チックに「気づかないフリ」見守るだけじゃだめだった?病院受診で知った自閉症息子の気持ちに涙
ライター:星あかり
ある時からスバルはストレスからチックが出るようになりました。どうやらスバルはチックが出ていることに気づいていないようだったので、私は「スバルにチックが出ていることを悟られず、なんてことない顔をしながら迅速に不安を解消するのが最適解」と思い秘密裏に行動していました。しかしスバルはチックが出ていることにも、私がこそこそストレスの原因を探っていることにも気づいていたのです。
監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。
多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。
どんな対応が最適解?私から見たスバルのチック
最初にスバルにチックが現れたのは小学校に上がる年の春休みでした。いつもと変わらぬ環境でルーティンをこなすことで安心するスバルにとって、服装も持ち物も朝のルーティンも幼稚園時代と一変する小学校への入学は不安を感じる出来事でした。
それに加えてコロナの流行1年目だったので入学式が延期となり日程は未定に……これは先の見通しが立たないことが苦手なスバルにとって大きなストレスとなりました。
そんなある日、スバルが首を激しく左右に振っていました。常同行動の仲間か感覚を楽しむ遊びなのかと思いました。「クセになるからやめときな」と注意したものの、1日に何度も首を振っていました。その後も首を振る日々が続きました。その時はその症状とチックが結びついておらず、食事中に首を振りはじめた時にはキツめに注意したりもしました。しかし、その後も続く首振りに「これはわざと首を振っているわけではない」と気づき、ようやくチックの存在に辿り着きました。
チックだと気づいたあとは、インターネットや本に書いてあった「本人に指摘せずに見守る」を実践しました。激しく首を振るスバルが視界に入ると私も不安になり、つい声をかけたくなりますがグッとこらえて過ごしました。
そうこうしているうちに入学式の日程が決まり、慌ただしく入学式を迎え、汗ばむ季節に新学期が始まり、通学が日常になった頃いつの間にかチックはおさまっていました。
その後もスバルの心の動きに合わせてチックは顔を出しました。スバルはチックが出ていても何も言わないので、自分が首を振っていることに気づいていないのだと思いました。チックが出ていることについては本人に指摘せず、チックの原因となる不安やトラブルを解消することで対応しました。不安がなくなるとチックはいつの間にかおさまりました。
こうした経験を重ね、私は「スバルにチックが出ていることを悟られず、なんてことない顔をしながら迅速に不安を解消するのが最適解」だと思いました。
それに加えてコロナの流行1年目だったので入学式が延期となり日程は未定に……これは先の見通しが立たないことが苦手なスバルにとって大きなストレスとなりました。
そんなある日、スバルが首を激しく左右に振っていました。常同行動の仲間か感覚を楽しむ遊びなのかと思いました。「クセになるからやめときな」と注意したものの、1日に何度も首を振っていました。その後も首を振る日々が続きました。その時はその症状とチックが結びついておらず、食事中に首を振りはじめた時にはキツめに注意したりもしました。しかし、その後も続く首振りに「これはわざと首を振っているわけではない」と気づき、ようやくチックの存在に辿り着きました。
チックだと気づいたあとは、インターネットや本に書いてあった「本人に指摘せずに見守る」を実践しました。激しく首を振るスバルが視界に入ると私も不安になり、つい声をかけたくなりますがグッとこらえて過ごしました。
そうこうしているうちに入学式の日程が決まり、慌ただしく入学式を迎え、汗ばむ季節に新学期が始まり、通学が日常になった頃いつの間にかチックはおさまっていました。
その後もスバルの心の動きに合わせてチックは顔を出しました。スバルはチックが出ていても何も言わないので、自分が首を振っていることに気づいていないのだと思いました。チックが出ていることについては本人に指摘せず、チックの原因となる不安やトラブルを解消することで対応しました。不安がなくなるとチックはいつの間にかおさまりました。
こうした経験を重ね、私は「スバルにチックが出ていることを悟られず、なんてことない顔をしながら迅速に不安を解消するのが最適解」だと思いました。
実は気づいていた!?スバルから見たチック
スバルは自分が「気づくと首をブンブン振っている」と気づいていました。
ブンブンしていると私が心配そうに「最近学校はどう?変わったことはない?」と聞き取り調査をしに来るので「ブンブンは良くないことなのかもしれない」と思っていました。しかし私が明らかに首をブンブンしていることについて触れないようにしているので、スバルは「これは話してはいけないことだ」と感じ、このことについて話さないようにしていました。
それに以前は「クセになるからやめな」と注意されていたので、指摘されないならそのほうが良かったのです。
ブンブンしていると私が心配そうに「最近学校はどう?変わったことはない?」と聞き取り調査をしに来るので「ブンブンは良くないことなのかもしれない」と思っていました。しかし私が明らかに首をブンブンしていることについて触れないようにしているので、スバルは「これは話してはいけないことだ」と感じ、このことについて話さないようにしていました。
それに以前は「クセになるからやめな」と注意されていたので、指摘されないならそのほうが良かったのです。
3年生になったある日、いつもは時々出るだけのブンブンが1日中おさまらなくなりました。
クラスでのトラブルがきっかけでブンブンが出て、トラブルが長期化したため悪化したのです。スルーを決め込んでいた私が思わず両手で顔を支えてしまったほど、激しい動きで首を振っていました。
クラスでのトラブルがきっかけでブンブンが出て、トラブルが長期化したため悪化したのです。スルーを決め込んでいた私が思わず両手で顔を支えてしまったほど、激しい動きで首を振っていました。
その時はじめて「チック」という言葉を使って今のスバルの状況を説明しました。
そして「専門家へ相談に行こう」と病院へ行く提案をしました。スバルは「専門家」に対して絶対的な信頼があるので「専門家に相談すればチックが良くなるかもしれない」とホッとしていました。
そして「専門家へ相談に行こう」と病院へ行く提案をしました。スバルは「専門家」に対して絶対的な信頼があるので「専門家に相談すればチックが良くなるかもしれない」とホッとしていました。
スバルの中でチックの悩みは終わっていなかった!
