不登校、中学受験、進学費用の壁…発達障害息子の可能性を信じて「母子二人三脚」で歩んだ17年

ライター:あき
不登校、中学受験、進学費用の壁…発達障害息子の可能性を信じて「母子二人三脚」で歩んだ17年のタイトル画像
Upload By あき

わが家の息子コチ丸は、小3の時にASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)と診断されています。
コチ丸が保育園に入る前からひとり親家庭だったわが家。発達障害のある息子との暮らしは、落ち着きのなさや不登校との戦いで、「育て方が悪いのか」と思い悩んだ出来事は数えきれません。でも、本当の試練は、年代ごとに悩みの質が形を変えてやってくることでした……。

監修者鈴木直光のアイコン
監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

なぜ、うちの子だけ……?「育てにくさ」を責めた、葛藤の日々

コチ丸が保育園に入る前に離婚して、母子2人暮らしになったわが家。小さな頃からじっとしていないコチ丸を1人で面倒をみるのはなかなか大変なことでした。

2人で買い物に行けば忽然と姿を消し、探し回ってようやく見つけたと思うと売り物の恐竜のオモチャを通路の端から端まで並べていたり、行列を規制しているコーンを勝手に動かしてどこかへ持っていったり……。とにかくコチ丸から目が離せない状態で買い物どころではなく、かといって家に置いていくわけにもいかず。当時からフルタイムで働いていた私は、週末しか買い出しに行ける時がなかったのですが、1週間くたくたに働いてやっときた貴重な休みは、買い出しだけで体力も気力も削られていました。

ふとスーパーや保育園で同じくらいの子どもを見ると、なんと落ち着いていることか……!今思えば、あれはコチ丸が発達特性からくる困難を抱えていたからなのだと理解できますし、つい笑ってしまうような思い出ばかりですが、当時は本気で「私の育て方が悪いのか」と自分を責めたことも多々ありました。

そんなコチ丸も成長とともに落ち着いて、買い物中に目が離せないということもなくなりました。体も人一倍大きく成長したコチ丸に、重たい荷物を持ってもらえる……と思いきや、「家で待ってるわ」と冷たくあしらわれ、もう買い物にもついてこないという寂しさと、手伝わないんかい!という憤りの狭間で、なんだかモヤっとする現実。

そんな、子育ての一つの終わりをしみじみと痛感していた私ですが、このときはまだ知りませんでした。目の前の嵐が去ったその先に、まったく違う質の悩みが待ち受けているなんて……!
母子2人暮らしで、買い物も大変だった幼少期
母子2人暮らしで、買い物も大変だった幼少期
Upload By あき

シングル家庭に立ちはだかる「お金」問題。実家に戻ってひと安心と思いきや……!?

ワンオペ育児の大変さはもちろんですが、ひとり親家庭の大きな悩みは、やっぱりお金の問題ではないでしょうか。
わが家も保育園の間は賃貸マンションを借りて生活をしていましたが、当時のお給料はフルタイムの正社員で働いて手取りで15万円(!)。家賃が5万円ほどだったので、食費や日用品費などを引くと毎月ギリギリか赤字の生活でした。さすがにこのままではコチ丸にまともな生活をさせてあげられない……と思い、小学校入学を機に実家に戻りました。正直、私は実家の母とあまり相性が良くないので、戻ることもためらわれましたが、背に腹は変えられない、そんな感じでした。

実家に戻って間もなく、私は実家から近い会社に転職し、少しお給料は増えたのですが、それでも手取りで20万円いかないくらい。といっても、当時はコチ丸がしょっちゅう問題行動を起こしては小学校に呼び出され会社を早退していたので、このお給料が妥当だと思っていました。それに実家に戻ったことで金銭面もだいぶ楽になり、不登校になりつつあったコチ丸を当時はまだ健在だったじぃじが見てくれていたので、私も安心して仕事に通うことができていました。

小学校の頃はそんな感じで特に大きくお金がかかることもなく、コチ丸の習い事や私の趣味に使う余裕もありました。それよりもその頃頭を悩ませていたのは、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)と診断されたコチ丸の落ち着かない言動と、不登校でした。今となっては、あの頃の私に「これから悩むことがどんどん変わっていくよ……」と言ってあげたい気持ちです(笑)。
小学生時代の悩みは、「不登校」と「落ち着きのなさ」でした
小学生時代の悩みは、「不登校」と「落ち着きのなさ」でした
Upload By あき

母、動く。「わが子の可能性」を信じて挑んだ、一世一代の賭け

コチ丸は小6の時、居場所を見つけたいという思いで「学びの多様化学校」の私立中学に入ることを決意しました。しかし、中学受験はまったくの予定外!当然お金は足りず、運よく合格したとしても、本当に通わせることができるのか……私には自信がありませんでした。
でも、不登校だったコチ丸が初めて見せた「ここに行きたい」という強い意志。コチ丸が自分の言葉に責任を持って頑張れるなら、私も信じてみようと思いました。

しかし、そうは決めたものの、わが家にはあまりにも現実的な「お金」という巨大な壁が立ちはだかっていたのです。私は覚悟を決め、「息子の進学のため、もっと収入のいい仕事に移りたい」と、当時働いていた会社の社長に退職の意向を伝えました。すると、なんと社長は、コチ丸の学費を払えるだけのお給料を出すと約束してくださったのです(!)。社長には、本当に感謝してもしきれません。おかげで、なんとか3年間の学費も払い切ることができ、中学も卒業を迎えることができました。

「わが子の可能性を信じたい」という思いが、お金の問題を乗り越える奇跡を引き寄せる原動力にもなりました。また、社長自身もひとり親家庭で育ったこともあり、コチ丸には家族ぐるみで今もよくしてくれています。

結果的に私立中学にかかった費用は予想以上でしたが、「学びの多様化学校」は、コチ丸の人生を変えるために本当に必要な場所だったので、それに見合った対価を払ったのだと納得しています。
予定外の中学受験でお金の問題に直面
予定外の中学受験でお金の問題に直面
Upload By あき
ライフバナー
次ページ「子育てのゴールはまだ先。母子で歩む「オリジナルな道」は続く!」

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。