を起こしてしまったり…。むっくんが私の腕の中でじっとしてくれるのは、ぐっすり眠る真夜中だけでした。眠ったことを見計らって抱きしめて、私は寂しさを埋めていました。

「スキンシップを大切に」は育児のセオリーなのに、それができないこの子にどう愛情を伝えたらいいか分からず、私はよく途方に暮れたものでした。
ぎゅうっと抱っこしてみたいのに
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「感覚の違い」によるすれ違い

私は当時「子どもは抱っこが好き」と思い込んでいたため、抱っこを嫌がるむっくんは私を必要としていないと悲観していました。だけど、むっくんと付き合っていくうちにその背景には感覚過敏や多動ちゃんならではの理由があって「抱っこ嫌い=私を嫌っている」ではないと理解できるようになりました。
成長後に教えてくれた抱っこが苦手な理由
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「感覚の受け取り方」「感覚によって与えられる感情」というさまざまなことを理解する上での「基盤」がむっくんと私は違います。抱っこ一つとっても、そこから受け取るさまざまな感覚が私にとっては「心地よいもの」ですが、むっくんにとっては「不快なもの」。抱っこをしないほうがむっくんにとっては「安心」で、私にとっては「寂しい」。私たちは親子なのに感覚や感情を共有しにくく、小さなすれ違いが起こりやすい親子です。

そんなすれ違いを防ぐために、いつからか意識するようになったことがあります。それは「感覚や感情を余すことなく言葉にして伝える」ということです。感覚も感情も見えないし聞こえません。感じ方が異なる以上、私の感じ方を、動いていく心を、意識して伝えなければ伝わりようがないと思い至ったのです。

言葉を尽くして伝える

むっくんが抱っこが好きではないことは知っていますが、私はやっぱり抱きしめたい気持ちを抑えられないときがあります。だって私は大好きなむっくんをぎゅうっと抱きしめる幸せを感じたいからです。

そこで、ときどきむっくんに抱っこの許可をもらった上で抱っこさせてもらいます。そのときはむっくんがつらくないように、できる限り言葉を使って具体的に感覚と感情を伝えることを心がけています。
秘儀・実況中継抱っこ!
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心を言葉で実況中継すると、むっくんは抱っこ中にいくらか安心した表情を見せてくれることに気がつきました。言葉で伝えはじめたころはとにかく恥ずかしく感じたものですが、以前よりも今の方がむっくんに私の気持ちや幸せが伝わっている感じがするのです。

また、伝える言葉を紡ぐため、私も自分と向き合う必要があり自己理解まで深まった気がして、言葉を尽くす清々しさに目覚めた気分です。

さらに、意識して言葉で気持ちを伝え続けるうちに、むっくんにも変化が…。私と同じように、むっくんも言葉を使って感覚や感情を伝えてくれることが増えてきたのです!
まるでぶつかり稽古のようなふれあい
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気持ちを伝えてくれながら、恥ずかしそうに抱っこを求める様子はひたすら愛おしくって。私たちはこれまでスキンシップで育めなかったものを、今言葉を使って育んでいるようにも感じています。ひょっとしたら感覚の受け取り方は違っていても「言葉を使うことが得意」「言葉で感覚を共有しやすい」という部分が私とむっくんは似ているのかもしれません。
感覚の違いは補えると気づく
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