【精神科医・本田秀夫】友達を叩いてしまった!でもわが子なりの理由があって…学校でのトラブル対応、保護者ができる3つのコツ【マンガで分かる】

ライター:専門家体験談
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発達障害のお子さんは個性的な面が多く、それに対して学校はどちらかというと平均的なお子さんにあわせて作られています。ですので、発達障害のお子さんは学校生活の中でどうしても困りごと、トラブルが多くなりがちです。今回はお友達を叩いてしまったらどのように対応すればいいのか、精神科医の本田秀夫先生にマンガで解説いただきます。

監修者本田秀夫のアイコン
監修: 本田秀夫
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授
附属病院子どものこころ診療部長
発達障害に関する学術論文多数。日本自閉スペクトラム学会理事長。

学校生活での困りごと、保護者はどう対応すればいい?

発達障害のあるお子さんは個性的な面も多いですが、それに対して学校はどちらかというと平均的なお子さんにあわせて作られています。ですので、発達障害のあるお子さんは学校生活の中でどうしても困りごとが多くなりがちです。学校での困りごとを解決するには、家庭と学校の連携が不可欠ですが、どうすればいいのか迷うことも多いのではないでしょうか。

学校でのトラブル、今回はお友達を叩いてしまったケースを紹介します。次のような困りごとが起きたら、みなさんはどのような対応をしますか?

ケース:子どもが学校で友達を叩いてしまった

子どもが友達を叩いてしまった! でも「うまくできないことを何度もからかわれた」という背景があったことが分かって……
子どもが友達を叩いてしまった! でも「うまくできないことを何度もからかわれた」という背景があったことが分かって……
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同級生に他害をしてしまったケースです。子ども同士でもめているうちに、お子さんが相手の子に手をあげてしまいました。子どもに何があったか聞いたところ、「うまくできないことを何度もからかわれた」という背景があったことが分かりました。

このような場合、どのように対応すればいいでしょうか。

「からかわれたこと」と「叩いたこと」は分けて考える

保護者がやることは「相手への謝罪」と「事実の確認」。「からかわれたこと」と「叩いたこと」は分けて考える
保護者がやることは「相手への謝罪」と「事実の確認」。「からかわれたこと」と「叩いたこと」は分けて考える
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保護者としては、まず相手に謝罪することが第一です。それと同時に今後のトラブルを防ぐ予防策を講じることが大切です。そのためには「事実の確認」をする必要があります。

子どもに確認してみると、「ちょっとした小競り合いの中で偶然手があたってしまった」ということもあります。その場合は相手に謝罪し、今後は気をつけるということでいいでしょう。
しかし、今回の例のように「うまく字が書けないことを何度もからかわれた」といった理由がある場合は、「からかわれたこと」と「叩いたこと」は分けて考える必要があります。

「叩いたこと」は当然悪いですが「言葉の暴力」が許されてよいわけではありません。からかってしまったお子さんにも適切な行動を教えていく必要があります。ただ、暴力を振るってしまった側が相手に対して「そちらにも原因がある」というのは簡単ではありませんので、こんなときは、担任の先生、校長、副校長などの管理職の先生も協力して、学校での出来事を確認するような形で話し合いを持つのがいいでしょう。話をしてみると、相手のお子さんも「自分はルールを守っているのにあの子だけは違うことをするのはずるい」と思っていたりする場合があります。そんなときは「学校のルール」を見直すことで、どちらのお子さんも活動しやすくなる場合もあります。

私がこれまでに見聞きしたケースだと、叩いたことだけが問題視されて「とにかく暴力はいけない」で話し合いが終わってしまう例が多いです。学校の「標準」ができないことをからかわれていたお子さんは、追い詰められてしまいます。
学校、相手方と話し合うのは大変なことだと思いますが、子どもを守るためには話し合うことが必要です。場合によっては、医師などの専門家に協力を求めることも一つの方法です。
難しい問題に直面したときには、さまざまな人たちを頼りながら対応していきましょう。
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学校へどう伝える? 保護者ができる3つのコツ

