PTSDは治るの?大人と子どもで治療法が違う?薬物療法や精神療法、認知行動療法とは?どんな言葉をかけたらいいか、対応方法もイラストで解説【医師監修】

ライター:マンガで分かる発達障害のキホン
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PTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)は、つらいできごとがトラウマとなり、さまざまな症状を発症する疾患です。PTSD治療において、大切になるのは本人のペースに合わせて回復していくということです。この記事では、イラストで分かりやすくPTSDの治療について、大人と子どもに分けて解説します。

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監修: 増田史
精神科医、医学博士
滋賀医科大学 精神医学講座 助教
NPO法人ストップいじめナビ 特任研究員
精神疾患の偏見解消に向けた活動や、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症の脳機能に関する研究を行なっている。

PTSDの治療法は?大人の場合と子どもの場合

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder:心的外傷後ストレス障害)は、つらいできごとがトラウマとなり、さまざまな症状を発症する疾患です。PTSD治療において、大切になるのは本人のペースに合わせて回復していくということです。周囲が無理に今すぐ治そうとしても、思い通りにはなかなかいきません。

※この文章を読んで、自分のトラウマがよみがえってきたり、気持ちがつらくなった場合には、一旦画面を閉じましょう。可能であればゆっくりと深呼吸をして、今が安全であることを確認しましょう。気持ちが落ち着いたら、また再開してくださいね。
PTSDにおいて大切になるのは本人のペースに合わせて回復していくと言うことです
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大人のPTSDの場合は薬物療法や精神療法が有効になります
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子どものPTSDの場合はトラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)(トラウマに関連した症状や問題のある子どもと保護者が社会生活をするにあたり、トラウマを適切に処理することを支援すること)が有効です
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子どものPTSDの場合、「大丈夫だよ」「しんどい気持ちを教えてくれてありがとう」など適切な声掛けや対応も有効です
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PTSDの治療 大人の場合

このコラムでは、PTSDの治療法について、紹介していきます。大人と子どもでは、PTSDになるできごとが異なったり、大人のほうが精神的に発達していたりと、同じPTSDでも異なる点があります。まず、大人に対するPTSDの治療法について紹介します。

PTSDの治療には、その症状や原因をよく理解することが重要です。

PTSDは、トラウマ体験をした人であれば誰でも起こることがあります。しかしPTSDになる人の多くは、PTSDについて詳しく知らないことも多く、そのため、PTSDになったことに対して罪悪感を感じてしまうことがあります。

治療の第一段階としては、PTSDについて正しく理解することで、罪悪感を軽減したり、自分の感情をコントロールする術を身につけたりすることが多いです。

薬物療法

PTSDの研究の中で、薬による治療(薬物療法)が効果的であることが分かっており、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)をはじめとした抗うつ薬などが有効だと考えられています。

PTSDはうつ病や強迫症などさまざまな精神障害と併せて発症することがあります。そのようなときには、合併している疾患への治療も踏まえて、薬を使用していくことになります。

精神疾患の薬は使い方を誤ると、重篤な副作用がでることもあります。そのため、医師の指示のもと、綿密に相談しながら、薬と正しい付き合いをしていくようにしましょう。

精神療法

現在、もっとも有効だと考えられている治療法が、精神療法です。特に、トラウマに焦点を当てた認知行動療法の有効性が明らかになっています。

このうちの一つの「持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure Therapy:PE)」は、現実世界や想像の中のトラウマ記憶に持続的に曝露していくことで、トラウマに対する恐怖を消去していくという方法です。このほか、「眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR法)」という、治療者の指を追って目を動かしながら、同時にトラウマ体験を思い出していくという治療法もあります。いずれも有効性が認められた治療法ですが、実施できる施設は限られている場合があります。