チックの相談をしようと思い立ち小児神経科や児童精神科へ予約の電話をしたものの、最短で半年後の予約しか取れませんでした。
そして初診までの半年の間にチックの原因となったクラスでのトラブルが収束に向かって行き、それに伴いスバルのチックもおさまりかけていました。初診の日、私の中ではチックは終わったようなものだったので、その時抱えていた別の困りごとをメインに相談していました。
しかしスバルの中ではチックの悩みは終わっていなかったのです。
スバルは少し緊張した顔で「あの!チックをなくす手術ってできますか?」と聞きました。先生は「チックをなくす手術はないけど……」と断わったあと、スバルに分かりやすくチックについての説明をしてくれました。
ほかにもスバルが質問した「チックとトゥレット症候群の違い」なども説明してくれました。最後に「チックを治す手術はないが、チックの原因となる気持ちを落ち着かせる薬や漢方はある。今はその時ではないけど、またひどくなったら相談してほしい」と話してくれました。
スバルは漢方が何か知りませんでしたが「漢方」という強そうで頼もしい響きに食いついていました。「チックを気にしなくて良いんだよ」「そのうちおさまるよ」という言葉より「いざとなったらぼくのバックには専門家と漢方がついている」ことがスバルにとっては大きなお守りになりました。
私はスバルがチックについてそこまで思い悩み、下調べをし質問を用意し、今日という日に挑んでいたとは知りませんでした。(私がチックについて尋ねにくい環境をつくってしまっていた)と思い、自分の不甲斐なさに涙が出ました。病院からの帰り道、スバルに謝ると「お母さんより専門家に聞いたほうが確実だと思って」と返ってきました。たぶんそれも本心ですが、どちらにせよ不甲斐ない……。
そして初診までの半年の間にチックの原因となったクラスでのトラブルが収束に向かって行き、それに伴いスバルのチックもおさまりかけていました。初診の日、私の中ではチックは終わったようなものだったので、その時抱えていた別の困りごとをメインに相談していました。
しかしスバルの中ではチックの悩みは終わっていなかったのです。
スバルは少し緊張した顔で「あの!チックをなくす手術ってできますか?」と聞きました。先生は「チックをなくす手術はないけど……」と断わったあと、スバルに分かりやすくチックについての説明をしてくれました。
ほかにもスバルが質問した「チックとトゥレット症候群の違い」なども説明してくれました。最後に「チックを治す手術はないが、チックの原因となる気持ちを落ち着かせる薬や漢方はある。今はその時ではないけど、またひどくなったら相談してほしい」と話してくれました。
スバルは漢方が何か知りませんでしたが「漢方」という強そうで頼もしい響きに食いついていました。「チックを気にしなくて良いんだよ」「そのうちおさまるよ」という言葉より「いざとなったらぼくのバックには専門家と漢方がついている」ことがスバルにとっては大きなお守りになりました。
私はスバルがチックについてそこまで思い悩み、下調べをし質問を用意し、今日という日に挑んでいたとは知りませんでした。(私がチックについて尋ねにくい環境をつくってしまっていた)と思い、自分の不甲斐なさに涙が出ました。病院からの帰り道、スバルに謝ると「お母さんより専門家に聞いたほうが確実だと思って」と返ってきました。たぶんそれも本心ですが、どちらにせよ不甲斐ない……。