【精神科医・本田秀夫】イラつく母の「誰が汚れた服を洗うと思ってるの?」に、「洗濯機」の返答!?場の空気が読めない子への対応を解説

ライター:本田秀夫
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自閉スペクトラム症の特性がある子は、日常会話の場面や園・学校などでの集団活動の場面で、周りの人とのやりとりがすれ違ってしまい、誤解されることがよくあります。今回は、そんな子どもを理解するために、マンガをまじえて解説していきます。

監修者本田秀夫のアイコン
執筆: 本田秀夫
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授
附属病院子どものこころ診療部長
発達障害に関する学術論文多数。日本自閉スペクトラム学会理事長。

「特性=障害」とはならない

まずはみなさん、「発達障害」という言葉はすでに知っていると思いますが、これにはいくつか種類があって、大きくは次の3つです。

1.自閉スペクトラム症(ASD)
2.注意欠如多動症(ADHD)
3.学習障害(LD)
今回は、なかでも1.自閉スペクトラム症(ASD)について取り上げていきます。
なぜなら、「自閉スペクトラム症」の特性やコミュニケーションがとりわけ理解されづらく、「普通、分かるでしょ?」というのが、分からないタイプの子たちだからです。
本田 秀夫『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』
本田 秀夫『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』 マンガ:フクチマミ
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なお私は「発達障害」は病気というより、「少数派の種族」のようなものととらえています。

また、「特性=障害」とはならないため、障害(Disorder)を除いて、「自閉スペクトラム(AS)」、「注意欠如多動(ADH)」ということもあります。このコラムのなかでも、以降は『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』と同様に「自閉スペクトラム」と表記しています。
本田 秀夫『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』
本田 秀夫『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』 マンガ:フクチマミ
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自閉スペクトラムの特性のあるお子さんは、園や学校での集団活動で、周りとペースが合わないこともあります。そんなお子さんのことを理解してもらうために、今回は、直観的に理解しやすいマンガをまじえてお伝えしていきます。

皮肉や言外のメッセージが通じない

本田 秀夫『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』
本田 秀夫『マンガでわかる 発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』 マンガ:フクチマミ
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このマンガで親が言いたいのは、「誰が洗うと思ってんの?(洗うのはあなたじゃなくてお母さんでしょう? こんなに汚してしまったら、お母さんは大変なのよ。ケロッとした顔をしていないで、少しは反省したところを見せなさい)」というようなことですよね。そのような「含み」を込めて、「誰が洗うと思ってんの?」と問いかけているわけです。

ところが子どもは、その一切合切の含みがわかっていない。申し訳なさそうな態度をとるわけでもなく、服を洗うのは「洗濯機」だという事実だけを答えています。

遠回しな注意より、世渡り術やこぼさないコツを

おそらくこの子には自分がとがめられているという認識がありません。

このようなやりとりは、自閉スペクトラムの特性がある子によく見られることで、私たち支援者にとっては「あるある」です。子どもはふざけているわけではないので、反論したり叱ったりしないで、マンガのようにおだやかに受け止められたら理想的だと思います。

遠回しに注意するのはやめて、「こういう場面では形だけでも謝罪する」という世渡り術を具体的に教えてもいいかもしれません。さらに毎日の生活のなかで、飲み物をこぼさないようにするコツも教えていければ、言うことはありません。
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言外のメッセージに気づかないケース

相手の言っていることの「言外のメッセージ」に気づかない例は、ほかにもあります。

・自転車に乗っている幼稚園の友達が転んだのを見て、自転車に「大丈夫?」と声をかける
・公園の砂場でひとり遊びをしているときに、友達から「1人なの?」と声をかけられ、「4人家族だよ」と答える


いずれの場合も当人の立場で考えてみると、その子たちなりの筋が通っています。

先の洗濯機の例では、母親はスイッチを入れるだけで、実際に服を洗うのは洗濯機だという、より正確な答えを出していますし、友達が乗っていた自転車の損傷を心配してもいいはずです。そして、「4人家族」と答えるのは、理屈の上では必ずしも不正解ではありません。

気づかなかったら、はっきり教えてあげる

しかし、多くの人に「どこか変」と思わせるのは、なぜでしょう?

実は、「誰が洗うと思ってんの?」の質問には「謝りなさいよ!」のメッセージが、「1人なの?」という質問には「1人なら一緒に遊ばない?」というメッセージが込められています。また、「大丈夫?」と声をかけるのは、「私は心配していますよ」というメッセージを伝える目的があるからです。自転車に対しては、そのような目的は不要です。

「普通、分かるでしょ?」が分からないのが自閉スペクトラム症の子どもたちの特性です。言外に込められたメッセージに気づかなかったら、そこははっきりと具体的に教えてあげてほしいと思います。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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このコラムのコメント1件
サラママさん
2026/02/06 04:15
本田先生の解説を以前も見ていて納得。また今回、少し時間が経って読みましたが、やはり納得ですね。ASDの診断を受けた娘のことを、我が子ながら、理解できないことが多々あります。悩みます。
なんで?なんでそうなるの?
この言葉が一緒にいるとつい。
本田先生の解説で、モヤモヤが少しでもなくなり、みんなが自己分析できる、どうしたら良いか、工夫、手立てを考えて、過ごしやすい世の中になるといいなと感じてます。我が子にも、間違ってはないよ、けど、こういう意味なんだよがうまく伝わると良いなと思います。

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