今回のケース以外にも発達障害があるお子さんの学校でのトラブルはさまざまです。ですがどれも、保護者一人で対応するべきことではありません。学校と家庭が一緒に対応していく必要があります。
学校へどう伝えるか迷われたら、以下の3つのヒントを参考にしてみてください。

1、学校へは「要求」ではなく「相談」を

子どもの学校での環境を整えるためには、子どものことを一番知っている保護者が具体的な困りごとを学校へ伝えて、家庭と学校で情報共有することが大切です。しかし、保護者が困りごとに対して「こうしてほしい」という形で伝えると、学校へ対する「要求」のようになってしまうことがあります。また、こう伝えられると学校側は「はい」「いいえ」の二択を迫られる状態になり、学校側の考えと一致していない場合は、「いいえ」と断られてしまいます。

学校の先生にも教育方針があり「こうしたい」という考えがあります。保護者の考えを通すのか、先生の考えを通すのかといった争いのようになってしまうと話し合いがうまくいかないので、「相談」になるよう心がけましょう。

2、「相談」にするためには、「こうなります」と伝えて相手の意見を聞く

「相談」にするためには、「状況を認識して相手に伝えること」と「相手の意見を聞くこと」の両方が必要です。私が保護者の方、先生方と話すときは「お子さんにはこういう特徴があって、こういう条件だとこうなります」という伝え方をしています。「だから、こうしてください」とまでは言わないのがポイントです。そうすると「そうだとすると、こうすればいいでしょうか?」という提案が出てきます。そのような形でお互いが考えを出し合っていけるといいでしょう。

3、先生に相談しても話が進まない場合

先生に「こんなことが起きて困っています」と伝えたとき、一緒に対応を考えてくれる先生だといいのですが、そうならない場合は同じ話を繰り返しても対応が変わらない可能性が高いので、やり方を変えましょう。
私のおすすめは、その先生と一対一で話すのは避け、ほかの先生にも話し合いに入ってもらうことです。学校には「特別支援教育コーディネーター」を担当している先生(特別支援学級の先生がなられている場合が多い)やスクールカウンセラーが必ずいます。
担任の先生へ2~3回相談しても話が通じなかったら、ほかの人に入ってもらうことを検討しましょう。

発達障害のある子どもはどうして学校で困っているのか

私は、今の日本の学校には子どもが「標準的にやるべきこと」が多すぎると思っています。
・持ち物を揃えて登校する
・提出物を出す
・登校の際に先生、友達に挨拶をする
・授業中は席について、正しい姿勢で先生の話を聞く……
など、まだまだたくさんこなさなければいけない行動があります。
これが「学校の標準」になっていると、「学校の標準」をこなせない一部の子どもたちは追い詰められてしまいます。

私は「学校で、みんなと同じようにできない」と学校へ行くことができなくなった子どもたちをたくさん見てきました。
進学をエスカレーターにたとえると、今の学校生活は「みんなと同じ」でなければエスカレーターからはみ出し、その後の進学や進路選択がしづらくなるという面があります。ですので、「みんなと同じ」ではない標準的な道を歩くことが難しい子は、学校生活だけでなくその先もどうしても生きづらさを感じてしまい苦しむのです。そしてそれはお子さんだけでなく保護者のみなさんも同様で、学校で困っているわが子に対して、どう対応すればいいのか不安に思っている方も多いと思います。

私は、この狭すぎる「学校の標準」からはみ出しても基本的に大丈夫だと思っています。フリースクール、ホームスクールなど別のルートを選んだほうが学びやすくなる場合もあります。
子どもは何のために学校へ行くのか、それは、「社会に出ていくための土台をつくるため」です。学校へ登校すること、いい成績をとることなど、学校生活だけに目標をしぼると、学校を卒業することが人生のゴールのようになってしまいます。
「学校の標準」という基準にあわせることを求めて、発達障害のある子どもに無理をさせない環境を保護者と先生がよくコミュニケーションをとって、そして困ったときは専門家にも相談して整えていけるといいですね。

マンガ/吉田いらこ
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35029951
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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