PTSDの治療 子どもの場合

PTSDの治療の大枠は、大人と子どもで変わりません。

しかし、子どもは自分の感じていることを言葉で表現することが難しいため、トラウマやどのような症状があるのかを周囲の人が適切に把握するために工夫が必要になることがあります。例えば、子どもたちの遊んでいる様子や描いた絵から心情を推測します。

治療を開始するときには、大人と同様にPTSDがどのような病気であるのかを理解できるようにします。その後、薬を用いたり、認知行動療法をしたりして治療していきます。

ここでは、子どものPTSD治療において有効性が実証されているトラウマフォーカスト認知行動療法について紹介します。

トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)

トラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)の目的は、トラウマに関連した症状や問題のある子どもと保護者が社会生活をするにあたり、トラウマを適切に処理することを支援することです。

個人療法として行われることが多く、週に1回、60~90分、8~16週かけて行います。

TF-CBTには3つの段階があります。

1.トラウマに向き合う準備をする
TF-CBTでは、トラウマ克服だけでなく、教育的な面も多く含まれています。はじめの段階では、ストレスマネジメントや感情を表に出すこと、ものごとの捉え方などの学習を行います。これらの教育的要素が十分身についたら、次の段階へと移行します。

2.トラウマ記憶に向き合う
少しずつトラウマと向き合えるようにしていきます。そのために、子どもが主体的にトラウマの体験を言葉で表したりできるようなプログラムになっています。

また、いきなりトラウマに向き合うことができなくても、不安の少ないものから徐々に慣れさせていき、最終的にトラウマに向き合えるような工夫がされています。

3.定着と統合
親子で学んだことを復習したり、子どもがトラウマに対して感じたことを親と共有するような時間になります。

この段階では、プログラムの成果の定着を図ると共に、親子の絆が一層強くなることも期待されています。

TF-CBTは、子どものPTSDに対して有効だとされていますが、まだ新しい取り組みであり日本でそれほど普及しているわけではありません。PTSDは患者さん一人ひとりで症状に幅があります。そのため、医師と相談しながら、一人ひとりにあった治療をしていくことになります。

普段からトレーニングや治療をしていても、パニックになることがあります。そのときにどのような声かけや対応をすればいいのか子どもの年齢別に説明します。適切な声かけや対応をすることで、PTSDが悪化することを防ぐことができます。
参考:TF-CBT トラウマフォーカスト認知行動療法|兵庫県こころのケアセンター
https://www.j-hits.org/document/child/page4.html

適切な声かけ・対応

・就学前の幼児から小学校低学年
まだまだ周りで起こったことを正しく理解し、全てを的確に表現できるわけではありません。

例えば、地震が起きて揺れがおさまってもずっと怖がっているときには、すでに揺れはおさまりもう安全であることを伝えましょう。怖い夢を見た次の日に恐怖で眠れないときには、絵本の読み聞かせをしたり、抱きしめたりするのも効果的です。

・小学校中学年程度
周囲で起きていることだけでなく、自分自身の内側で起きていることに対して不安を感じるようになります。「今、この瞬間はもう大丈夫だよ」と安全を保証すると共に、保護者や周囲の大人が子どものつらさやしんどさに十分に理解を示すことが大切です。本人が話したそうなときは、無理に引き出さずにその話に耳を傾けることが、助けになる場合があります。

・小学校高学年から、中・高生
中高生は自分でしっかりと考えることができる段階にあるものの、ネガティブな考えから抜け出せなくなったり、一人で解決できそうにない問題が生じているときには、周囲のサポートが必要になります。まずは苦しいときにはいつでも助けを求めていいことを伝えておきましょう。また、相談しても頭ごなしに否定されないことや、一緒に解決策を考えることを保証していくことも大切です。

いずれの年代においても、子どもたちをサポートするためには、まずは周囲の大人が安全な環境が確保され、心身の状態が落ち着いていることが必要です。

※上記は代表的な年齢区分ごとの対応を示していますが、子どもの発達状況によって時期は前後することがあります
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