ASDの私、完璧主義が引越しの足かせに!?特性を逆手に取った「環境変化のストレス」緩和策

ライター:宇樹義子
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ASDがある私。環境の変化に弱いタイプですが、今回引越しをすることに。さまざまな不調や困難にみまわれながら引越しをして、いろいろ気づくことがありました。今回はそうした気づきについてお話しします。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

環境の変化が苦手な私が引越しすることに

この秋、私は引越しをしました。引越しすることが決まってから出発当日まで1ヶ月しかないというタイトスケジュールです。

引越し作業本体というか、梱包自体は黙々と自分のペースでやれば済むことなので比較的気楽でしたが、大変だったのがあいさつ回りや転居に伴うもろもろの手続き。車を運転できる夫とスケジュールを合わせなければならなかったうえ、私は通っている病院がいくつもあったので、紹介状を書いてもらって受け取るだけでも予定がどんどん埋まっていきました。

プレッシャーと慣れない社交タスクの連続で片頭痛が連続して出るようになり、予防薬を飲み続けてやっと動ける状態でした。

完璧主義と認知のスローさが足かせに

引越し前の梱包作業でも、引越し後の買い物でも改めて思ったことですが、私は時間に追われる中で素早く決断することが非常に苦手です。

知能検査の結果をもとに心理士さんに指摘されたことがあるのは、ものごとの認知のしかたが詳細だが動作はスローなため、いわゆる熟考タイプで、急かされると非常にストレスを感じるし本領が発揮できないということでした。

なにをどこに入れるか、どれを買うか… そういったことの完璧な答えを必死に探そうとしてしまって優柔不断になり、半ばパニックになって固まってしまいます。

いっぽう夫は、素早く決断して短い時間で行動することになんのストレスも感じていないようでした。私からするとすごく雑な判断をしているようにも見えてヒヤヒヤするのですが、彼は自分が想定外のできごとに対応できる自信があるのもあって、失敗が怖くないのだと思います。

私は自分が想定外のできごとに非常に弱いし、失敗して叱責されたトラウマがたくさんあるので、失敗が怖くてつい完璧主義になってしまうのです。

タイトなスケジュールでの引越し準備でどちらも疲れていたため、2人の間で雰囲気が険悪になりかけたこともありましたが、夫と自分の特性を対比して見ることができたのはよい経験になりました。

新居で夫に驚かれた食器等の的確な配置、ストレス緩和対応策

新居に着くと私は怒涛の荷解きを開始しました。

ASDの几帳面さをいかんなく発揮し、食器棚の中の食器や食材の位置など、元あったそっくりそのままに収納。あるいは新しい環境でも一定の法則に基づいて非常に使いやすく配置しました。

そういった作業を黙々と一日中続ける様子に、夫は「うーんさすがだ、こまねずみのようだ、こういうことはやっぱりお前が向いてるんだな」と感嘆します。

夫「コーヒーはどこ?」
私「食器棚のここだよ、元あったところだよ、適当なとこに気分でしまったりしないよ笑」
夫「なるほど笑」
というやりとりもありました。

私は、自分が変化に弱いことをよく知っていたので意識してこのようにしたのですが、これは非常によい策だったようです。自分の本棚も梱包する前にどこに何が入っているのか写真に撮っておいて、そのとおりに詰め直したので楽だったし、前のとおりに本の並んだ本棚を見ていたらスッと気持ちが落ち着きました。

また、3日目ぐらいからは、ふだん習慣にしていたヨガの決まったルーティーンを再開しました。

ふだんどおりのヨガを違った環境・状態でやると、どこがどれだけ疲れているのかの違いがよく分かります。特に凝っていると思ったところを念入りにほぐすと、しばらくぶりによく眠れました。

夫はそれを見ていて、「お前のそういう心がけは本当に立派だよな」とこぼします。夫はふだん私より何倍も忙しいのもあるのですが、セルフケアの苦手な人で、私の心がけには一目置いているようです。
次ページ「引越しを機に俯瞰することができた自分の特性」

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