どの高校を選ぶ? また不登校になったらと心配する母と息子の志望校は違うところで

そして中学校生活も後半になる頃、高校進学について悩むようになりました。高校は義務教育ではありません。以前のように不登校になってしまったら、退学することになってしまいます。ですので、まず私が心配だったのは、全日制にきちんと3年間通うことができるのか? ということでした。できれば出席日数が関係ない通信制の高校、ただしずっと家にいると外に出たがらなくなってしまいそうだったので、週3日通い、レポート提出することで成績がつく高校が息子にはいいのではないかと思いました。

ですが息子は、自宅近くの全日制の高校を希望しました。わが家は夫が早くに亡くなっているので、経済面で家に負担をかけたくないと思ったのかもしれません。また、息子はルーティンが好きなので、学校へは週5日通うのが当たり前と思っていた……という節もあります。

私はあえて通信制の高校のことは話さず、息子には「目指している高校へ行けるといいね」と応援していました。

息子の志望校の体験入学で不登校の原因となったいじめっ子と遭遇。フラッシュバックが!

そして中学3年生になって、高校の体験入学に参加した息子。ですが帰りの車の中で、「楽しかったけど、あの子(いじめた子)もいたんだよ……」と真っ青になって語り始めました。そして「きっと学力が同じくらいなんだな……。高校でいじめなんて嫌。知らない子もいじめに加わったりされたら……。せっかく死にたい気持ちがなくなって楽しく過ごせるようになったのに……!」とフラッシュバックを起こしてしまったのです。
志望校の体験入学で不登校の原因となったいじめっ子と遭遇。「またいじめられたらどうしよう」とフラッシュバックが!
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高校にもいじめっ子がいるかもしれないということで、息子は志望校を変えました。私が希望していた通信制で週3日登校する高校です。自分から通信制にすると話してくれた時に、「実は私、その高校があなたに合ってるんじゃないかなって思ってたんだよ」とカミングアウトしました。すると息子は「そうだったんだ!」と笑っていました。

この高校を選んで良かった! 自分の信じた道を自信をもって進んでいって

現在、通信制の高校を選んで良かったと二人で話しています。学校には、同じ発達障害を持つ子どももいてお互いの特性を知って配慮しあったり、趣味が似ているお友達とはとても深い知識を理解し合える素敵な関係を築くことができました。
全日制に比べると校則も厳しくなく、登下校の時間も全日制の高校とかぶらず、朝はゆっくり、帰りは早いことで、息子も疲れることなく休まず通えています。

アルバイトも始め、将来やりたい仕事も自分で見つけました。特別支援学級の先生です。そのため息子は今、大学への進学を目指しています。不登校だった時期からは考えられません。

「我が身を抓って人の痛さを知れ」これは、私の恩師が教えてくれた言葉です。
私の学生時代にもやはりいじめがありました。自分がいじめられたらどんな気持ちになるかという話の時、恩師はこの言葉を使われました。

息子は、発達障害のある子どもがどこにつまづきやすいのか、どんなことが嫌なのか、また、いじめられる子どもの気持ちを身をもって経験してきました。そして、そんな子どもたちが1人でも減るようにと思う優しい青年に成長しました。

自分の信じた道を自信をもって進んでください。いつでもあなたを応援しています。
イラスト/カタバミ
エピソード提供/しのっぺ

(監修:鈴木先生より)
神経発達症のお子さんはコミュニケーションが苦手な場合があるため、学校ではいじめのターゲットになりやすい傾向があります。特に出身校が異なり、進学先で初めて一緒になった子どもたちから理解を得られづらいことがあります。

IQテストで処理能力が低いお子さんは板書など写して書くことが苦手でマイペースです。ASDのお子さんに多い傾向があります。そういうお子さんにはタブレットで黒板の写真を撮るなど工夫が必要です。細かいところまで配慮してくれる通信制の高校は神経発達症のお子さんには向いています。自宅で自由に勉強できるからです。無理して全日制の高校だけを考えずに肩の力を落とせる通信制の高校も視野に入れつつ本人に行きたい高校を選択してもらうことが重要なのです。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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