熱性痙攣、てんかん発作を予防する坐剤(坐薬)「ダイアップ(ジアゼパム)」。使い方、使う間隔、副作用について解説【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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突然意識を消失したり、反応がなくなるなどの発作を起こすてんかんは、多くの場合が薬でコントロールすることができるといわれています。てんかんに使用される薬はさまざまですが、今回は「ダイアップ(ジアゼパム)」について、効能や効果、副作用などを専門家監修のもと解説します。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。

てんかんとは?

「てんかん」とは、てんかん発作を繰り返し起こす状態のことで、脳が発生する過程で生じた構造の異常、代謝異常症、遺伝子の異常など生まれつきのものから、頭部外傷、中枢神経感染症、自己免疫性脳症、脳卒中、認知症などさまざまな脳の疾患が原因となります。

てんかん発作は、脳にある神経細胞の異常な電気活動により引き起こされるもので、突発的に運動神経、感覚神経、自律神経、意識、高次脳機能などの神経系が異常に活動することで症状を出します。そのため発作では、それぞれの神経系に対してさまざまな症状が出るのです。運動神経に対応して体の一部が固くなる、感覚神経に対応して手足にしびれが出たり耳鳴りがする、自律神経に対応して動悸や吐き気が生じる、高次脳機能に対応して意識を失ったり、言葉が出にくくなる、などさまざまな影響が生じます。

症状は脳のどの範囲で異常発射が起こるかによりさまざまです。たとえば脳の一部で起こった場合は本人が「光がチカチカする」「手がぴくぴく動く」などと感じます。神経細胞の異常な電気発射がさらに広がると意識がなくなり、脳全体に広がると全身の痙攣(けいれん)発作となります。

てんかんは子どもから大人まで誰でも発症する可能性がありますが、その中でも18歳くらいまでの患者のことを「小児てんかん」と呼んでいます。てんかん発作を抑制するだけではなく、本人と保護者、そして医師が連携関係を築き、日常生活や学校生活を健やかに送るためのサポートが大切になります。

ダイアップ(ジアゼパム)の効能・効果

ダイアップは熱性痙攣の体質のある子どもや痙攣発作のある子どもに対して、痙攣を予防するために発熱時に使用する坐剤です。一般的には坐薬(座薬)とも言い、肛門から直腸内に挿入する薬です。

てんかんは脳内神経の異常な興奮によって起こるとされていて、ダイアップは脳内のベンゾジアゼピン(BZD)受容体に作用して神経の興奮を抑制させ、痙攣などの症状を抑えます。ダイアップは、ベンゾジアゼピン(BZD)受容体に作動薬として結合し、GABAによる抑制性神経伝達を亢進する作用があります。

ダイアップを使用すると、使用しなかった場合に比べて痙攣の発生率を70%以上減らすとされており、うまく使えば熱性痙攣をコントロールすることができるでしょう。ただ、100%予防できるわけではないので、場合によっては薬を使用しても痙攣が起こることがあるので、注意が必要です。

また、薬の効果は坐剤を入れてから15分以上かかるため、すでに起きている痙攣に対しては効果が期待できません。

ダイアップの処方は以下の場合に限られています。ただ初めて熱性痙攣を起こした場合には、予防目的に当日分のみ処方されることがあります。
・過去に2回以上熱性痙攣を起こしたことがある
・過去に15分以上長引く熱性痙攣を起こしたことがある
・そのほかの理由(ほかの病気があり再度起こす可能性が高い場合など)

ダイアップ(ジアゼパム)の用法・用量、坐薬(座薬)の使い方

ダイアップの成分はジアゼパムという睡眠薬の一種です。同じ成分の粉薬を服用することもありますが、保管や使用の面を考え坐薬として用いることが一般的です。子どもには通常1日に1〜2回、直腸内に挿入します。坐薬の大きさは4mg、6mg、10mgの3種類があり、使用量は体重によって変わるため、体重が変わったときには坐薬の大きさを変える必要があります。また症状によっては薬の量を増減することも。ただ1日1mg/1kgを超えないようにします。

子どもの年齢と体重、1回の量の目安は以下の通りです。

・2歳ごろまで/体重8〜12kgのケース→1回4mg
・2〜5歳ごろまで/体重12〜20kgのケース→1回6〜8mg
・5歳以上/体重20kg以上のケース→1回10mg

使用方法としては、37.5℃を超える発熱に気付いた時点で1回目を使用します。熱性痙攣は発熱直後から24時間以内に起こることが多いので、痙攣を予防するためには早めにダイアッを使用することが大切です。そのためにも風邪症状があるときや、いつもと様子が違うときはこまめに体温を計りましょう。

2回目は1回目の8時間後に使用します。そのときにすでに解熱していたとしても、忘れずに使用しましょう。また、3回目以降は仮に熱が続いていたとしてもダイアップは使用せずに、医師に指示を仰ぐようにしてください。ほかの坐薬を一緒に処方されている場合は、ダイアップの30分後に使用しましょう。

坐薬を使い慣れないという方のために、以下の通り簡単な使い方を解説します。

坐薬(座薬)の使い方

1.坐薬を包装から取り出し、指先またはティッシュペーパーなどでつまむ
2.子どもを仰向けに寝かせて両足を持ち上げる
3.坐薬の尖った方から肛門に入れ、5秒ほど抑えておく
※薬が入りにくい場合は少量の水で薬の先端を濡らすか、薬が溶け始めるまで肛門に押し当てる
4.30分間は漏れがないかを確認し、明らかに漏れている場合は再度挿入するようにしてください。

ダイアップの保管については30℃以上の高温になる場所は避ける必要がありますが常温でも冷蔵庫でもどちらでも保存できます。1年ほどは使用することができますが、保管が切れる前に処方を受けるのを忘れないようにしましょう。
次ページ「ダイアップ(ジアゼパム)の副作用」

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