突然の退園勧告、徹夜で幼稚園探し。「自閉症息子を受け入れてくれる園はあるの?」泣きながら電話をした結果…

ライター:星あかり
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スバルは1歳半健診時に言葉の遅れを指摘され、その後何度か受けた検査で「言葉が遅いだけ」と言われました。言葉を促すために通い始めたプレ幼稚園では、ほかの子が普通にできることがスバルにはできないという現実を目の当たりにしました。
そんな矢先突然言葉が溢れ、このまま全てが好転するのではないかと思いました。しかしプレ幼稚園からは「発達検査を受けて診断書を提出してください」と言われたのです。
そして、その後自閉スペクトラム症と診断され、診断書を提出すると同時に退園を言い渡されました。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

ときはすでに11月。絶望してる暇もない

プレ幼稚園という初めての「社会」から拒否されたことは、まるで世界中から拒否されたような絶望感でした。いっそ幼稚園なんか行かずにスバルと2人きりで過ごそうか、なんて考えたりもしました。2人きりの世界なら誰かが決めた枠からはみ出ても何も言われないし、誰とも比べられないし、迷惑もかけないし、ただのかわいいかわいいスバルのままでいられるから。

しかしプレ幼稚園の通園を毎週楽しみしていたスバルの姿が頭に浮かび、考え直しました。

集団活動が苦手でマイペースに振る舞うスバルですが人が好きなのです。スバルは人に囲まれてニコニコ笑っているのが似合うのです。「そんなスバルにピッタリの幼稚園を探そう」と決意したのでした。

しかしときはすでに11月目前。各幼稚園の入学願書受付開始が始まる時期です。とにかく時間がありません。ママ友がいない私ですが、たまたま公園で出会った先輩ママさんに「人気のある幼稚園は入園願書受付日の前夜から並ぶ」と聞いていました。

つまり4月までに幼稚園が見つかれば良いのではなく、今すぐ新しい幼稚園を見つけて願書受付日に間に合わせなければいけないのです。プレ幼稚園から退園勧告を受けるまで、この幼稚園にそのまま入園する予定でいたのでそれ以外の幼稚園の情報がゼロの状態からのスタートです。

スバルにぴったりの幼稚園とは?

プレ幼稚園を退園した日、夜になっても全く眠れませんでした。どうせ眠れないならと、インターネットで近隣の幼稚園をリストアップすることにしました。特色や教育方針、年間行事の写真などを吟味しながら、徹夜で幼稚園の情報を集めました。

ホームページを読み込んだだけでもいろいろな特色があることが分かり、マーチングバンドとかミュージカルのようなスバルが苦手な集団活動に力を入れている幼稚園はリストから外しました。逆にスバルが楽しめるものが何か考えると…
自閉スペクトラム症の息子スバルが楽しめるカリキュラムがある幼稚園を考える母。お絵かきはスバルは絵をかかずにクレヨンを並べるタイプ。歌にダンス、見るのは好きだけど、実際に本人がしているところは見たことがない。楽器も興味ないし、両足ジャンプができないからスポーツ系も違う。スバルの興味は車のみ。車に特化した幼稚園を急募しています。
楽器も歌もダンスも興味なし、スポーツ系もちょっと違う…。息子にピッタリの幼稚園って?
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当時はまだ乗り物以外のものへの興味が分からなかったので、「のびのびと」「一人ひとりひとりの個性を大事に」「自分らしさを育む」みたいな若干ふんわりした表現を頼りに、いわゆる「のびのび系」の教育方針と思われる幼稚園を当たることにしました。ちなみにホームページに障害のあるお子さんの受け入れの有無が書かれている幼稚園はなかったので1件ずつ電話してみるしか手立てはありません。

退園したプレ幼稚園は地域の中ではのびのび系で有名な幼稚園だったので「この幼稚園に断られた子」という肩書きを背負ったスバルがほかの幼稚園で受け入れてもらえる気がしませんでした。

発達障害がある子どもを受け入れる園を探して。泣きながら幼稚園に電話

朝が来て、幼稚園が始まる時間になって「今日はリストの中から10件の幼稚園に電話をかけよう」と決意しました。全部断られたら明日また10件。それも全部断られたとしたら、私たちはどうなってしまうのだろう…。

断られることを前提でかける電話は本当に怖くて、幼稚園の電話番号を電話に入力してから通話ボタンを押すまでに随分と時間がかかりました。何度も呼吸を整え、やっとの思いで1件目の幼稚園に電話をかけました。

この日の私のコンディションは、頭は冷静なのに常に涙があふれてくるという非常に良くない状態でした。泣きながら電話をかけてくる不安定な母親という第一印象を持って欲しくなかったので、泣いているのを悟られないようアナウンサーを意識したハキハキした口調で事前に用意していた原稿を読み上げました。

原稿にはチャート式で話すことをまとめてあり、先方の返答をある程度予測してさらにその先の返事ができるように細かく書いていました。徹夜明けのポンコツの脳みそでも対応できる完璧な原稿です。今までの経緯や自閉スペクトラム症と診断されたこと、そしてスバルの今の状態を説明し「可能でしたら見学や面談をさせていただけますか!」と。

本当はポタポタと涙が顎から滴り落ちていましたが、そんなことを感じさせない明るく元気な声で話すことができました。

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