発達障害がある子どもの歯科治療、事前に気をつけるポイントは?歯医者で行う予防や治療、障害者歯科についても解説【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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歯医者さんの主な役割としては「検診、虫歯予防」「虫歯治療」「歯周病治療」などがあります。しかし「子どもを歯医者さんに連れて行くこと」は、保護者にとって一大テーマです。定期検診に通うことでさえ、ストレスということもあります。なんとかして歯医者さんには連れて行きたいけれど、歯医者さんへの通院が毎回壮絶な闘いになってしまうような場合、解決策はあるでしょうか。多くの保護者が悩んでいる、発達障害のある子どもの歯医者さん通いについて、考えてみましょう。

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監修: 小松知子
神奈川歯科大学 全身管理歯科学講座 障害者歯科学分野 分野長/教授
歯周病の病態メカニズムと唾液における酸化ストレス研究により、エビデンスに基づく歯科臨床を目指して活動しています。様々な障害のある人に対して歯科診療や摂食嚥下リハビリテーションを専門とし、障害特性に配慮した歯科治療および予防的アプローチを行なっています。さらに、多職種協働による地域包括歯科連携の体制づくりに取り組んでいる。

歯医者さんでの歯の基本的な予防・治療方法

歯医者さんの主な役割としては「検診、予防」「虫歯治療」「歯周病治療」などがあります。

そもそも口は食べ物から栄養を取るための入り口です。食べたものをかみ砕き、だ液と混ぜてさらにその奥の消化器官へと送り込むのが口の役割となります。ここで消化活動はすでに始まっているのです。また、食べる飲むだけでなく、おしゃべりするためにも歯と口はとても大切な器官です。

また、発達障害がある子どもの歯科治療についての悩みを抱える保護者の方は多くいます。パニックになったり暴れてしまい安全に治療が難しい場合もあるのではないでしょうか。

このコラムでは、歯科治療で行う内容から、子どもが治療を受ける際にできる工夫、発達障害がある子どもの歯科治療についてまで解説していきます。

検診・予防

まずは定期検診で、虫歯になりそうな部分はないかをチェックして予防します。虫歯ができてしまうと、自然治癒が難しくなるため、できるだけ虫歯にならないようなケアをすることが大事です。それでも完璧にできない場合があるので、3ヶ月おきくらいのペースで検診に通うことができれば、虫歯を早期に発見でき、深く削るほど治療せずにすませることができます。

検診だけでなく、積極的な予防をすることもできます。それがシーラントやフッ化物の塗布です。生えたばかりの歯は、歯の表面のエナメル質が未熟で、虫歯になりやすいものです。そこで、特に奥歯のような溝が深く、複雑な形の歯では、汚れがたまりやすい溝をシーラントで埋めるという予防方法があります。また、フッ化物を歯の表面全体に塗ることで、弱い歯の表面を強化することができます。

また、歯磨きの方法も教えてくれます。日常の口腔ケアはとても大切です。歯並びや虫歯や歯肉炎の程度など、口の中の状態は個々に異なります。個人にあった歯ブラシや歯磨き剤、洗口剤などを適切にアドバイスしてくれます。

虫歯治療

虫歯ができてしまった場合は、もちろん治療をします。虫歯は口の中にいる虫歯菌によって浸食された部分なので、それ以上浸食が広がらないために削り、削ったところに詰め物をする、という治療をします。シーラントと違うのは、削れた歯の部分に合うように調整した詰め物をとれないようにかぶせるということです。

表面が少し浸食された程度ならまだ治療は容易ですが、奥深いところまで浸食が達してしまった場合は、神経に触れてしまうことも。こうなると神経を抜いて被せ物をするという治療になります。さらに歯が根元まで崩壊するほどに虫歯が進行してしまった場合は、抜歯することもあります。

