これは強迫性障害?チェックポイントや治るきっかけなど/医師QA

ライター:発達障害のキホン
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強迫性障害(強迫症)は、強迫観念や強迫行為を何度も繰り返す精神障害です。強迫観念とは、無意味であると自覚しながらも抑えられない思考やイメージのことであり、手を洗う・順番に並べる・何度も確認するといった儀式的な行動(強迫行為)を行うことで強迫観念を打ち消そうとします。このコラムでは、強迫性障害の原因、症状、治療法等に関するギモンについて、小児科医・小児精神科医である藤井明子先生のアドバイスを交えてご紹介します。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
目次

強迫性障害とは?原因、どんな症状がある?

強迫性障害(強迫症)は、強迫観念や強迫行為を何度も繰り返す精神障害です。強迫観念とは、無意味であると自覚しながらも抑えられない思考やイメージのことであり、手を洗う・順番に並べる・何度も確認するといった儀式的な行動(強迫行為)を行うことで強迫観念を打ち消そうとします。

強迫性障害の原因は明確ではありませんが、遺伝的要因や脳内の化学物質の異常、環境要因などが関与していると考えられています。ストレスやトラウマも発症の一因とされています。

また、強迫性障害は、うつ病を併発することも少なくありません。およそ20~30%の患者がうつ病の症状を抱えていると言われ、より症状が重症化してしまうこともあります。このコラムでは、強迫性障害の原因、症状、治療法等に関するギモンについて、専門家の先生のアドバイスを交えてご紹介します。

【小児科医に聞く】手を洗いすぎる、何度も確認してしまう、被害妄想が激しい…強迫性障害の症状や原因は?医師が回答

Q:強迫性障害の症状、診断のポイントは?

(質問)
高校生の娘は昔から何事も気にしてしまう性格ですが、最近は度を越しているように感じます。強迫性障害かチェックするポイントはありますか?どんな症状があると強迫性障害と診断されますか?
(回答)
気にすまい、考えまい、行うまいと努力するにも関わらず、そうすることによって、かえって気になり、それに囚われて、そうせざるを得ない状態に陥っていることがあります。例えば、「人が触ったものを汚いと感じるようになって、頻回に手を洗うようになり始めた」、「気にしすぎだと思うが、手洗いをしないと落ち着かず、次第に人が手を洗わないのも気になり、人への手洗いも強要するようになった」というように、ご自身がしたくないと思っていても、それをしないと落ち着かず、生活に支障をきたしている場合には、強迫性障害を疑う必要があります。

強迫観念:自分にとって無意味で、不合理であると理解しているが、繰り返し不快な考えが頭を巡ることです。例えば、人が触った物は不潔であるという考えが巡るのは、強迫観念です。

強迫行為:強迫観念を抑えるために行われる反復的な行動や儀式です。例えば何度も手を洗うなどです。

強迫観念や強迫行為の症状がある場合、強迫性障害の可能性がありますが、診断にはほかの疾患との鑑別も必要になるので、児童精神科、精神科、心療内科などへの相談をおすすめします。
回答者:藤井明子先生(どんぐり発達クリニック院長/小児科専門医/小児神経専門医/てんかん専門医)
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Q:強迫性障害の原因は?治るきっかけはあるの?

(質問)
子どもが強迫性障害かもしれません。潔癖症のようになり手を繰り返し洗うのをやめられない、お風呂でも身体の汚れが気になるようで身体をずっと洗い続けていて、日常生活に影響が出ています。最近は出かけようとしても「汚れるのではないか?」と不安になるようで部屋にこもりがちです。
何が原因なのでしょうか?また、治るきっかけなどありますか?やはり病院を受診したほうが良いでしょうか。
(回答)
原因は解明されていませんが、脳内の神経伝達物質(セロトニン系)の異常が症状と関連していると示唆されています。環境の変化などのストレスで症状が悪化することもあります。お子さん自身やご家族のせいで生じる病気ではありません。子どもの強迫性障害には、チック障害、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、うつ病などの併発が多いことが指摘されています。

強迫観念があっても、強迫行為の回数を少しずつスモールステップで減らしていき、できたという経験を積むことで、強迫観念が少しずつ和らいでいくことがあります。しかし、親子で取り組むのは難しいこともあるかと思うので、精神科・児童精神科・小児科の医師・心理士や、スクールカウンセラーに相談すると良いでしょう。

生活に支障があったり、ほかの人にも手洗いなどを強要したりと巻き込む様子がある場合には、受診されると良いでしょう。
回答者:藤井明子先生(どんぐり発達クリニック院長/小児科専門医/小児神経専門医/てんかん専門医)
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Q:強迫性障害に併存する病気って?

(質問)
子どもが強迫性障害になり、最近は頭痛や動悸も訴えるようになりました。パニック障害になってしまうのではと心配です。
(回答)
頭痛や動悸などがある場合には、身体症状の原因検索をしつつ、症状を和らげるお薬を使用し、ほかに併存している疾患がないかも診ていきます。身体症状があると日常生活にも支障をきたしますし、専門医療機関を受診することをおすすめします。また、強迫性障害と関連する疾患は、チック障害、ADHD(注意欠如・多動症)、ASD(自閉スペクトラム症)、うつ病(気分障害)、不安障害などが挙げられますが、心配な症状が見られる場合には、かかりつけ医や専門医療機関に相談してみましょう。
回答者:藤井明子先生(どんぐり発達クリニック院長/小児科専門医/小児神経専門医/てんかん専門医)
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Q:強迫性障害の子どもへの接し方は?

(質問)
子どもが強迫性障害です。何度も繰り返し「大丈夫?」と確認をしてばかりで行動に移せない、といった様子が見られます。「大丈夫だよ」と声を掛けますが効果がないようで、母である私も疲弊しています。
どのような言葉を掛ければいいでしょうか?気にしないようにできる方法や良い接し方はありますか?
(回答)
なんとかして、安心させたいとお声を掛けているのだと思います。しかし、「大丈夫だよ」と声を掛けても効果がないように感じる場合には、お子さん本人の中では、大丈夫ではない不安があるのかもしれません。
「何度も確認したくなるくらい、心配なんだね」と、お子さんの気持ちを否定することなく、一度受け止める表現の声掛けをしてみるのはいかがでしょうか。その上で、「○回確認したらやめよう」と具体的な回数を決めて確認行動を減らす声掛けをし、確認行動が減ったら、ほめることを意識していきましょう。とても忍耐のいることですが、できる限り、同じ対応を続けるようにしてみましょう。
回答者:藤井明子先生(どんぐり発達クリニック院長/小児科専門医/小児神経専門医/てんかん専門医)
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