突然の嘔吐…もしかして「自家中毒」?原因は?発達障害との関連はある?【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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1歳半から8歳くらいの子どもが嘔吐をしたり、腹痛を訴えたり、頭痛や全身の倦怠感などがある場合、「自家中毒」の可能性も考えられます。自家中毒はほとんどのケースで、安静にして糖質を多めにとることで改善しますが、まれに血性のものを嘔吐するなど重症化するケースもあります。今回は「自家中毒」の原因や症状、対処法、発達障害との関係についても解説します。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
目次

自家中毒とは?原因、症状など

子どもがすぐ吐いてしまう…これって自家中毒の症状?

嘔吐は幼い子どもによく見られる症状です。しかし、子どもが頻繁に嘔吐するケースでは、何か疾患が隠れているのではないかと心配になることもあるでしょう。子どもの嘔吐の原因はさまざまですが、その原因の一つとして「自家中毒」が挙げられます。

自家中毒とは、アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症)、ケトン血性嘔吐症とも呼ばれており、嘔吐や腹痛、頭痛、全身の倦怠感、脱力などの症状があります。重症になると、血が混じったものを嘔吐することもあります。冷や汗が出たり、意識障害を起こしたりする場合もあり、てんかんと間違われることもあります。
自家中毒の場合の嘔吐は、ピーク時には1時間に中央値で10回、最大30回ともいわれています。自家中毒の嘔吐以外の症状は下記の通りに報告されています。

・嘔気(吐き気)(90%)
・腹痛(74%)
・頭痛(58%)
・発熱(55%)
・顔面蒼白(45%)
・食欲不振(39%)
・発作時の無気力(35%)
・下痢(32%)
・血性嘔吐(28%)
・胆汁性嘔吐(16%)
・よだれ(16%)
・めまい(12%)
・羞明(まぶしく感じる)(9.8%)
・音声恐怖(3.2%)

一般的に、自家中毒を初期症状や前兆などから予期することは難しいといわれています。例えば、風邪などの発熱時や、遠足や発表会などのあとに嘔吐を繰り返したことがあるという子どもは、同じような状況の際に、自家中毒の症状を起こす可能性があるので、保護者が注意深く見守るとよいでしょう。

多くの症状を伴う自家中毒は、ほかの疾患と区別することが難しい病気です。気になることがある場合は、受診をして、医師の指示を仰ぐのがよいでしょう。
参考:間欠的な嘔吐発作から診断された 周期性嘔吐症候群の16歳男性例(岩永 光巨, 亀崎 秀宏, 黒杉 茜, 妹尾 純一, 坂本 大) | 日本内科学会雑誌/111 巻 (2022) 2 号
https://doi.org/10.2169/naika.111.277

自家中毒の原因は?

自家中毒の原因は、精神的なストレスなどの刺激に反応して吐き気やその他の症状が起こることといわれています。例えば、運動会や学芸会などの学校の特別な行事や習い事の発表会、試合の前などに感じる緊張、また遠足や旅行などの前に感じる興奮などが自家中毒を引き起こす「ストレス」に当たります。

また、寝不足や空腹、食べ過ぎ、遊び過ぎ、チョコレートやチーズのとり過ぎも自家中毒の原因の可能性があるといわれています。

緊張や興奮、寝不足、食べ過ぎ、遊び過ぎなどのあとに嘔吐などがある場合には自家中毒が疾患の候補になるかもしれません。しかし、自家中毒の原因は現代の医学をもってしてもはっきりしないという側面もあります。

医学的なメカニズムとしては子どもは肝臓で糖を貯蔵する機能が発達していないためだと考えられています。その分脂肪を分解することが増えるので、その結果、ケトン体という代謝物が増え、吐き気などの症状として出てきます。

自家中毒になりやすい子どもの特徴は?

子どもの発症が多いと言われている自家中毒ですが、最近では成人の発症例も報告されており、最高齢は73歳で発症した例もあります。

とはいえ、やはり症例は子どもに多く、発症年齢の中央値は4~5歳くらいといわれています。
子どもの中でもかかりやすいタイプには、痩せ型、心理的ストレスがかかりやすい、興奮しやすいなどの特徴があります。ストレスが原因となると育て方に問題があったのでは、愛情不足だったのでは……など心配される保護者の方もいますが、自家中毒とこれらの関連はありません。

また、自家中毒の患者には、偏頭痛の家族歴が多いとされているほか、本人も偏頭痛に移行しやすいといわれています。偏頭痛のある家族がいるケースなどは自家中毒になりやすいと心に留めておくとよいかもしれません。
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自家中毒と発達障害の関係は?

一般的に、子どもの中枢神経は未成熟なので、いろいろなことからストレスを受け、身体症状が発生します。それに加え、発達障害のある子どもの中には「ストレスを上手く処理できない」などの特性から不快な感情が嘔吐中枢を刺激し、より自家中毒が起きやすいといわれています。
次ページ「自家中毒は治るの?治療方法など」

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