家族がひきこもりになったら?ニートとひきこもりの違いは?相談先や当事者・家族への支援など、ひきこもりに関するよくある質問を解説【専門家監修】

ライター:マンガで分かる発達障害のキホン
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ひきこもりとは「社会との交流をほとんどしないで家庭に6ヶ月以上の長期間ひきこもっている状態のこと」と定義されています。子どものひきこもりに悩んでいる、ひきこもり当事者や家族への支援、ひきこもり脱出のステップや対処法、ニートとの違いなどよくある質問を整理しました。これらを参考に専門機関につながっていければよいと思います。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

「ひきこもり」の相談先、支援、脱出方法やニートとの違いなどよくある質問を整理しました

ひきこもりとは「社会との交流をほとんどしないで家庭に6ヶ月以上の長期間ひきこもっている状態のこと」と定義されています。

今回は
・ひきこもりの相談先
・当事者や家族への支援
・ひきこもりの脱出ステップや家族がひきこもりの場合の対処法
・ひきこもりとニートの違い

など、ひきこもりについてよくある質問をまとめてみました。

Q.わが子のひきこもりに悩んでいます。どこに相談をすればいいですか?

A.ひきこもりの相談先は主に「公的な相談機関」「医療機関」に分かれます。家庭内暴力などに困っている場合には家族内での解決が困難な場合もありますので、まずはこれらの機関に相談することをおすすめします。

ひきこもりが長期化すると、「ひきこもりは家族の問題」「できるだけ他人に知られたくない」「一度相談に行ったが十分な対応が得られなかった」「相談にいっても解決しない」など家族で問題を抱え込んでしまうことが多くなります。日本社会に根強い「世間の目を気にする」「家のことは家族で解決する」という文化が、背景にあると考えられますが、そういった家族の気持ちが一層本人を追い詰めてしまうこともあります。

また、ひきこもりはときに家庭内暴力や家族内での対立を生む場合もあります。誰にも言えずに家族だけで解決しようとすると、長期化することで周りの家族にとっても大きな精神的なストレスになります。特に暴力については、早期の相談が大切です。

ひきこもりの支援は長期になることもあります。その場合もあきらめず相談機関につながり続けていただくことで、複数の支援機関がネットワーク的に連携しながら見守り、タイミングを待つこともできます。ご家族や本人が相談機関につながり続けることが解決に向けて重要なポイントになります。

公的な相談機関

地域の相談支援を行っている機関をご紹介します。電話での相談を行っている場合もありますので、まずは問い合わせてみるとよいでしょう。

ひきこもり地域支援センター…ひきこもりに特化した専門的な第一次相談窓口としての機能を有するのが「ひきこもり地域支援センター」です。センターには社会福祉士、精神保健福祉士、心理士(公認心理師・臨床心理士)などがひきこもり支援コーディネーターとして配置されます。相談支援や訪問支援を早期に行うことで、適切な支援につながることを目的にした施設です。
参考:ひきこもり対策推進事業|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html
参考:全国ひきこもり地域支援センター設置状況|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000515493.pdf
精神保健福祉センター…精神保健福祉全般にわたる相談を行っています。こころの健康についての相談、精神科医療についての相談などとともに、ひきこもりなど思春期・青年期問題の相談も可能です。電話や面接で相談できますが、事前の予約が必要なこともあるのでホームページなどで確認しましょう。
参考:全国の精神保健福祉センター一覧
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubutsuranyou_taisaku/hoken_fukushi/index.html
保健所…地域の保健所でひきこもりの相談支援を行っている場合があります。電話相談、面談による相談があり、保健師、医師、精神保健福祉士などの専門職が対応してくれます。また、相談者の要望によっては、保健師に家を訪問して相談してくれる場合もあります。
参考:保健所管轄区域案内|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/hokenjo/
そのほか、児童相談所、福祉事務所、発達障害者支援センターなどの福祉機関などに相談してもよいでしょう。

医療機関

こころの問題や身体症状が強く出ている場合など、精神科、心療内科、小児科などの医療機関に相談しましょう。心理カウンセリングを行っているところもあります。本人が受診を拒む場合や外出できないときには、まずは家族の相談を受け入れてくれる医療機関を探すとよいでしょう。

家庭内暴力への対応

ひきこもり状態の1~2割に家庭内暴力が伴うことがあると言われています。

本人への遠慮や周りへの相談のしにくさからから容認してしまったり、第三者の介入を避けたくなることもあるかもしれませんが、密室化してしまうことが最も解決を困難にします。家庭内暴力への対処は「開示・通報・避難」を基本とします。

