小児喘息の原因は?アレルゲンや症状、発作を和らげる治療など【医師解説】

ライター:発達障害のキホン
小児喘息の原因は?アレルゲンや症状、発作を和らげる治療など【医師解説】のタイトル画像

小児喘息は、気道が慢性的に炎症を起こす疾患で、2~3歳までの発症が約60~70%、6歳までが約80%といわれています。発作が出ると、咳が止まらない、息をするのも苦しい、発作で夜眠れないなど、生活や活動に制限が生じることもあります。
今回は、小児喘息の原因や症状、治療方法、「アレルギー事情」のアンケート結果、小児喘息チェック表についてご紹介します。

監修者藤井明子のアイコン
監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
目次

小児喘息とは?症状、特徴、原因など。「アレルギーアンケート」結果も

小児喘息の症状や特徴、診断基準は?

喘息は、ある種の刺激によって気道に炎症が起こり、狭くなることで呼吸が苦しくなる状態を繰り返す病気です。気道とは、気管や気管支と呼ばれる、鼻や口から吸いこんだ空気を肺まで送る空気の通り道のことを言います。

喘息がある人の気道は、慢性的な炎症があり過敏になっているため、ちょっとした刺激でも発作を起こしてしまいます。小児期に発症するケースを小児喘息と呼びます。2~3歳までの発症が約60~70%、6歳までが約80%といわれており、小児喘息がある患者さんの大部分は、小児期で治癒します。

喘息の症状はさまざまですが、発作が起こると「呼吸困難」「ゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴」「咳き込む」などの症状が表れます。発作は夜間から早朝にかけて生じやすいのが特徴です。

喘息の診断は「症状の特徴や出現時期、頻度」「喘息の家族歴」「生活環境」などを聞いたりするほか、血液検査や呼吸機能検査などを行うことがあります。本人が症状を伝えるのが難しい場合などは、発作の様子を動画で撮影しておくと医師にも伝えやすく、おすすめです。

喘息の重症度は、症状の頻度と強さで分類します。治療方法を決めるため、重症度の評価はとても大切です。

・軽症間欠型
頻度は週1回未満で夜間の発作は月2回未満。症状は軽度で持続しない。
・軽症持続型
頻度は週1回以上だが毎日ではなく、夜間の発作は月2回以上。月1回以上、日常生活や睡眠が妨げられるぐらいの発作がある。
・中等症持続型
頻度は毎日で、夜間の発作は週1回以上。週1回以上、日常生活や睡眠が妨げられるぐらいの発作があり、短時間作用性吸入β2刺激薬がほとんど毎日必要。
・重症持続型
頻度は毎日で、夜間発作もしばしばある。日々の生活に制限が生じるぐらい症状が強い。
・最重症持続型
重症持続型のうち、さらに治療を強化する必要があるものをいう。
参考: 成人喘息の疫学、診断、治療と保健指導、患者教育|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-07.pdf

小児喘息の原因は?

小児喘息の原因は完全には解明されていませんが、主な原因として「遺伝」「アレルギー」「ウイルス感染症」「食事」などが考えられます。

両親のどちらかに喘息がある場合、発症リスクは25%、両親ともに喘息がある場合は50%になります。また、妊娠中の母親の喫煙や栄養不良、未熟児、低出生体重、母乳不足なども小児喘息の発症にかかわると言われています。

ダニやほこり、犬猫の毛に対するアレルギー、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎なども小児喘息に影響します。幼少期のRSウイルスやライノウイルスの感染も危険因子です。また、ビタミンC、E、オメガ3脂肪酸の摂取不足や肥満もリスクがあります。

喘息発作を引き起こす原因としては、風邪などの呼吸器感染症、ダニやほこりなどのアレルゲンとの接触、気温や気圧の変化、香りや煙の吸入、ストレスなどが考えられます。
参考:小児の喘息|MSDマニュアル
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/23-%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E4%B9%B3%E5%85%90%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%91%BC%E5%90%B8%E5%99%A8%E7%96%BE%E6%82%A3/%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%AE%E5%96%98%E6%81%AF

小児喘息症状チェック表

小児喘息症状チェック表
小児喘息症状チェック表
Upload By 発達障害のキホン

発達障害のあるお子さんのいるご家庭の気になる「アレルギー事情」は?

