モロー反射が疾患に気づくきっかけになることも

モロー反射がきっかけで、子どもが発症している疾患に気づくきっかけになることもあります。その疾患の代表例が、脳性麻痺(まひ)です。脳性麻痺とモロー反射は、モロー反射の続く期間と密接な関係があります。

脳性麻痺とは?

脳性麻痺は、妊娠中や出産前後、生後4週間以内で起きた、赤ちゃんの脳の損傷が原因となって発症します。目に見える症状としては、身体が反り返る、手足がこわばって硬くなるといった症状があります。また、このような症状がなくても、首のすわりや寝返り、はいはいなどの運動機能の発達が著しく遅いことから脳性麻痺が発覚することもあります。

このような場合、脳性麻痺かも?

モロー反射をはじめとする原始反射が本来消えている月齢を過ぎ、1歳近くになっても表れている場合、脳性麻痺の可能性があります。ただ、子どもの発達は子どもそれぞれによってかなり差があるので、神経質になりすぎる必要はありません。ですが、モロー反射が消えていくおおよその期間を知っているだけで、子どもの抱えている疾患に早く気づくことができる可能性もあります。

また、モロー反射があまりに弱い、全く見られないという場合も脳性麻痺につながる「核黄疸」であるケースも考えられます。

黄疸とは、新生児期に起こる、皮膚や眼球が黄色を帯びる現象のことです。通常生後数日で赤ちゃんには黄疸が表れますが、ほとんどの場合これは生理的なものであるため遅くとも生後3週間以内に消えていきます。しかし、中には生理的なものではなく、「病的黄疸」と呼ばれる黄疸もあります。この病的黄疸の一種である核黄疸は、治療が遅くなると脳性麻痺につながることがあります。

核黄疸は生理的黄疸よりも強力で、ただ皮膚が黄色を帯びるだけにとどまらず、脳機能や運動機能・筋力に大きな影響を及ぼすことがあります。モロー反射が極めて弱い、全く見られないときは核黄疸の初期症状による、運動機能や筋力の減弱である可能性があります。心配な場合はかかりつけのお医者さんに診てもらいましょう。

発達障害とモロー反射の関連は?

先ほどもご紹介したように、モロー反射をはじめとする原始反射は発達状態のバロメーターです。この点から、原始反射が強く残存している場合、脳機能への問題が考えられます。そしてそれが発達障害の兆候である可能性もあるのです。

モロー反射が長く続くということは、外からの刺激に毎回反応してしまう、つまり刺激に対して敏感な状態が続くと解釈できます。そのため、以下の発達障害のような傾向が見られることがあります。

・音や光をはじめとする刺激に対する感覚過敏
・社会的未熟さ(新しい状況・環境への参加対応が難しい)


必ずしもモロー反射が長く続く=発達障害である、というわけではありません。しかし、モロー反射をはじめとする原始反射が長く続けば続くほど何らかの問題がある可能性が高まります。いざというときのために、日頃から子どもの動作をよく観察したり、場合によっては記録したりすることが大切です。

モロー反射が激しいときはどうすればいいの?

では、子どものモロー反射で不安を感じる場合、どうすればよいのでしょうか。多くの保護者が子どものモロー反射に不安を感じることとして、モロー反射が激しく、子どもが泣きだすというケースが挙げられます。

これは、大きな刺激に対して大きな動きで反応した赤ちゃんが、刺激と自分の動きに対してびっくりしてしまい、その衝撃で泣く、というメカニズムで起こります。モロー反射は刺激に対する無意識の反応のため、保護者にできることとしては赤ちゃんに不要な刺激を与えないように環境を整えてあげることが必要です。

・大きな音をなるべく立てない
・赤ちゃんが極端な熱さ、冷たさに触れないようにする(冷たい風や指でも赤ちゃんはびっくりしてモロー反射を起こすことがあります)
・こまめなスキンシップで赤ちゃんを安心させてあげる


また、寝かしつけの際に赤ちゃんがモロー反射を起こし、なかなか寝てくれなくて悩んでいる…という保護者もいるかもしれません。この場合、寝かしつけるとき、特に赤ちゃんをだっこしている腕の中からベッドへ移すときがポイントです。赤ちゃんにとって刺激となる要因をできるだけ少なくする、以下のような工夫をすることが大切です。

・ベビーベッド・赤ちゃんの寝具を、だっこされている腕の中の体温くらいにあたためておく
・だっこから腕を抜くときに、赤ちゃんの首の角度や体勢が大きく変わらないようにする
・扇風機の風やヒーターの光が赤ちゃんに直接当たらないようにする


このように、モロー反射が激しく、一度起こるとしばらく泣き続けてしまうなどという場合、まずは子どもに余計な刺激を与えないような環境づくりをすることが重要です。また、モロー反射から泣きだす子どもの大半はびっくりして泣いています。保護者がこまめにスキンシップをとることで赤ちゃんを安心させてあげることも一つの方法です。
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