漢方薬「甘麦大棗湯」は癇癪や夜泣きに効果がある?副作用についても【医師監修】

ライター:発達障害のキホン
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甘麦大棗湯(かんばくたいとうそう)は漢方薬としては効き目が早く、子どもの夜泣きや不眠などに効果があります。また、発達障害に関係した癇癪や睡眠障害に用いられることもあります。今回は甘麦大棗湯の作用や具体的な効果、用法・容量、副作用について解説します。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。
目次

漢方薬「甘麦大棗湯(かんばくたいとうそう)」は子どもの夜泣きやひきつけに効果がある?作用、特徴、効能、副作用などについて解説

甘麦大棗湯(かんばくたいとうそう)とは、夜泣きや不眠、ひきつけなどに効果があると言われていて、子どもに用いられることも多い漢方薬です。心身の興奮を鎮める効果があり、自律神経の乱れ(いわゆる自律神経失調症)や癇癪に対しても用いられることがあります。

甘麦大棗湯は小麦、甘草、大棗(ナツメ)などの食品で構成されていて甘みがあり、子どもにも服用しやすいという特徴があります。

甘麦大棗湯は不安からくる腹痛にも効果があると言われています。腹痛に対しては基本的にはほかの漢方を用いますが、強い不安が腹痛の要因となっている場合には甘麦大棗湯により症状が改善することがあります。

また、甘麦大棗湯はほかの漢方薬と併用することもあります。ここでは抑肝散(よくかんさん)と桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)との併用について紹介します。

抑肝散はセロトニンを増やす効果があり、神経症や夜泣きなどに用いられる漢方薬です。
入眠、起床の困難や疲れやすさを感じていた方に甘麦大棗湯と抑肝散を併用したところ、相互作用により症状の改善が見られたという報告があります。
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抑肝散とは?発達障害の癇癪、イライラへの効果や副作用など/医師監修

次に桂枝加竜骨牡蛎湯は神経の高ぶりを抑える効果があり、神経症や不眠、夜尿などに用いられる漢方薬です。
不安症やパニック症などの精神疾患のある方に対して甘麦大棗湯と桂枝加竜骨牡蛎湯を併用したところ、症状の緩和が認められた例があります。
参考:津曲 淳一, 田原 英一, 矢野 博美, 土倉 潤一郎, 益田 龍彦, 犬塚 央, 田沼 龍太郎, 三潴 忠道 著「甘麦大棗湯により改善した腹痛の二例」日本東洋医学雑誌/66 巻 (2015) 1 号 p. 8-12
https://doi.org/10.3937/kampomed.66.8
参考:永田 豊, 小山 俊平, 青山 和史, 貝塚 真知子, 中川 のぶ子, 長坂 和彦 著「桂枝加竜骨牡蛎湯と甘麦大棗湯の兼用が有効であった不安症の4症例」 日本東洋医学雑誌/68 巻 (2017) 4 号p.317-323
https://doi.org/10.3937/kampomed.68.317

何歳から「甘麦大棗湯」は処方される?子どもが飲んでも大丈夫?

甘麦大棗湯は子どもから大人まで幅広い年齢の方に処方されます。具体的には生後3ヶ月以上の子どもが対象です。ただし、1歳未満の子どもの場合には、症状や状況を考慮してやむを得ない場合にのみ処方するような形となっています。

「甘麦大棗湯」は効果がでるまでどのくらいかかる?

漢方薬は効果が表れるまで時間がかかることが多いですが、甘麦大棗湯は比較的即効性があり、1週間程度で効果が表れるとされています。また、効果があった場合にもいつまで飲み続けるかについてですが、基本的には不眠や夜泣きなどの症状がなくなったタイミングで服用を中止します。

反対に効果が表れない場合にも服用を中止することがあります。服用の注視や継続については処方してもらった医師に相談するようにしましょう。

「甘麦大棗湯」の用法、用量を解説。病院で処方してもらえるの?

甘麦大棗湯は成人の場合1日7.5gを2~3回に分けて服用します。
子どもの場合は年齢ごとに用量の目安が厚生労働省により以下のように定められています。
・7歳以上15歳未満:成人用量の2/3
・4歳以上7歳未満:成人用量の1/2
・2歳以上4歳未満:成人用量の1/3
・2歳未満:成人用量の1/4以下
つまり、5歳の子どもの場合は1日3.75gとなります。実際に処方される量は年齢以外にも体重や症状の表れ方によって変化します。

甘麦大棗湯は小さな粒状となっており、食前または食間に水かぬるま湯とともに服用します。食前とは食事の20~30分前、食間とは食後約2時間で、この時間に服用することで胃腸からの吸収がよいため、作用の穏やかな漢方薬に向いていると言われています。

甘麦大棗湯は小児科やメンタルクリニックなどの病院で処方してもらうことが可能です。ただ、漢方を扱っているかは病院によって異なりますので、詳しいことは直接病院へお問い合わせください。
参考:都道府県知事が承認する漢方製剤の製造販売承認事務の取扱いについて|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000160073.pdf

「甘麦大棗湯」は発達障害に効果があるの?

甘麦大棗湯は発達障害のある方へ処方されることがあります。ただ、発達障害の特性に対して効果があるわけではなく、発達障害に関連した癇癪や睡眠障害などの症状を緩和するために処方されます。

実際にASD(自閉スペクトラム症)に伴う入眠・起床困難や疲れやすさのある方に対して、甘麦大棗湯と抑肝散を処方したところ、睡眠状況が改善し活動量も増えたという報告もあります。薬の飲み合わせなどにより副作用が出ることもあるので、甘麦大棗湯をはじめ漢方薬を試してみたい場合は、主治医に相談してみてください。
参考:武原 弘典, 松川 義純, 田中 裕, 山本 修平, 堀谷 亮介, 西森(佐藤) 婦美子 著「発達障害に合併する睡眠障害に対して漢方治療が有効であった2症例」日本東洋医学雑誌/69 巻 (2018) 3号 p.246-251
https://doi.org/10.3937/kampomed.69.246
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