発達ナビでは「わが家の「アレルギー事情」アンケート&エピソード募集!」としてアレルギーについてのアンケートを募集致しました。
今回はその結果をご紹介致します。(2023年9月5日~9月7日までに実施/発達ナビ会員65名が回答)
「わが家の「アレルギー事情」アンケート&エピソード募集!」アンケート結果
「わが家の「アレルギー事情」アンケート&エピソード募集!」アンケート結果
Upload By 発達障害のキホン
「子どもに発達障害があり、なんらかのアレルギーがある」と答えた方が77%と一番多い結果となりました。多くのご家庭が発達障害とアレルギーに関して悩んでいるようです。

また、小児喘息とアレルギー性鼻炎については併存することも多く、約7割の方が喘息とアレルギー性鼻炎を併存していると言われています。
参考:わが家の「アレルギー事情」アンケート&エピソード募集!
https://h-navi.jp/selective_surveys/218

小児喘息の治療とは

喘息の治療には、2種類あります。1つは喘息の発作が起きないようにするための治療、もう1つは発作が起きたときの治療です。
発作が軽かったり、まれに発作を起こしたりするぐらいの症状であれば、発作が出たときにだけ薬を用いますが、たいていの場合は発作を予防するための治療を行います。

毎日行う小児喘息の治療

喘息発作を起こさないためには、気道の炎症を鎮めることが大切です。そのために、吸入コルチコステロイド薬やロイコトリエン修飾薬という薬を用います。発作がないときにも治療を続けることで、発作が起こりにくくなるので、自己判断で中止するのはやめましょう。喘息の治療は、発作が出ることなく、呼吸の検査で問題がなくなることがゴールです。

発作を予防するための吸入コルチコステロイド薬は、主に吸入薬として使用します。発作の重症度によって、薬の用量や吸入回数を増やします。吸入コルチコステロイド薬の副作用を心配する方がいらっしゃいますが、全身への副作用はほとんどありません。ただし、口内に残ると、のどの違和感やカンジタ症につながることがあるので、吸入後はうがいが必須です。うがいができないお子さんは吸入後に水を飲みましょう。

ロイコトリエン修飾薬は、アレルギーに関わるロイコトリエンという物質の働きを阻害し、気道の炎症をおさえて気管支を広げる効果があります。内服薬として使用します。

発作が起きたときに行う小児喘息の治療

発作が起きたときは、気管支を広げて呼吸をスムーズにする短時間作用性気管支拡張剤を中心とした治療をします。発作が軽いうちに吸入することで、重症化を防ぐことができます。また、吸入や飲み薬が苦手なお子さまには、ホクナリンテープという皮膚に貼るタイプの薬を用いることがあります。発作が起こったときにどうすればいいか、薬の正しい使用法など、日ごろから主治医と相談しておきましょう。

呼吸や咳が苦しくて眠れない、話せない、呼吸するとのどやろっ骨の間がはっきりへこむなどの症状があるときは、急いで医療機関を受診してください。救急車を要請してもいいでしょう。受診するまで、手持ちの短時間作用性気管支拡張剤を吸入します。

アレルゲンの把握

小児喘息は、アレルギーの関与が強いことが分かっています。アレルギーを引き起こす原因=アレルゲンには、ダニやほこり、カビ、犬や猫の毛やふけ、花粉などがあります。喘息を引き起こすアレルゲンを調べるため、血液検査によるアレルギー検査を行うことがあります。ただし、検査で陰性だったとしても、実際にはアレルゲンになっていることもあるので注意が必要です。一方、検査で陽性になったものは、実際に喘息症状の要因になっていることが多くあります。

小児喘息を悪化させないためにできること

小児喘息の発作を起こさないためには、予防としての治療のほか、アレルゲンの排除も重要です。家庭では特に、ダニやほこり、ペットの毛などを避けましょう。

喘息発作を起こさないために、できること
・じゅうたんや畳ではなく、フローリングにする
・床掃除を毎日する
・布張りのソファはやめる
・クッションや座布団を使わない
・羽毛の枕は使わない
・布団や枕は天日干しをして、掃除機をかける
・ぬいぐるみを置かない
・犬や猫などを飼わない(すでに飼っている場合には、過ごす部屋を分ける)
・同居者に喫煙者がいれば、禁煙する
・こまめに換気する

喘息を悪化させないためには、気管支の状態を把握することも大切です。めいっぱい息を吐いたときの息の速さを測るピークフローメーターという器具を使うと、気管支の状態が数値で分かります。お子さんの場合、息切れの症状や発作について、自分ではうまく伝えられないことがあるので、ピークフローメーターを使用すれば、喘息の状態を客観的に判断することができます。数値が高いときは今の治療を続け、低いときは主治医と相談するといいでしょう。

ピークフローメーターは、保険が適用され、比較的安価で購入することができます。入手方法については、主治医に相談をしましょう。
次ページ「小児喘息は、上手にコントロールして発作を防ぐ」

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。