家族だからこそ対処が難しい場合がありますので、ひきこもり地域支援センターなどの専門機関に相談することもおすすめします。

子どものひきこもりは不登校と関連が深い

就学年齢にある子どもの場合、ひきこもりになるきっかけとして、不登校との関連があると考えられています。
不登校で、自宅以外の場所での活動がないまま6ヶ月以上家から出ない状況が続くと、ひきこもりへと移行する場合があります。もしひきこもり状態が生じた場合は、一人ひとりに合った対応をすることが重要になってきます。
ひきこもりの相談先は主に「公的な相談機関」「医療機関」に分かれます。家庭内暴力などに困っている場合には家族内での解決が困難な場合もありますので、まずはこれらの機関に相談することおすすめします。
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Q.ひきこもり当事者や家族へは、どんな支援がありますか?

A.ひきこもりの段階で支援は変わります。その状況により「家族支援」「個人療法」「集団療法」「社会復帰に向けた就労支援」などさまざまな支援の形があります。

ひきこもり支援のゴールとは、ひきこもり状態を抜け出し社会参加ができるようになることです。目標とする社会参加とは、働くことであったり、家の外に親密な対人関係を持つことだったり、居場所をつくることだったり、さまざまです。

ひきこもりの段階で支援は変わります。その過程は人によって異なりますが、「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」で紹介されているような支援ステップを踏むことが多いようです。
「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」参照図
参考:「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」|厚生労働省
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ひきこもりの支援は多くの場合、家族の相談からスタートします。ひきこもりの支援が始まるこの時期、まずは相談に来た家族への支援や、本人がどのような状況にあり、どのような支援が必要かのアセスメントが行われます。

家族支援

家族の面談や、訪問支援などを通して、必要な支援を探り、関係機関との連携などが行われます。まずは家族が相談機関に定期的に相談を続けることが第一歩となります。

個人療法

当事者本人が支援を受けられる状態になると、個人的な心の支援が始まります。本人が相談に行ったり、本人への訪問支援を受け入れたり、精神科などでの治療やカウンセリングを受けたりといった段階です。具体的な個人療法についてはケースや技法によってさまざまですが、当事者の抱える罪悪感や孤立感によりそい、支援を受けようと動き出した本人の気持ちを支えることを基本とします。

集団療法

次のステップはグループでの活動です。精神保健機関や医療機関での集団精神療法やデイ・ケアなどの利用、フリースクールやフリ―スペースなどで家族以外の人と接します。ひきこもりの当事者の中には同世代の人とのコミュニケーションが苦手な人もいます。まずは同じ悩みを持つひきこもりの人と接することがよいトレーニングになることもあります。また、これらの場が居場所として機能します。

社会復帰に向けた就労支援

グループでの活動をするうち、就労したい・外出して活動したいという気持ちが芽生える場合があります。そのような場合には就労支援などの社会参加にむけた支援が始まります。

就労支援としてはハローワークをはじめ、地域若者サポートステーション、ジョブカフェ、ヤングワークプラザ、学生職業総合支援センター、職業訓練校などが挙げられます。

具体的に就労を検討するのであれば、一般のアルバイトのほか、就労継続支援(A型・B型)(※)などの福祉サービスも利用できます。
就労継続支援は、一般企業で働くことは難しいものの、一定の支援があれば継続して働くことができる方に働く場を提供するサービスです。体調や特性に理解のある職場スタッフのサポートの下で働くことができ、賃金をもらいながら人間関係も構築することができます。ネットを利用した在宅就業なども最近では増えてきています。

また、いずれ一般企業への就労を目指したい場合には就労移行支援という福祉サービスも用意されています。ビジネスマナーやコミュニケーショントレーニングといった働くための基礎知識や能力を身につける職業訓練、職場探しや就職活動の支援など、就労移行支援事業所に通うことで、就職まで一貫してサポートしてくれるサービスです。

※就労継続支援(A型・B型)や就労移行支援は障害者総合支援法に基づくサービスですが、障害者手帳がなくても利用できる場合があります。まずは市区町村の障害福祉窓口に相談に行ってみてください。
参考:LITALICO仕事ナビ 全国の就労移行支援事業所
https://snabi.jp/ikou
ひきこもりの段階で支援は変わります。その状況により「家族支援」「個人療法」「集団療法」「社会復帰に向けた就労支援」などさまざまな支援の形があります
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