手に血が…これって自傷行為?ASD息子が「りふじんだ!」と小学校の鉄の扉をひたすら殴る理由
ライター:寺島ヒロ
普段はぬいぐるみのクマさんのように大人しく、朗らかなタケル。しかし、一旦不安モードになると、ブツブツと呪詛の言葉が口から洩れ出し、こぶしを柱にぶつけたりします。イライラをただぶつけているのだろうと思っていましたが、聞いてみると複雑な理由があったのです。
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
「りふじんだ!」と泣きながら鉄の扉を殴る息子、これって自傷行為?
わが家の長男タケル(ASD・21歳)は、滅多に怒ったり、癇癪を起したりしません。妹のいっちゃんと喧嘩したのも15年間で2回だけです。
ただ、ほんの小さな幼稚園生だった3歳か4歳のころから、予定どおりに物事が運ばないときや、裏切られたと感じたときは、しっかり抗議してきていました。
こちらからすると、そこまで怒ることないのに..!と感じるようなことなのですが、タケルには許せないことのようで、涙を「びゅびゅっ」と、とめどなく噴き出しながら、1時間でも2時間でも泣いていました。
このようなことから、タケルには、他人に暴力を振るうことこそないけど、かなり気性の激しいところがあるなとは感じていました。
ルール通りじゃないとイヤ!な息子
タケルに、ずいぶん大きくなってから聞いた話ですが、小学校5~6年生のころは「りふじんだ!」と思うことがあると、少し溜めておいて、あとで学校の鉄扉を叩いていたそうです。
なんで鉄扉?というと、「音が良かった」のだそうです。
暴れたくて殴ったのではない?タケルなりの理由
「嫌だ」という気持ちを伝えても相手が引いてくれない場合、タケルは強い怒りを感じるようです。しかし、だからといって、相手を殴ったりしても「理解」はしてもらえないと思うので、相手にはもう働きかけをしないんですね。
ただ、怒りが体の中に渦巻くと、「うわーってなって、自分がズレていくような感じ」がする、だから叩いたり、自分が反応するような音を出して刺激を与えたくなるのだそうです。「そうすると「はっ」って何かが戻って、少し落ち着くんだよ。」とタケルは言います。
怪我をするというほどではないけれど、これも自傷行為の一種のようです。
怪我をするというほどではないけれど、これも自傷行為の一種のようです。