「自分の学び方」を見つけるために、家庭でできる具体的なアプローチとは?

――子どもが「自分の学び方」を見つけるために、家庭でできる具体的なアプローチはありますか?

阿部:「自分の学び方」と出会うということは、学びを通じた「自己理解」だと考えています。自己理解は自分だけで進めることは難しいのですが、できれば「家族以外の誰か」の助けが必要ではないかと思っています。その意味で、ご家庭はお子さんが頑張らなくていい場所、リラックス・リフレッシュできる場所であるといいと思います。まずは、お子さんもそしてご家族も頑張らなくていい場所がある、ということが「自分の学び方」と出会うための土台になると私は感じています。 

その上で、もしお子さんの「学びを阻害している要因」があるとしたら、それは何なのかを捉える視点について、本大会のさまざまなプログラムで学んでいただけると思います。その視点を持っているのと、持っていないのでは、支援が決定的に変わることでしょう。

――テーマにもある「好奇心が伸びていく」ために、子どもの自己肯定感を育む上で保護者が大切にすべきことは何でしょうか。

阿部:子どもたちは「なぜ?」「どうして?」の達人だと思います。当たり前を見直す視点、我々がいつも見ているものを別の見方、新たな見方でとらえるプロ、それが子どもたちです。とくに、発達障害のある子どもたちは「問い」を持つ力がとても高いのです。大人は、そういうオリジナルな見方をする子どもたちの味方でありたいと思います。

そのためには、その子の「問い」や「分からないことを楽しむ力」を大切にしたいと思っています。「分からないこと」「できないこと」「まちがうこと」こそが学びのスタートラインです。「分からない」「できない」に正直になれる、そんな安心感(心理的安全性)を学校やご家庭で大切にできたらいいですね。「自分は自分のままで大丈夫」「自分の学び方を大事にしよう」と思えることが、子どもたちの好奇心を伸ばしてくれるでしょう。

――学校の先生と上手に連携していくためのアドバイスがあればお聞かせください。

阿部:私が長く教育相談をしてきた中で実感しているのは、「保護者の皆さんこそがその子の一番の専門家である」ということです。ですから、保護者の皆さんが捉えた「その子の姿」を積極的に支援者と共有してほしいと思います。自信をもって先生方と連携していってください。

もちろん学校側に理解が得られないということもあるでしょう。その場合は、専門機関の力を借りて、その子のための、オーダーメイドの支援プランをみんなで考えていってほしいのです。保護者の皆様の「他者に援助を求める力」をぜひ発揮していただきたいと思います。

「目の前の子ども」をしっかりと理解するところからスタートするプログラムづくり

――さまざまな講演が予定されていますが、ご登壇される先生方についてや、プログラムに込めた想いなどを教えてください。

阿部:教育講演(すべてオンデマンド配信)では、最新の支援方法についてたくさん学ぶことができます。近年「〇〇トレーニング」のような技法が一人歩きして、「その子が好きなことは何か」「何に困っているか」から支援を考えるのではなく、「一定の支援方法に子どもを合わせる」ということが残念ながら支援の現場でも起こっています。しかし重要なことは、「このお子さんにはどのような支援が必要なのか」ということをしっかり考えることではないでしょうか。

本大会の各プログラムは、当たり前ですが「目の前の子ども」をしっかりと理解するところからスタートするように設定されています。原点回帰と言っていいと思います。

――LD(学習障害)について、最近の教育現場・支援現場での状況や課題、その解決策など、今回の大会でも触れられるかと存じますが、現在特に先生が感じていらっしゃることがあれば教えてください。

阿部:この夏に放送されていたTVドラマ「愛の、がっこう。」では主人公が実は「発達性ディスレクシア」であったということが一つのテーマになっていました。その「読み書き」の監修を務めていらっしゃったのが宇野彰先生(NPO法人LD・Dyslexiaセンター)です。本大会の教育講演(オンデマンド配信)では「発達性読み書き障害の背景とアセスメントに基づくサポート」についてお話をしていただくのですが、そこでも宇野先生がネットなどに広がっている「よくある間違った情報」について解説してくださいます。

今、インターネット上では間違った情報もたくさん拡散されており、そのような情報をもとに支援をしていくと、子どもたちに余計な負荷をかけたり、さらに苦しみを与えてしまったり、心に傷を負わせてしまったり、ということも起こりかねません。そのような悲しいことを防ぐためにも、本大会で正しい情報に触れていただきたいと思います。「昔は言われていたことが、実は正しい捉え方ではなかった」ということが明らかになってもいます。そういう最新の知見が、子どもたちの視点に立った支援につながるはずです。
愛の、がっこう。
https://www.fujitv.co.jp/aino_gakkou/
――今回の大会は、会場とオンデマンドのハイブリット開催の講演会・特別講演・大会企画シンポジウム、オンデマンド配信の教育講演、会場でのワークショップや展示など、さまざまなプログラムが用意されています。オンデマンド配信は、興味があっても時間の都合がつけづらかったり、遠方にお住まいで参加が難しい保護者の方々にとっても、参加しやすい機会になるかと思います。そうした保護者の皆さまに向けて、注目をしてほしいプログラムがあればその理由と共に教えてください。

阿部:オンデマンドでご覧いただけるプログラムとしては、先ほどもご紹介したような教育講演があります。

テーマとしては、「子どもの学び方を学ぶ」「ディスレクシアの理解と支援」「教科学習の土台となる遊びやことばの支援」「心理教育的アセスメント」「ICT活用による支援」「子どもたちとSNSやゲームの世界」など、さまざまな分野が用意されています。どの教育講演もその道の第一人者の先生方です。分かりやすく、深く学ぶことができると思います。

オンデマンド配信期間中、教育講演は見放題です。各プログラムが60分程度なのも学びやすいと思います。もちろん60分を通して視聴していただくことも、少しずつ視聴していただくことも可能です。
日本LD学会第34回大会
日本LD学会第34回大会
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10月18日(土)には本田秀夫先生と沖田×華さんの対談も!

阿部:教育講演や大会企画シンポジウムなどは、大会参加費が必要ですが、一般公開講演は無料となっています。本田秀夫先生にお話しいただく一般公開講演「『好きをとことん』進むために 〜周りの大人が知っておくこと」については、Webサイトの[一般公開講演]から参加申し込みしていただければ、当日会場にお越しになっても、オンデマンド(後日配信)でもご視聴いただけます。

またスペシャルゲストとして、NHKのドラマ「透明なゆりかご 産婦人科医院 看護師見習い日記」の原作者である沖田×華(おきた ばっか)さんとの対談も予定しています。沖田×華さんは小学4年生の時に、医師よりLD(学習障害)とADHD(注意欠如多動症)の診断を受けている当事者でもいらっしゃいます。面白い対談になると思いますので、お楽しみに。
※注:Web参加は、後日のオンデマンド配信(見逃し配信)の視聴となります。会期当日のライブ配信はありませんのでご注意ください

――この大会が、日本のLD(学習障害)支援の未来にどう繋がることを期待されていますか?

阿部:本大会では、LD(学習障害)のお子さんだけではなく、多様な子どもたちの理解と支援について深めていきます。そして同じ課題意識や情熱を持つ研究者、現場の先生方、保護者、支援者、さらに学生や生徒が全国から集まってくださいます。情報交換や語らいの中から、新たなエネルギーとネットワークが生まれることを期待しています。
10月18日(土)には本田秀夫先生と沖田×華さんの対談も
10月18日(土)には本田秀夫先生と沖田×華さんの対談も
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