ダウン症は老化が早い?40代から認知症も?ダウン症の寿命が伸びる中分かってきた、早期退行・早老症との関係も解説【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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染色体異常による疾患のなかで最も多いダウン症候群。21番目の遺伝子が3本あることがから21トリソミーとも呼ばれます。
ダウン症がある人は30歳代後半から運動能力、40歳代から筋力や持久力が低下するといわれています。ダウン症と老化や認知症との関係をお伝えします。

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監修: 玉井浩
大阪医科薬科大学 小児高次脳機能研究所 LDセンター顧問
大阪医科薬科大学 小児科名誉教授
小児神経学をベースに、小児期から成人期に至るまで医療・教育・福祉にわたる総合的な診療と支援を実践している。また、日本ダウン症協会の代表理事として、家族支援、公益事業や国際連携も行っている。

ダウン症とは?特徴や種類について

ダウン症の特徴

ダウン症は正式名称を「ダウン症候群」といい、染色体異常による疾患の一つです。21番目の染色体が1本多く、3本あるために起こるので「21トリソミー」(トリ=3の意味)とも呼ばれます。
染色体異常による疾患のなかで最も多く、約700人に1人の割合でダウン症のある赤ちゃんが生まれています。

ダウン症があると、個人差はありますが、一般的には身体、精神(知的)の発達の遅れがみられます。
ダウン症のある人は、両目の間が広く見え、少しつり目で鼻が低め、という顔立ちが特徴です。これは顔の中心部の骨が周囲の骨よりゆっくりしたスピードで発達するからだといわれています。また、筋緊張低下のため、力が弱いことが多いです。

ダウン症がある新生児の約50%に先天性心疾患、約60%に先天性白内障、斜視などの眼の障害がみられます。ほかにも消化管や耳の疾患にかかる頻度も高めです。

ダウン症は大きく3種類に分けられます

ダウン症は大きく分けると3つのタイプがあります。全体の約95%を占めるのが「標準型」です。受精前の卵子や精子が減数分裂するとき、均等に分かれなかったことが原因で起こる偶発的な事象です。両親の染色体には異常がないことがほとんどで、誰にでも可能性があるといえます。

約4~5%を占めるのが、染色体の一部が他の染色体に結合することで起こる「転座型」。(保因者である)両親どちらか一方の21番染色体が、ほかの染色体に結合していることが原因です。

もっとも少ないタイプが「モザイク型」で全体の約1~3%以下といわれています。受精後の細胞分裂で染色体が分かれなかったことが原因で発症します。正常な細胞と1本多い細胞が混在しているのが特徴で、正常な細胞が多いときは、ダウン症としての症状が軽くなります。
参考:21トリソミーのある方のくらし|厚生労働省
出典:https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000792732.pdf

ダウン症がある人の児童期の成長と青年期以降

ダウン症がある子どもの成長

・ダウン症のある子どもの新生児、乳幼児期
ダウン症がある赤ちゃんは、母乳やミルクを吸って飲むのが難しいことがあります。これは筋緊張低下や舌が大きく口が小さいことが理由です。力が弱いためにおとなしく、泣くこともあまりないので、空腹に気づきにくい場合があります。こまめに体調をチェックしてあげましょう。

また、ダウン症があると、以下のような合併症が起こりやすいといわれています。

先天性心疾患(心室中隔欠損症、心房中隔欠損症など)
消化管疾患(鎖肛、十二指腸閉鎖など)
眼疾患(白内障、斜視など)
耳鼻疾患(難聴、滲出性中耳炎など)
血液の疾患(一過性骨髄増殖症など)
内分泌・代謝疾患(甲状腺機能異常、肥満、糖尿病など)
整形外科疾患(環軸椎亜脱臼、外反扁平足など)
神経疾患(点頭てんかんなど)
精神発達遅延
自閉スペクトラム症


・ダウン症のある子どもの未就学時期
ダウン症のある子どもは身体・精神(知的)発達が遅いので、周囲に比べてのんびりしています。言葉が出るのもゆっくりです。
赤ちゃんのころにはあまり気にならなかった周囲との発達の差は、成長にしたがって大きくなります。個人差はありますが、知的障害は軽度から重度までさまざまあり、平均的なIQは50といわれています。

発達は遅めですが、幼児になると自我が目覚め、こだわりや意思の強さが見られることがあります。発達や合併症とは異なる大変さがありますが、なるべく子どもの気持ちを尊重してあげましょう。

