モロー反射とは?新生児から生後何ヶ月くらいまで見られる?激しいときの対処法やてんかんとの違い、脳性麻痺や発達障害との関係についても解説【小児科医監修】

ライター:マンガで分かる発達障害のキホン
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モロー反射とは、新生児に見られる原始反射の一つで、大きな音や明るい光、身体がグラッと傾いたときなど、外から大きな刺激が与えられたときに、手足をビクッとさせ、ゆっくりと万歳をするように腕を広げ、何かにしがみつくような姿勢のように見える様子のことです。
モロー反射の現れる期間や、対処法、てんかんとの違い、脳性麻痺や発達障害との関係について小児科医の監修の元、解説します。

監修者藤井明子のアイコン
監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。

新生児によく見られる「モロー反射」とは?

モロー反射とは、新生児(生後0~4ヶ月までの間)に見られる原始反射の一つで、大きな音や明るい光、身体が傾いたときなど、外から大きな刺激が与えられたときに、手足をビクッとさせ、ゆっくりと万歳をするように腕を広げ、何かにしがみつくような姿勢のように見える様子のことです。
モロー反射とは新生児に見られる原始反社の一つです(さくらキッズくりにっく院長・小児科医、藤井明子先生監修)
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モロー反射が激しいときは、大きな音を立てない。極端な熱さ、冷たさに触れないようにする、こまめなスキンシップなどが重要です(さくらキッズくりにっく院長・小児科医、藤井明子先生監修)
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モロー反射を起こさないためにベビーベッドや寝具をだっこされている腕の中の体温くらいに温めておくのがポイント(さくらキッズくりにっく院長・小児科医、藤井明子先生監修)
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モロー反射を起こさないために、だっこから腕を抜くときには赤ちゃんの首の角度や体勢が大きく変わらないようにする(さくらキッズくりにっく院長・小児科医、藤井明子先生監修)
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モロー反射を起こさないために、扇風機やヒーターの光が赤ちゃんに直接当たらないようにする(さくらキッズくりにっく院長・小児科医、藤井明子先生監修)
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モロー反射かてんかんか気になったときには小児科に相談をしてください(さくらキッズくりにっく院長・小児科医、藤井明子先生監修)
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子どもの発達が進むスピードは個人差があるので、モロー反射が活発に見られる時期や消失する時期は子どもによって変わってきます。

原始反射とは?

モロー反射のように、赤ちゃんが生まれたときから備えている反射的な運動のことを原始反射と言います。原始反射は足や指、口など赤ちゃんの身体のさまざまな部位で見られます。既に挙げたモロー反射のほかにも、以下のような原始反射があります。

◇自動歩行
赤ちゃんを立たせるように支え、足を床につけてあげると、まるで歩いているかのように足を交互に屈伸させる動き
◇把握反射
手のひらや足の裏にほかの人の指などが触れたとき、反射的に握りしめる動き
◇吸てつ反射
赤ちゃんが口に入ったものに反射的に吸いつく動き
◇バビンスキー反射
足の裏をかかとからつま先に向けてゆっくりこすると、足指が反射的に開く動き など

原始反射は平均的には生後0~3ヶ月の間で活発に表れ、生後4~5ヶ月ころを目安にだんだんと消えていきます。原始反射が消失することで、自分の意志で身体を動かすこと(随意運動)ができるようになります。

原始反射は脳幹によってコントロールされている動きです。そのため原始反射の出現と消失を確認することは、脳や脊髄をつかさどる中枢神経の発達が順調であるかどうかの指標となります。

モロー反射をはじめとする原始反射は、左右差がないか、長い期間認めていないかなどを、健診で確認します。

モロー反射と点頭てんかん(West症候群)の違いとは?

一見可愛らしい動きに見えるモロー反射。しかしモロー反射の中でも赤ちゃんの動き方や程度、消失時期によっては何かしらの疾患のサインになることがあります。ここではモロー反射の動きととてもよく似ている点頭てんかん(West症候群)についてご紹介します。

点頭てんかん(West症候群)とは?

モロー反射と一番区別をすることが困難な疾患として、「点頭てんかん」があります。

点頭てんかんとは、乳児期に起こる発達に影響を及ぼす可能性のあるてんかん症候群です。生後3~11ヶ月時に発症することが多く、その背景には重篤な脳障害があります。乳児期難治てんかんの中では最も多く発症するてんかんです。

点頭てんかんの約80%は、生まれる前あるいは出生直後に起こった脳障害の合併症として起こり、症候性West症候群と呼ばれます。一方残りの約20%は、発症までの発達も正常で、かつさまざまな検査でも異常なしであるため潜因性West症候群と呼ばれます。

点頭てんかん自体は遺伝性の疾患ではありません。しかし、遺伝性の脳障害の合併症として点頭てんかんが発症した場合は遺伝する可能性があります。

点頭てんかんの具体的な症状として、生後3~11ヶ月時に以下のような発作、様子が表れます。
・眠いときや目覚めの前後で、突然頭部が前にガクッと動く
・手足を一瞬縮めたり伸ばしたりする
・このような動きが5秒~40秒毎に繰り返し続き、またこの一連の発作が一日に何回も見られる
・運動や認知の発達が停滞・後退する

(発作が出現前後より患児は笑わなくなったり、不機嫌になったりする。また今までできていた首のすわりやお座りができなくなる)
診断には、症状の詳細な問診、症状の動画の確認、脳波、血液検査、頭部画像検査などを行います。

モロー反射と点頭てんかんとの違い

モロー反射の動きと、点頭てんかんで見られる動き(発作)はよく似ています。それゆえ、保護者にとって子どもの動きがモロー反射なのか、点頭てんかんなのか判断することはとても難しいことが多いです。違いを見分けるには、赤ちゃんがどのようなタイミングやきっかけでその動きをしているのかを見ることがポイントとなります。

モロー反射は赤ちゃんに大きな刺激を与えられたときに表れる反射的な運動です。一方で、点頭てんかんの場合は刺激の有無にかかわらずそういった動きが見られることがあります。また、点頭てんかんでは、一定時間ごとに発作的な動きとして表れるほか、一日に何回も見られることもあります。

赤ちゃんの様子を見て、もし何か気がかりなことがあったら、気になる症状の様子を動画にとった上で、かかりつけの小児科に一度相談してみるとよいでしょう。モロー反射の動きと点頭てんかんの動きは一般の人にはなかなか判断が難しいものです。「こんなことで相談するのは気が引ける...」などと遠慮せずに、少しでも気になったことはお医者さんに聞いて、子育ての不安を減らしていきましょう。
次ページ「モロー反射が疾患に気づくきっかけになることも」

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