抑肝散とは?発達障害の癇癪、イライラへの効果や副作用など/医師監修

ライター:発達障害のキホン
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自閉スペクトラム症には、イライラや過敏、癇癪など、その特性から生じる症状があります。これらを抑えるためには、環境を調整することが大切ですが、それでも難しい場合には、薬が用いられることがあります。今回は、自閉スペクトラム症など神経発達症(発達障害)の症状がある場合に処方される漢方薬の「抑肝散(よくかんさん)」を紹介します。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。
目次

漢方薬の「抑肝散」とは?神経発達症(発達障害)のある子どもにも処方される?

自閉スペクトラム症には、イライラや過敏、癇癪など、その特性から生じる症状があります。これらを抑えるためには、環境を調整することが大切ですが、それでも難しい場合には、薬が用いられることがあります。

抑肝散の「肝」は「怒り」を意味します。このことからも想像できるように、抑肝散は神経の高ぶりを抑える効果があるといわれている漢方薬です。神経の高ぶりを抑えることで、不眠の改善にも効果があります。もともと子どもの夜泣きに使われていたことで知られていますが、現在では大人の精神的な症状に対しても使われています。

抑肝散はストレスやイライラ、不眠などの症状がある人に処方される?

抑肝散は、神経が高ぶりやイライラを伴う不眠症、子どもの夜泣き、神経過敏などの精神症状に対して処方されます。筋肉の緊張を緩める働きもあるため、けいれんや手足の震え、ひきつけなどへの適応もあります。

また、抑肝散によく似た名前の漢方薬に、「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」があります。これは、抑肝散にチンピ(陳皮)とハンゲ(半夏)という成分を加えたもので、胃腸にやさしく、長期服用しやすいのが特徴です。

抑肝散の特徴、効能、効果

抑肝散は、複数の漢方の生薬を配合した漢方薬です。ブクリョウ、ビャクジュツ(またはソウジュツ)、センキュウ、チョウトウコウ、トウキ、サイコ、カンゾウが配合されています。「抑肝散加陳皮半夏」は、これにハンゲを加えたものです。

効能・効果

抑肝散には神経の高ぶりなどを抑えて、筋肉の「つっぱり」「こわばり」などを緩める効果があります。それにより心と体の状態を良いものにしていきます。

抑肝散で抑えられる症状

・イライラ感
・不眠などの精神神経症状
・手足のふるえ、けいれん
・子どもの夜なき、ひきつけ


「疳」が強いと言われる子どもに用いられることが多く、腹直筋が緊張していることも使用の目安となります。

抑肝散は乳幼児や子ども向けの漢方薬となりますが、神経症、不眠症、さらには認知症や統合失調症、躁うつ病、てんかん、パーキンソン病など、さまざまな精神・神経疾患の補助薬として処方されています。

抑肝散を服用すると、脳内の神経伝達物質であるグルタミン酸の働きが抑えられるため、神経を落ち着かせてくれます。セロトニン受容体への作用もあり、攻撃行動や不安を改善して心身を穏やかな状態にします。
また、サイコには熱や炎症をさまし、腹直筋など筋肉の緊張をゆるめる作用が、カンゾウには筋肉の緊張を緩める作用があります。

このように、本来は神経痛や不眠症、子どもの夜泣きなどの改善に用いられていました。しかし、現在では怒りっぽい、興奮しやすいといった認知症の周辺症状への改善効果があることが認められており、認知症に対しても処方されています。

抑肝散の用法、容量は?病院で処方してもらえるの?

抑肝散は、市販薬として販売されているので薬局で購入できますが、病院でも処方されます。通常、成人ですと1日分の7.5gを2~3回に分けて経口服用します。年齢や体重、症状により適宜増減が必要です。薬の形状は、錠剤、顆粒、内服液があります。

飲むタイミングは、食前と食間が基本です。抑肝散に限らず、漢方薬は、食前か食間に服用します。食事の約30分前や空腹時に飲むようにしましょう。しかし、空腹時に胃もたれなどの症状が起こるようでしたら、飲むタイミングを医師や薬剤師に相談し、タイミングを変えるとよいでしょう。

抑肝散が子どもに処方される場合は?

一般的に漢方薬の服用量は、成人と比較して、
・7歳以上15歳未満:3分の2
・4歳以上7歳未満は2分の1
・2歳以上4歳未満は3分の1
・2歳未満で4分の1以下
と規定されています。
年齢のほか、体重から量を換算する場合があります。また、病院で処方される場合は、症状や経過を見て量を調整することもあります。自分で増減せず、医師に相談しましょう。

また、漢方薬独特の匂いや苦みがありますので、感覚過敏のある自閉スペクトラム症の子どもの場合、長期服用が困難なことがあります。感覚過敏でなくても、子どもにとっては飲みにくい匂いや臭みがあるので、飲み方に工夫が必要です。次のような方法をためすとよいでしょう。

・細かくつぶしてココアや溶かしたチョコレートにまぜる
・1歳以上ならはちみつに混ぜる(1歳未満の子どもは、「乳児はちみつボツリヌス症」)を発症する恐れがあるため、摂取することはできません)
・薬を飲むためのゼリーオブラートに包んで飲む
・水に溶かして製氷機で凍らせてから口にふくむ
・アイスに混ぜ込んで食べる
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