また、合併症には引き続き注意が必要です。早期発見・早期治療のためにも定期的に診察を受けましょう。

・ダウン症のある子どもの学童期
小学校は通常学級に通う子どもも、特別支援学級や特別支援学校を選択する子どももいます。

通常学級の場合、ダウン症がある子どもは知的障害や難聴などのため、授業についていくのが難しくなることがあります。そのため、中学、高校では、特別支援学級や特別支援学校に進むケースが多いです。

また、小児期には多動や自閉的行動を示す場合がしばしばみられます。学童期においても、合併症の定期的な診察は大切です。特に入学など環境の変化により、大きなストレスを感じていることもあります。

ダウン症の20代から30代の健康トラブルと早期退行

学校を卒業して作業所などに通うようになると、これまでの生活がガラッと変わります。すると「これまでできていたことができなくなる」「動作が緩慢になる」「笑顔がなくなる」「言葉が少なくなる」「眠れなくなる」など、運動・生活能力が急激に低下することがあります。

これは、大きく変わった環境に不安と緊張があるためと考えられます。そんなときは、家族や作業所の支援員など周囲の人のフォローが大切です。できなくなったことを責めたり、どうしてできないの?などと聞いたりするのはやめましょう。まずは、今できていることや分かることを尊重しましょう。できなくなったことを一気に取り戻すのではなく、徐々にゆっくり取り組んでいくことで、少しずつ回復できるといわれています。

不安や緊張が大きい場合は、抗うつ剤や睡眠導入剤などを服用する治療が有効なことがあるので、主治医と相談してください。

できなくなったことが再びできるようになるまで、数年かかることもあります。焦らず気長に取り組みましょう。

ダウン症の40代の健康トラブルとアルツハイマー型認知症のような症状

ダウン症がある人は、一般的に30歳代後半から運動能力が低下し始め、40歳代からは筋力や持久力も低下するといわれています。

また、知的能力のピークは20〜30歳で、以降は徐々に低下するといわれています。40歳をすぎると急激に低下することが多く、「言葉を発しない」「コミュニケーションがとれない」「体を動かすことを嫌がる」「自制が効かない」など、アルツハイマー型認知症に似た症状が出ることがあります。なかには、てんかん発作や妄想などが出てくることもあります。

ただし、初期症状の段階で「認知症だ」と決めつけることはできません。白内障などで目が見えにくくなっていたり、耳が聞こえにくくなっていたり、甲状腺機能低下で体を動かすのがつらかったりする場合があります。

病状を正しく見極めるために、成人してからも定期的に健診を受けることが大切です。

ダウン症は老化が早い?認知症や早老症との関連性

ダウン症がある人はなぜ老化が早いの?早老症との関係は?

ダウン症は早老症の代表的な疾患の一つです。早老症は「早期老化症」とも呼ばれ、実際の年齢よりも早く、全身の老化が急激に進みます。

代表的な見た目の老化には、次のようなものがあります。
・白髪、脱毛
・尖った鼻(鳥のような顔つき)
・小顔(上顎より下顎が小さくなる)
・音声の異常(高音域がかすれる)
・両手、両足の皮膚の萎縮、硬化
・アキレス腱などの石灰化


ダウン症のある人が早老症を発症するのは、21番染色体トリソミーが原因と考えられていますが、発症するメカニズムなどは、まだ解明されていません。

ダウン症がある人の認知症の特徴は?

ダウン症がある人は、40歳をすぎると認知症を発症しやすいといわれています。また、その中でもダウン症がある人は、アルツハイマー型認知症の発症率が高いことも分かっています。これは、ダウン症がある人は、アルツハイマー型認知症の原因物質のひとつと考えられているアミロイドβを産生する遺伝子が過剰にあるため、よく似た症状が出現するためです。

ダウン症がある人が認知症を発症したときは、次のような症状があらわれます。

・時間や季節、場所、人間関係が分からなくなる(見当識障害)
・運動能力が低下し、転びやすくなる
・細かい手作業(ボタンを留める、箸を使うなど)ができなくなる


また、これまでできていたことが急にできなくなった、言葉が出ない、なども初期症状と考えられます。変化に気づいたら、すぐにかかりつけ医に相談しましょう。

ダウン症がある人の早期老化に対しての治療や予防はできる?

ダウン症に伴う早老症は、完全に治す方法や予防法はまだ見つかっていません。症状に合わせた対症療法が主に行われます。聴力低下や白内障など一般の高齢者と同じ対応をします。
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