信頼性と妥当性

尺度の品質を評価するための心理測定学的特性として、主に信頼性と妥当性があります。信頼性とは、受検のたびに結果や得点が変動することがあまりなく、安定している度合いを表します。妥当性とは、その検査で本当に測定したいもの(LITALICO発達特性検査の場合にはお子さまの発達特性)をきちんと測定できている度合いを表します。

適切な開発が行われず、品質が十分にチェックできていない場合、以下のような問題が出る可能性があります。

◾️ある尺度を繰り返し受検した場合、その尺度で測定される気持ちや体験に大きな変化がないにもかかわらず、尺度の得点が大きくばらつく(つまり安定した結果にならない)
◾️質問で聞かれていることに対する解釈が回答者によって違う
◾️受検者にとって質問の内容や回答の選択肢が適切ではない

こうした検査であったら、適切な結果が得られるとは言えないかもしれません。そもそも検査に対して安心して受検することも難しいのではないでしょうか。

特に、尺度は質問項目に対して主観的に回答するため、質問項目に対する解釈のずれや回答する時期、状況などによって、回答に大きなばらつきが出ないように注意する必要があります。そのため、尺度に十分な妥当性と信頼性がある尺度を開発するためには、尺度の教示文や質問項目の内容などについて、しっかりと検討する必要があります。

COSMINの目的と特徴

尺度は受検者が自ら回答する検査ツールです。健康に関わるQOL(生活の質)や自覚症状、日常生活の機能状態などについて、受検者が自ら気持ちや体験をどのようにとらえているのかを数量的に測定することができます。そのため、近年では発達障害の分野でも尺度がよく用いられるようになり、さまざまな尺度が開発されてきました。

尺度を開発したり使用したりする場合、それぞれの主観で回答しても一定の結果が得られるか、検査結果と実際の状態に大きなずれがないかなどは、検査の品質として検討され、担保されなくてはいけません。つまり、こうした受検者が主観で回答するという特性を考慮したうえで、尺度に十分な妥当性と信頼性がある必要があります。

ですが、これまで、どうやって信頼性や妥当性を担保するのかというのは研究者間でも考え方が分かれ、基準や意見の一致がほとんどない状態でした。そのため、信頼性や妥当性を十分に評価されていない尺度が使われているのではないかという懸念もありました。

このような背景や課題に対し、尺度特性を評価するための標準的な基準として開発されたのがCOSMINです。COSMINでは、信頼性や妥当性といった心理測定学的特性を下の図のように分類しており、それぞれに対して評価基準が明確に設定されています。2018年に国際的専門家による合意形成によってガイドラインが改訂され、具体的に検証を進めるためのチェックリストなども開発されています。
図:測定特性に関するCOSMINの分類
測定特性に関するCOSMINの分類
Upload By LITALICO発達特性検査 編集部
COSMINでは、チェック結果が高い品質になるよう、事前にしっかりと研究計画を立てて開発を進めることが重要です。COSMINでは、チェックリストに含まれている評価項目一つひとつに対して、「とても良い」から「不適切」までの4段階で評価していきます。このチェックリストを使うことで、検査が妥当なものであるか、信頼できるものであるかどうかを、慎重に評価して開発することができます。

なぜLITALICO発達特性検査はCOSMINを使って開発したの?

LITALICO発達特性検査では、検査の品質を重要視して開発しています。品質担保の観点でCOSMINを開発指針として採用した理由としては、主に以下の2点が挙げられます。

1. 尺度としての妥当性と信頼性を担保するため
2. LITALICO発達特性検査の形式や測定特性に対して適切なガイドライン・チェック項目がある


それぞれについて詳しく説明します。

1. 尺度としての妥当性と信頼性を担保するため

LITALICO発達特性検査の開発では、尺度の信頼性や妥当性に関して、COSMINのガイドラインやチェックリストに準拠することが有用であると考えました。現在の尺度開発のガイドライン、チェックリストとして最も厳しい基準の一つであるCOSMINに準拠することで品質の担保を目指すことができると考えられるためです。

2. LITALICO発達特性検査の形式や測定特性に対して適切なガイドライン・チェック項目がある

LITALICO発達特性検査のような保護者さまがオンライン回答する検査では、いつどのような状況で回答しても安定した検査結果であることがより重要になるでしょう。

そこで、LITALICO発達特性検査では、尺度開発において、信頼性と妥当性について品質を重要視した開発を行いました。その品質担保の方法として、COSMINのガイドラインに沿った手順を踏み、チェックリストで「不適切」という評価がないよう、チェックリストを満たしながら開発が行われました。
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