イヤイヤ期が来ぬまま小4に…自閉症息子、自己主張よりルーティン優先だった幼少期

ライター:星あかり
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スバルがヨチヨチ歩きを始めた1歳頃から、遊び場を求めて児童館や公民館へ足を運ぶようになりました。
1歳半健診で言葉の遅れを指摘され、3歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断されたスバルですが、この頃は言葉の遅れ以外に発達に気になるところはありませんでした。
しかし公民館で同年代の子どもと接する機会が増えたことで「スバルってちょっと変わっているな……」と思うことが多くなりました。

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「TOIRO」の制作スタッフ。

自閉スペクトラム症息子、1歳の頃は公民館の中の少数派

スバルがヨチヨチ歩きを始めた1歳頃から、私たちは遊び場を求めて児童館や公民館へ足を運ぶようになりました。

公民館には月に何度か、同じ年齢の子だけが集まる時間が設けてあり、そこへ行くとほぼ同学年の子どもしかおらず、この年齢特有の悩みを相談しあったり情報交換することができました。そして、それと同時に、成長過程の「多数派」と「少数派」を目の当たりにする機会になりました。

3歳でASD(自閉スペクトラム症)と診断されたスバルですが、1歳当時はちょっと言葉が遅いかな? くらいで発達に気になるところはありませんでした。ただ、公民館の中では何かにつけて少数派でした。

初めて公民館へ行った日。初めての場所、たくさんの人、ちょっと緊張気味の保護者に不安を感じて泣き出したりママの膝の上から離れられない子が多い中、スバルは私の元を離れ公民館の隅から隅までパトロールしていました。
もちろん私は後ろにピッタリくっついて危なくないように見守っていましたが、スバルはまるで自分だけの世界にいるかのように周りを気にしない堂々たるパトロールぶりに「これは大物になるぞ」と思いました。

そんなに広くない部屋の何がそんなに気になるのか分かりませんが、始まりから終わりまでスバルと私はウロウロと歩き回っていたので、あの頃公民館で一緒だった人たちは、私たち親子の残像しか覚えていないのではないでしょうか。

公民館という場所に慣れてきた頃、パトロールは任務のように続けていましたが、スバルは空間のチェックと共に人もチェックするようにもなりました。
いつも顔を合わせる親子にニコニコと近づき、近すぎる距離感で笑顔のご挨拶。
初めましての職員さんの膝に座って休憩。

人見知りする子が多数派の中、スバルは本当に変わった子だなと思いました。

ほかの2歳児の「熱い自己主張」に母、驚愕

2歳くらいになり、言葉が遅い少数派グループの子どもたちも次々話し始める中、スバルはまだ「バイ(バイバイ)」「ばあ(いないいないばあ)」「あー(Car)」の3語と宇宙語だけでコミュニケーションを取っていました。
少数派どころか1人取り残されてしまいました。

公民館では、言葉が増えできる事も増えた多数の子どもたちが集団イヤイヤ期に突入していました。
保護者が靴を履かせれば「自分でやる」と泣き、うまく履けずにまた泣く……。話には聞いていたものの、初めて目の当たりにした『本物のイヤイヤ期』はなかなか壮絶でした。

スバルはここでも少数派で、イヤイヤ期がまだ来ていませんでした。
スバルは車が大好きで、毎日ミニカーを並べ、車のよく見える公園へ行き、車のカタログをボロボロになるほど読んでいました。私はこれらのこだわりを、スバルの自我の芽生えであると感じ「車を眺めて過ごしたい」という意志を表現しているのだと思っていました。

しかしイヤイヤ期の子の内側から発せられる強く熱い意思や、爆発したかのような自我を目の当たりにし「スバルのは外に向けた自己主張というより、自分の中で趣味に没頭しているだけだな」と思いました。

イヤイヤ期の子の姿を通して、2歳はこんなに高度な自己主張ができるのかと驚きました。
スバルは言葉が遅いから自己主張できないだけ……というのとは、ちょっと違うなと思いました。
周りの2歳児が壮絶なイヤイヤ期を迎えるなか、自閉スペクトラム症がある息子スバルにはイヤイヤ期はまだ来ておらず、自分の趣味の世界に没頭している。
周りの2歳児はイヤイヤ期真っ盛り! スバルはマイペースに趣味の世界へ没頭中。
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自己主張のないイエスマン

この頃のスバルはイエスマンで、「これするよ」「あそこへ行くよ」「これを着るよ」といった指示を理解し淡々と従いました。
テレビで子ども番組を見ている途中で「時間だからおしまいね」と消されても、泣いたり騒いだりする事なく素直に別の遊びをはじめます。

たまに「そろそろ寝るよ」と遊びを中断させようとした時に、まだ遊びたそうなリアクションをする事もありました。しかし、寝る時に着るスリーパーを羽織らせファスナーを閉めた途端、突然真顔になり布団に潜って行くのです。
布団に入ってから寝るまではまた別の戦いになるのですが、とにかくファスナーを閉める事がスイッチになり、スバルは全ての遊びを中断し自ら布団に入るのです。

今となっては自分のしたい事よりもルーティンを優先する特性だと分かるのですが、当時はまるでインプットされた事を実行するスイッチでも付いているのかと思いました。
スリーパーのファスナーを閉めると、どんなにやりたい事があってもスッと布団に入る、ルーティン重視の自閉スペクトラム症がある息子。
自己主張よりもルーティンを優先!
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あまりにも淡々と指示に従う姿を見て、少し焦った私は、スバルの意志を引き出そうと「どうしたい?」「何食べたい?」なんて曖昧な質問を投げかけたりしましたが、発語がないのに答えられるはずもなく、愛想笑いで流されてしまうのでした。

とは言え日常の中にスバルの意志はちゃんとあるのです。
「コレとコレどっちにする?」みたいな質問にはジェスチャーで「コレ」と選ぶことができるし、目の前に並んだおもちゃの中から今遊びたいおもちゃを選ぶことはできるのです。
アレがしたい、コレで遊びたい、アレを食べたいといった強い主張はありませんでしたが、スバルの好きな遊び、好きな食べ物、好きな公園、好きな絵本を私は知っているのです。

「今はこれで十分」だと思うようになりました。
次ページ「小学4年生の今は、自称「反抗期」中!?」

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