家族のペースを大切に。心と体を休めて「無理をしない」わが家のお正月

ライター:花森はな
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わが家にはASD(自閉スペクトラム症)と強度行動障害のある高校1年生の息子と、同じくASD(自閉スペクトラム症)の小学校6年生の娘がいます。二人とも、多くの人が集まる場所や大きな音に敏感で、特に年末年始のような賑やかなイベントは負担に感じることが多くあります。今回はそんな2人との年末年始の過ごし方をお話しさせていただこうと思います。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

年末年始の騒音問題は、雨戸でスッキリ解決!

息子が小学4年生になり、ASD(自閉スペクトラム症)の特性が強く出始めたことをきっかけに、私たち家族の生活は大きく変わりました。息子は、人混みやそれにまつわる雑多な音、外の世界全てに刺激を感じるようになり、それまでは大丈夫だった都会への外出が困難になってしまいました。人の往来が多くなる年末年始、その症状は顕著にひどくなっていきました。

自宅の前は、近くの商業施設へ向かう人々で常に賑わっており、ひっきりなしに通り抜けます。当時は人気の位置情報ゲームアプリがリリースされたばかりで、そのゲーム内でアイテムがもらえる場所や、対戦場所を求めてうろうろする買い物帰りの人たちに出会ってしまうため、食料品の買い出しに子どもたちを連れて行くことは不可能になってしまいました。

家の中にいてももちろんその騒音は響いてしまうので、苦肉の策として年末年始は一日中雨戸を閉め、なるべく静かな環境を保つことにしました。部屋が多少暗くなっても、子どもたちの安らぎを優先するためにはやむを得ない選択です。初詣も三が日に行くことをやめました。そのことに文句を言う親族もいたのですが、そのうちにコロナ禍に突入し、神社自体も「分散参拝」を推奨したため、人の少ない平日の息子の体調が良い日を見計らって、ゆっくりと参拝しました。コロナ禍をきっかけに「分散参拝」を推奨する神社はまだ多く、わが家のように敏感な子どもを持つ家庭にはとてもありがたいです。
息子は、人混みやそれにまつわる雑多な音、外の世界全てに刺激を感じるようになりました
息子は、人混みやそれにまつわる雑多な音、外の世界全てに刺激を感じるようになりました
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家族みんなで作る、新しいおせちのカタチ

また、あらゆるものに過敏になってしまったことで、正月料理のほとんどが完全に食べられなくなってしまいました。それまでもあまり好きではなかったのですが、その年ほとんど食べられなかったおせちを見て、翌年からは注文するのをやめました。重箱に、子どもの食べられるものだけを詰めた「子どもおせち」を作ることにし、いわゆる一般のおせちをやめて、私も一緒に食べることにしました。

市販のおせちを選ぶ時も、なるべく子ども向けを意識していましたが、どこか無理をして食べていたのかもしれません。新年早々無理してもいいことはありません。おせちには伝統的な意味合いがありますが、わが家はわが家だけの意味を一緒に考えました。たとえば「唐揚げ」や「フライドポテト」なら「気持ちが上がる=元気」、「チーズ」はまっしろなので「新年」、「ウインナー」は「勝利」、伊達巻きは「(おいしいから)しあわせ」……、一見ただのゴリ押しなのですが、年末年始は、変化が苦手な子どもたちにとって、イレギュラーなことの連続です。どうせなら楽しいほうがいいので、子どもたちにとって「いつも食べている」「安心できる」「おいしいもの」を詰め合わせました。

普通の家庭ならば、こうしたおせちの意味や正月行事の一つひとつを教えていくことは、子どもの学びになるのでしょう。ですがそれすらも子どもの負担になるのなら、やめてしまっていいと思いました。いつか子ども自身が「食べたい」「行きたい」「やりたい」と思った時にその意味や歴史を教えればいいし、それは「今ではないな」というのがわが家の選択です。
わが家オリジナルの、食材の意味を考えました
わが家オリジナルの、食材の意味を考えました
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年末最後のおたのしみは、大掃除!

苦手なことばかりの年末年始の子どもたちですが、得意なことがあります。それは「大掃除」です。普段片付けることは苦手だけれど、掃除となると話は別です。「今日はこの場所を掃除しよう」ときっちり計画を立て、本人にできる範囲の分担を振り分けるようにしています。

同じASDでも息子と娘では得意分野が違います。息子は部屋が散らかっているとパニックを起こしやすいですが、自分で整理整頓するのが苦手です。しかし、トイレやお風呂など、特別な場所の掃除がすごく得意です。つまようじや古い歯ブラシなどを駆使して、徹底的に綺麗にしてくれます。

一方、娘は、玄関のドアを磨くのが大好きです。朝からドアを中からも外からも磨き続け、通りがかるご近所の方にその度に褒めていただきご満悦でした。大掃除の効率的には悪いのかもしれませんが、「ここ!」と決めた場所を集中して丁寧に綺麗にしてもらうことで、その分私はほかの場所の掃除に注力できますし、本人の自信にも繋がります。学校の特別支援教室での掃除分担も、先生から「娘ちゃんは掃除機が上手ですよ」と教えていただいたりするので、学校でできることはおうちでもしてもらっています。

もちろん気持ち的にできない日もあるので、できる時にできることを大切にしています。
子どもたちが得意な大掃除!
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