自閉症の薬は?子ども用はある?リスパダール・アリピプラゾール(エビリファイ)などASD薬まとめ/医師監修

ライター:発達障害のキホン
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自閉スペクトラム症(ASD)の併存疾患に対する治療法や、処方される薬とは?このコラムでは、子どもの自閉スペクトラム症(ASD)の代表薬・衝動性や癇癪を抑える「リスパダール」「アリピプラゾール(エビリファイ)」、子どもの不眠に処方される「メラトベル」「ラメルテオン(ロゼレム)」などについて、医師監修で解説します。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。
目次

自閉スペクトラム症(ASD)とは?治療方法はある?

自閉スペクトラム症(ASD)の特徴は?

自閉スペクトラム症(ASD)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期から見られ、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。知的障害(知的発達症)を伴うこともあり、幼少期に気づかれることが多いと言われています。

自閉スペクトラム症の症状は3歳くらいまでにあらわれることが多いと言われています。主に他者との社会的関係形成に困難さがあったり、言葉や発達の遅れ、興味・関心が狭く特定のものにこだわりがある、などが特徴です。知的障害を伴わない場合は、幼児期に気づかれず、成人期に症状が顕在化することもあります。

自閉スペクトラム症(ASD)の併存疾患に対する治療法は?薬で治せる?

自閉スペクトラム症自体の原因を治療することはまだ不可能と言われています。ですが、早期から療育や環境調整を通して接し方を工夫することで、日常生活における本人の困りごとの解消につながります。

癇癪、衝動性、こだわりなど個別の症状に対しては、まずは一人ひとりに合った環境づくりを行います。
早期から「児童発達支援」や「放課後等デイサービス」などの発達支援施設で療育的支援や適切な教育を行ったり、苦手なことに対する対応方法を工夫していくなどの特性に合わせたサポートで子どもが自分らしく成長していけるように環境を整えていくことが重要です。

投薬については、自閉スペクトラム症そのものを治す薬はありませんが、ある一定年齢以上であれば、自閉スペクトラム症(ASD)の特性によって起きることが多い、癇癪、衝動性、こだわり、睡眠障害など、社会生活を送るうえで困難を感じる症状に対して、薬が処方される場合もあります。

自閉スペクトラム症(ASD)ほか、神経発達症(発達障害)に処方されるのはどのような薬?

自閉スペクトラム症(ASD)をはじめとした神経発達症(発達障害)による症状によって困難さがある場合に処方される薬を解説していきます。

中枢神経刺激薬・非中枢神経刺激薬ーー多動性・衝動性や不注意などに作用する薬

中枢神経刺激薬は中枢神経系に作用してその機能を活発化させ、非中枢神経刺激薬は主に前頭前野に働きかけ神経伝達物質の働きを強めます。多動性・衝動性や不注意に作用します。

・代表的な薬例:中枢神経刺激薬/コンサータ、ビバンセ 非中枢神経刺激薬/インチュニブ、アトモキセチン(ストラテラ)

抗精神病薬(定型抗精神病薬)・非定型抗精神病薬ーー多動・衝動性や、チック、こだわり行動、易刺激性などに作用する薬

抗精神病薬は脳内のドパミン神経系の活動を抑えることにより症状を改善していく作用があります。定型抗精神病薬(従来型)と非定型抗精神病薬(新規)に分かれており、定型抗精神病薬は陽性症状に作用しますが、非定型抗精神病薬は陽性症状と陰性症状の両方に効果があると言われています。

・代表的な薬例:定型抗精神病薬/ハロペリドール、クロールプロマジン、ピモジド 非定型抗精神病薬/リスパダール、アリピプラゾール(エビリファイ)、オランザピンなど

抗不安薬・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)ーー不安、心身症、抑うつ、こだわり行動、潔癖症、強迫性症状、場面緘黙などに作用する薬

抗不安薬は感情と関係する脳の動きなどを抑えることで不安、緊張、不眠などを改善し、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は脳内で神経伝達物質セロトニンの再取り込みを阻害しセロトニンの働きが増強されることで抑うつなど気持ちの落ち込みやイライラなどに作用します。

・代表的な薬例:SSRI/フルボキサミン・エスシタロプラムなど

抗てんかん薬ーー気分変調、躁うつ、イライラなどに作用する薬

抗てんかん薬は、脳内の興奮系物質の働きを抑える、抑制系物質の働きを強めるなどの作用機序があります。また、その2つとは違う新しい作用をもつ抗てんかん薬などもあります。

・代表的な薬例:ダイアップ、バルブロ酸ナトリウム、トピラマートなど

子どもの自閉スペクトラム症(ASD)の代表薬・衝動性や癇癪を抑える「リスパダール」「アリピプラゾール(エビリファイ)」

子どもの自閉スペクトラム症の易刺激性による癇癪や他害などを抑える代表的な薬として「リスパダール」「アリピプラゾール(エビリファイ)」があります。

リスパダール

リスパダールは、リスペリドン主成分からできている抗精神病薬で、自閉スペクトラム症がある子どもや統合失調症がある人などに処方されます。

自閉スペクトラム症の症状のひとつの易刺激性(不機嫌、無視、怒りっぽさ、癇癪、泣き叫ぶ、暴力や暴言、器物破損、抑うつ気分、気分の変わりやすさ、自傷などの行動を起こしやすいなどの症状)を抑える作用があります。副作用として主に眠気や食欲増多などがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)の治療にも使われる薬リスパダール。小児期の衝動性や癇癪を抑える治療薬?副作用やジェネリックなどの注意点、エビリファイとの違いも解説のタイトル画像

ASD(自閉スペクトラム症)の治療にも使われる薬リスパダール。小児期の衝動性や癇癪を抑える治療薬?副作用やジェネリックなどの注意点、エビリファイとの違いも解説

アリピプラゾール(エビリファイ)

アリピプラゾール(エビリファイ)もリスパダール同様に、易刺激性をやわらげる抗精神病薬です。ドパミン神経系を安定させる効果があり、躁状態およびうつ状態への効果が期待されています。副作用として主に眠気や食欲増多などがあります。
子どものASDに伴う癇癪をやわらげるお薬があるの?抗精神病薬「エビリファイ(アリピプラゾール)」に注目!副作用やリスパダールとの違いなども【医師監修】のタイトル画像

子どものASDに伴う癇癪をやわらげるお薬があるの?抗精神病薬「エビリファイ(アリピプラゾール)」に注目!副作用やリスパダールとの違いなども【医師監修】

リスパダールとアリピプラゾール(エビリファイ)の違いって?

アリピプラゾール(エビリファイ)とリスパダールは、どちらも易刺激性をやわらげる薬ですが、働きかける脳内の伝達物質が異なります。

アリピプラゾール(エビリファイ)がドパミン神経系を安定させるのに対して、リスパダールはドパミンとセロトニンの両方に働きかけることで、ドパミン神経系に作用し、陽性症状、陰性症状両方の状態を抑えます。リスパダールは、原則として5歳以上18歳未満、アリピプラゾール(エビリファイ)は6歳以上18歳未満の子どもに使うことができます。また、子どもの体重に合わせて用法用量が定められています。
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