20歳で初めて買い物できた!?自閉症息子の「お金」への不思議なこだわり、思わぬ方法で解決して…

ライター:寺島ヒロ
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息子のタケルにはASD(自閉スペクトラム症)があり、日々の生活の中に自分なりの儀式やこだわりが多くあります。私自身ASD傾向があるので、儀式があると安心する気持ちは分かるのですが、そんな私から見ても「なぜそこにこだわる?」と思うようなものがいくつもあります。今回はその中から特に「お金」に対するこだわりについて書かせていただきます。

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。

小さな頃から苦手がいっぱい!?

うちの息子、タケルはASD(自閉スペクトラム症)からくるこだわりで、どうしても嫌だ、できないということがいくつかあります。
例えば、下の名前で呼ばれること。
 
タケルは下の名前を呼ばれると、「世界に存在を許されないかのような恐怖」に襲われるのだと言います。
 
記事や漫画の中ではタケルと書いていますが、私は本人に「タケル」と呼びかけることはありません。家の中では妹が生まれるずっと前から「お兄ちゃん」です。
 
私が何か必要があって仕方なく名前を呼んだときなどは、恐怖に顔をゆがませ、「ふーッふーッ」と激しく息を吐きながら何かに耐えています。その様子はまるで身体の中からすべての空気を押し出したいかのようです。
下の名前を呼ばれ苦しんでいるタケルを見ながら、「何と戦っているんだろう……」と思う私(寺島)
下の名前を呼ばれ苦しんでいるタケルを見ながら、「何と戦っているんだろう……」と思う私(寺島)
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ただ、名前自体は気に入っていると言い、筆記するのも問題ありません。また姓で呼ばれるのは大丈夫なので、普段は姓のみを名乗るようにしているそうです。ただ、フルネームもダメなので、学校などでは「呼ぶときは苗字だけで」とお願いしていました。
また、目の前でドラマやアニメを見ている人がいることが耐えられなかったりもします。親に構ってもらえないから……とかいうわけではなく、家電売り場のテレビの前にいる知らない人でもイライラするのです。
 
「自分でもなぜこんなに恐怖や怒りを感じるのか分からない」「やめてほしいとは思うが、自分のほうが不当な要求をしていると分かっているので我慢している」と、タケルは言います。
これらは3歳の頃から成人になった今まで継続している問題ですが、個人的なこだわりの範疇の話であり、周囲にもある程度理解してもらっているので、それほど大きな問題ではないと思っています。

避けては通れぬ大問題

しかし金銭に関するこだわりには悩まされました!
タケルは小さい頃から、レジでお金を渡すことを嫌がるという特性がありました。
 
そのため、小学校高学年になっても、一切の買い物をすることができませんでした。お気に入りのものを選ぶ際に予算を立てることや、その過程での選択肢を理解することも難しかったのですが、なにより「支払いをする」ということに強い拒否感があったようなのです。
 
練習のため、お店で一緒にレジ前に立ってから、私の財布から出したお金を渡して、お店の人に渡すように促したこともありました。でも、タケルは「うーうー」とうなり固まるだけでした。

お使いはハタチになってから!?

また、近くのスーパーなどにお使いを頼んでも激しく抵抗し、絶対に行ってくれませんでした。やはり「支払いをする」という行為がネックになっていたようです。
 
10代も後半になると、自分でも「何でできないんだろう?」と思うようになり、なんとか「自分に命じて(タケル談)」お使いができるようにはなったのですが、それは大学2年生、ハタチを少し超えてからでした。
買い物中「いっちゃんが払ってきて。あとでお金渡す」と、支払いだけ妹に頼むタケル
買い物中「いっちゃんが払ってきて。あとでお金渡す」と、支払いだけ妹に頼むタケル
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