絶不調の2学期、理由は?ぼっちのお祭り、つらい帰省がトラウマにー発達障害の私の子ども時代

ライター:宇樹義子
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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=65092000900

ASD(自閉スペクトラム症)、不注意優勢型ADHD(注意欠如多動症)、複雑性PTSD(心的外傷後ストレス症)の私。夏休みは世間がイレギュラー進行となるとともに、家族で過ごすことが増える時期です。夏休みは私にとっては負荷が大きく、毎年必ず調子を崩す結果に……。 今回は私の、夏休みによる心身の不調についてお話しします。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

学校はなく、テレビもイレギュラー。「いつもと違う」ストレス

生活リズムの乱れと体力の低下

私にとって学校は心身ともにつらいところだったので、夏休みで学校に行かなくて済むのはある種楽なことではありました。

一方、夏休みは「決められたルーティンに従っているだけで勝手に毎日の生活リズムや活動が整う」という利点が得られなくなる時期でもありました。

朝は決まった時間に起きて朝日を浴びることもなく、好きなだけ寝ていられる。一晩じゅう本に没頭していることもできる。体育の授業がなければ自分で運動するタイプでもないので運動不足になり、頭ばかり使うことになります。

それで起こったのが、生活リズムの乱れと体力の低下でした。どんどん就寝時刻と起床時刻が後ろにずれ、身体がいつも重くてボーッとしていました。

世間のイレギュラー進行

夏休みになると、夏休み向けの特別番組ばかりになって、「いつものテレビ番組」が見られなくなります。

私は、ASD(自閉スペクトラム症)の特性から「いつも決まったときに決まった番組を見る」ことが精神安定剤のようになっていました。また私には、強すぎる刺激に晒されたり、それらがいつどのようにやってくるか見通しが立たないと心身ともにかき乱されるところもありました。

このため、特別番組の嵐に晒される中で、不安になったり吐き気がしたり、テレビで見た怖いシーンを夜中に夢に見たり、耳が疲れて頭痛がしたり……。

新聞も雑誌もチラシも図書館もみんな夏休み特集のオンパレードで、逃げ場がありません。このようにして私は調子を崩していったのです。

ピリピリした家族との密着生活

夏休みでつらいのは、「いつもと違う」ということだけではありません。家族と密着して過ごすこともストレスでした。

「お出かけ」での不調

学校が休みで毎日家にいると、どうしても一日中、家族と顔を合わせることになります。同居の父方の祖父母と、いま思えばひきこもりだった伯父、そして兄と毎日一緒。

これだけでも息苦しさがありましたが、お盆ともなれば両親も休みになるので「海水浴やテーマパークに行く」「母の実家(祖母の家)に滞在し、親戚と法事に行く」などのお出かけイベントがあり、これがかなりしんどかったです。

お出かけは両親も良かれと思ってやってくれていたのだと思いますし、私も楽しくなかったわけではありません。良い思い出も心に残っています。

でも、私は遠出をすると、車移動や五感の刺激、精神的な緊張で必ず具合が悪くなるのですよね……。

車に酔って嘔吐してしまったり、すぐに疲れてしまって「帰りたい」とグズったりするのですが、そうなるたびに父や兄から怒られたり、イライラされたりする。申し訳なくて申し訳なくて、怖くて、だからといって元気になれるかといえばそんなわけないわけで……。

母も不調、私も不調、父と兄の不機嫌

昔の人なので診断はありませんが、母にも発達障害と複雑なトラウマがあったのではないかと思います。

それで、夏休みに実家(私にとって祖母の家)に帰ると必ずひどい頭痛を起こして寝込むし、みんなで旅行に行くと緊張して一睡もできず、翌日は「具合が悪い」と言ってホテルで寝ていたりするのです。

母も不調、私も不調。そしてそれを見た父と兄がピリピリと不機嫌になる。家族でのお出かけで、皆が元気で楽しいまま過ごして帰ってこられることはありませんでした。
夏休みには、こちらが母方祖母の家に行くこともあれば、母方祖母がこちらに遊びにくることもありました。そうするともう大変なのです。同居の父方祖母と、遊びにきた母方祖母が何かと張り合う。父方祖母が母方祖母に意地悪したり、皆で楽しく外食中、母方祖母に向いているみんなの注意を自分に引き戻したいのか、わざと台無しにするような騒ぎを引き起こしたり……。

また、母方祖母は有能で快活な人でしたが、皆からいつも注目されて感謝され尊敬されていないとすぐに機嫌が悪くなるタイプ。

少食な私がお腹がいっぱいでも、母や父が祖母の顔色を伺って「せっかくおばあちゃんが買ってきた高いスイカ/つくってくれた美味しいごはん なのだから食べなさい、食べないと大きくなれないよ」などと言う。

実際に祖母は、私が美味しそうに完食したり元気な声でニコニコしてお礼を言ったりしないと子どものようにブンむくれ、「そないお邪魔やったら帰らしてもらおか?」などと嫌味を言い出して手に負えなくなるのでした。

1人きりの夏祭り

上に、母と私には似たところがあって、出かけると私も母も不調だった、ということを書きました。

母は当時には珍しくフルタイムで働く女性でしたが、旅行などの遠出以外でも、ふだん休みの日に出かけるということをしない人。私と同じで、きっと普段の生活で疲れ切ってしまい、休みの日は1歩も外に出ずにずっと寝ていたのですよね。

騒がしいところや人混み、日当たりが苦手なのも私と同じ。それで私には、「夏休みに母と2人で出かけ、どこかに連れて行ってもらって楽しく過ごした」という思い出がありません。

3歳年上の兄は両親に言われる限りはしぶしぶ私の世話をしてくれましたが、さすがに小学校高学年の歳の男の子の夏休みともなれば、クラスメートの男の子と好きに遊びたいはず。

それで、父は仕事でいない、母は家で寝ている、父方祖母は冷たい、祖父は不調、伯父は「恥ずかしいから外に出すな」とほかの家族が言う、友だちも1人もいない……という私は、地域の子ども向けの夏祭りにも1人で行ったりしていました。

当時は必死に「1人でだって楽しいもん」と自分に言い聞かせていましたが、今は思い出すたびに悲しくて泣きそうになってしまいます。
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