ただ、特に乳歯の場合は永久歯が生えてくるスペースをなくしてしまうことになるので、抜歯は歯列の状態にも大きく影響します。抜歯は「最後の手段」なのです。

歯周病治療

口の中のトラブルは歯だけが問題なのではありません。歯茎が炎症を起こす歯肉炎や歯を支える骨(歯槽骨)が壊されてしまう歯周病なども治療します。

歯医者さんを怖がる子どもを歯医者に連れて行くときにできること

歯医者さんでの治療を、なぜ子どもは怖がるのでしょうか。それは、見たこともない道具を口の中に入れられて、大きな音がして、麻酔の注射もチクッと痛くて、麻酔をしたとしても振動は伝わるからでしょう。体の中でも敏感な口の中を触られること自体、怖いことなのです。ではどうしたら、嫌がる子どもを歯医者さんに連れて行くことができるでしょうか。

保護者が歯医者を嫌がる子どもにできる基本的な対応

まずは、歯医者さんは「痛くない、嫌なことをされない」場所だということを、子どもに覚えてもらいましょう。そのためには、虫歯になってから歯医者さんに連れて行くのではなく、予防として検診を受けることから始めることです。検診を受けるだけなら実際痛いことはしないので、「歯医者さんに行くのは痛くない」ということを経験できます。最初に「歯医者さんは怖いところではない」という安心感を子どもが覚えることが第一歩です。

0~2歳ごろは、保護者の膝の上などで検診を受けることから

乳歯が生え始めてから2歳ころまでに、痛くない検診からスタートしましょう。このころはまだ、保護者のそばが何よりも安心できる安全地帯です。歯医者さんと相談して、おすわりができる子どもでも、一人で診察台に乗せるのではなく、保護者が抱っこして一緒に座るなどの配慮や工夫をしましょう。ママやパパがついていれば安心、ということが大事なので、このときに保護者自身が緊張した表情にならないように気をつけましょう。

3歳以上の子どもには段階を踏んで慣れてもらう

だんだんに自分の周りの状況が分かる3歳ごろからは、歯医者は怖い場所という印象付けをしないことがまず大切です。嫌がりそうだからと、「公園に行こう」など嘘をついて連れて行くと、不信感につながります。嘘は言わないようにしましょう。

行く前には、歯医者さんは楽しいところだと伝えている絵本や動画を見せて、心の準備をしてあげましょう。また、タイミングも大切です。午前中の機嫌のいい時間帯や、お昼寝から目が覚めて落ち着いたときなど、子ども自身のコンディションを優先しましょう。空腹時や眠いときなどは避けましょう。

ここで大切なのは、連れて行く大人の態度と表情です。保護者自身も歯医者に苦手意識がある場合、緊張感が伝わってしまいますし、無意識に少し怖い顔になってしまうこともあります。子どもを公園や児童館に連れて行くときのような気分で対応したいところです。

そして、検診や治療が終わったら、「頑張ってお口を開けられたね!」「歯みがきしていたから虫歯がなかったのね。すごいなぁ、さすが!」など、たくさん褒めてあげましょう。もし、行くまでぐずって泣いていたとしても、歯医者さんに行けた、ということだけでも褒めてあげてください。次も頑張ろうという気持ちにつながるはずです。

発達障害のある子どもは、感覚過敏があることで歯磨きを受け入れにくいことがある

発達障害のある子どもの場合は、さまざまな特性から歯を磨くのを嫌がる傾向があるために、虫歯になりやすく歯医者さんに通う頻度も高くなりやすいということがあります。

こだわりの強さから歯磨きすることを拒否したり、動き回って安全に歯磨きすることが難しかったりします。また、感覚過敏があるために口の中に歯ブラシが入ることを拒んだり、歯を磨くことが健康のために必要であることがうまく理解できなかったりする場合もあります。

甘いものなど虫歯になりやすい食べ物ばかり食べるなどの偏食や、食事時間以外にもだらだらと食べてしまうことも虫歯の原因になります。発達障害のある子どもの場合は、一時的に何かをがまんさせる代わりにご褒美として子どもの好物を与えるということもあるかもしれません。こうしたことから常に食べ物のカスがお口の中に残っている状態が虫歯になりやすい口腔環境にしてしまうことがあります。
次ページ「発達障害のある子どもが歯医者に行くときに気をつけたいこと」

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