自閉症息子「授業中の姿勢が悪い」と学校から指摘!サポートグッズも効果なし?椅子に座る姿勢維持、どうすれば…【作業療法士に聞く】

ライター:ゆきみ
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3歳のときに自閉スペクトラム症と診断を受けたけんと。年少から小学校入学までは月に1回ほど作業療法を受け、体幹の弱さは母も認識しているつもりでした。しかし、小学校の45分もある授業時間中では、思っていたよりも遥かに難しそうなわが子の姿勢維持。
今回は作業療法士の野田先生に姿勢についての悩みを相談させていただきました。

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監修: 野田遥
作業療法士
LITALICO研究所 研究員
作業療法士として教育センターや障害児入所施設等で勤務したのち、現在は自閉スペクトラム症者の感覚処理に関する研究や、発達障害に関連したプロダクトの研究・開発に取り組んでいる。

姿勢維持のサポートグッズを試すもうまくいかず…

ゆきみ(以下、ーー):小学2年生、自閉スペクトラム症のある長男けんとは、姿勢維持が苦手。食事のときは、まっすぐな姿勢で食べていられることが多いのですが、それ以外のときは椅子に座ると姿勢が悪くなってしまいます。

特別支援学級での授業を見学させていただくと、机に伏せてしまったり、座面に膝をのせてエビぞりのような姿勢をとったり、あぐらをかいたり…と、まっすぐに座れている時間がとても少なかったのです。通っている学校の交流級での授業は、姿勢維持を大事にされているようで、サポートをしてくださる先生が、2~3分間に1回くらいの頻度で姿勢を正していました。
自閉スペクトラム症がある息子。特別支援学級の授業中、わが子の姿勢の悪さを見て驚きを隠せない私。
「ここまでとは…!」授業中のわが子の姿勢を見て、驚きを隠せない私。
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学校から「姿勢の維持が難しいです」と何度も指摘があり、インターネットや本で調べて、いくつかのサポートグッズや対策方法を試してみました。

骨盤サポートクッションを購入したり、椅子の足に「踏む感覚」を得られるゴムひものようなものを張ってみたり、小さなツブツブのついたバランスクッションを敷いてみたりしました。今もそれらを愛用していますが、それでも姿勢を維持するのが難しい現状です。さらに何かやれることはあると思いますか?何をどうしたらいいのか、もう分かりません。

自閉スペクトラム症がある息子が通う特別支援学級の教室の椅子にサポートグッズをつけてみても、なかなか効果がみえず困る私。
教室の椅子にサポートグッズをつけてみても、なかなか効果が見えず…。
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100%ではなくても…まずは環境調整をしてみましょう

野田先生:すでにいろいろ試されたようなので、一周まわっている前提でお答えさせていただきます。姿勢が崩れやすい理由や背景はさまざまです。

例えば、
・人間には筋肉の緊張をとらえるセンサーがあり、ある程度、適切な筋肉の張りを自動的に保てるようになっているのですが、張りを保つのに努力が必要で、疲れやすい人がいる。
・感覚的に姿勢が崩れていることに気づきにくい人がいる。
・椅子と机の高さがあっていないなど、適切な大きさや形の道具を使えていない場合がある。
・学習レベルが合っていない場合がある。難しくて分からない、つまらない、だと姿勢を保ちにくい。
・多動性や衝動性が高く、じっとしているのが難しかったり、ちょっとした刺激で動いてしまったりする。

など。

姿勢が崩れることにはお子さまなりの理由があることを理解し、対応方法を考えることが大切です。


アプローチの方法としては…
・椅子や机の高さが身体に合っているか、確認する。
・環境調整という意味でいうと、椅子に滑り止めシートを敷くと、頑張らなくても腰が椅子の前の方に滑りにくくなり、姿勢維持が楽になることがある。(クッションを使用する場合、クッションが滑るようならクッションの下に敷き、身体が滑るようならクッションの上に敷く)
・感覚を求める傾向がある場合、足元に人工芝などの感覚刺激を入れられるものを置いてみると、感覚が入り落ち着く子どももいる。
・合理的に立ってもいい時間をつくる。


例えば授業中、答案用紙を教室の後ろや廊下に貼り、答え合わせをしに席を立つ時間をあえてつくることで、立つことへの感覚を満たすことができるのです。
ほかにも、机上の勉強の前にトランポリンなどで5分ほど身体を動かすと、椅子に座れる時間が長くなるお子さんもいらっしゃいます。
立つ時間をあえてつくることで座れる時間が長くなるケースも!
立つ時間をあえてつくることで座れる時間が長くなるケースも!
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環境調整によって、無理のない形で座れる状況をつくり、適応的な形で身体を動かせる機会や環境をつくることが大切です。100%ではなくても、うまく場面を選んで姿勢を変えられればいいですね。

すぐにできるように、というより…

ーー:低緊張などで姿勢を維持するのが苦手な方は、今後もずっとこのままなのですか?

野田先生:もともと筋肉の張りが緩めという可能性もありますが、「思春期に入り身体が大きくなって筋肉がついた」、「スポーツを始めた」など、身体の発達、経験でも変わってきますので必ずしも現状から変わらないわけではありません。
手押し相撲や座ってキャッチボールなど、遊びの中で体幹を使う場面を増やしてみましょう。
遊びの中で体幹を使う場面を増やしてみましょう。
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ーー:身体を動かすことが大切なんですね?

野田先生:手押し相撲、つなひき、手押し車、座りながらキャッチボール、マットを登るなどの遊びの中で体幹を使う場面を増やしてあげると、支えがしっかりしてくる可能性もあります。ただし、姿勢を保つための身体の変化には時間がかかります。
「すぐにできるように」というよりも、特性を理解したうえで、「将来的には身体の成長やスポーツの経験などで少しずつ身体が変化することで、もしかしたら今よりも楽に姿勢維持ができるようになるかもしれない」と頭に入れながら、今は環境調整や遊びなどできるところから取り組まれたらいいと思います。

ーー:ごはんのときだけ姿勢が崩れにくいのは理由があるのでしょうか?

野田先生:活動の種類に応じたモチベーションの違いが関連しているのかもしれませんね。
また、人は自然とその人にとっての合理的な動作や姿勢をとることが多いです。けんとさんの場合、ごはんを食べるときの道具の使い方や口にもってくる動作が、姿勢を保つことにフィットしているのかもしれませんね。
次ページ「対談を終えて」

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