自閉症息子、私立中学に進学。校長の「障害があっても特別扱いはしない」に衝撃…!?

ライター:寺島ヒロ
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わが家のASD(自閉スペクトラム症)息子タケル(現在23歳)は、中学受験をして小学校からただ一人中高一貫校に進学しました。息子が気に入って受験を決めた学校でしたが、既に大学受験に焦点を合わせたカリキュラムが組まれていたり、何年も塾に通って入学してきたようなお子さんが多そうな校風が、息子に合うかが心配でした……。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

地域の小学校からただ一人、遠くの中学校に入学

わが家のASD(自閉スペクトラム症)息子タケルは、中学受験をして、少し遠くの静かな山の上の中高一貫校に進学しました。私たちの住んでいた地域では、中学受験は一般的ではなく、小学校からその中学に進学したのもタケルただ一人です。
 
知り合いが一人もいない新しい環境でのスタートとなったため、最初はなかなかクラスに馴染めず、親しい友達をつくることもなかったようです。
 
ただ、本人はあまりそのことを気にしているようではありませんでした。「みんな勉強が好きだから、あんまり余計なことしないんだよ。騒がしくする人もいないし楽だ」と言って、毎朝片道2時間の道のりを喜々として通い続けました。

校長先生に「特別扱いはしない」と言われ……

入学式で忘れられない出来事がありました。
 
小学生の頃は動きがガチャガチャとしていた息子も、中学に入学するころには1時間ほどであれば大人しく座っていられるようになっていました。滞りなく入学式を終え、会場から出るとき、夫が校長先生を見つけました。
 
「挨拶をしておこう」と夫が言い、追いかけて名前を名乗ると……
にこりともせず、「タケル君のご両親ですね。本人から聞きました。発達障害だそうですね」と言われました。そして、障害があるからと言って特別扱いはしないとはっきりと言われてしまいました。
 
校長先生が、既に息子と個別に言葉を交わしていたことにも驚きましたが、その遠慮のない言い方にも驚きました。
 
もしかしたら、障害があることで、既に問題視されていたのか……?
 
せっかく入った学校だけど、すぐやめることになるかもしれないな……
 
と、その時は思ったのですが……
特別扱いはしないが、できる限りのことはすると言ってくれた校長先生
特別扱いはしないが、できる限りのことはすると言ってくれた校長先生
Upload By 寺島ヒロ
「特別扱いはしない」が、「できる限りのことはする」と言っていただきました。
 
その言葉は本当で、息子が学校で具合が悪くなった時に家まで送ってくれたり、パニックを起こして授業を聞いていなかった時に後日もう一度同じ授業をしてくれたりと、信じられない手厚さで接してくれました。そして、それはほかの生徒さんにも同じだったのです。
そういえば、地元の書店で販売されている学校案内には「大事に育てられた子どもを大事に育てる学校」と評されていました。実際に通ってみて、本当にそうだったなと思ったものです。

「文字って手で書かなくてもいいんだ!」タケル小説を書く

タケルが中学で友達をつくるきっかけとなったのは、趣味で小説を書いている人たちと出会ったことでした。息子はもともと読書が好きで、ライトノベルなどもよく読んでいましたが、自分で文章を書くことには苦手意識を持っていました。
しかし、中学に入ってすぐパソコンでレポートをつくる授業があったことをきっかけに、「文字を手で書かなくてもいいんだ!」と気づき、携帯電話でプチプチとショートショート(短い小説)を書くようになりました。
 
どうもそれまで「パソコンで文章を書いていいのは大人だけ」と思っていたようです。うちでは家族の誰もが使っていいパソコンがあり、タケルもブラウザゲームなどはしていたので、なぜそういう思い込みを持ったのかは分かりませんが……。
最初は短い文章から始めた息子ですが、少しずつ長い作品にも挑戦するようになり、学校の小説を書いている人たちとも親しくなったようです。
 
すぐにお小遣いをつぎ込み、書くことに特化した「デジタルメモ」を購入、夏休みになるころには「友達と一緒に学校に文芸部をつくる」と言いだし、一緒に活動する仲間とリレー小説を書き始めました。
寸暇を惜しんで足の上にデジタルメモを置いて小説を書くタケル
寸暇を惜しんでデジタルメモで小説を書くタケル
Upload By 寺島ヒロ
文芸部をつくる方は人数が集まらず頓挫しましたが、リレー小説の方は高校を卒業するまで続きました。この経験を通じて、息子は文章を書くことだけでなく、他人と協力して何かをすることの面白さを知ることができたように思います。
その時の友達とは今でも親交があり、時折チャットなどで話している様子を見かけます。
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