リレーの練習で「ふざけている」と誤解された発達障害年長息子。運動会辞退が頭をよぎったけれど…【読者体験談】

ライター:ユーザー体験談
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「うちの子はみんなと違うから」と、子育ての中で戸惑いや孤独を感じることはありませんか?特に集団行動が求められる行事では、わが子の特性が目立ってしまい、先生や周囲の視線に心が折れそうになる瞬間があるかもしれません。
これは、当時年長だった息子が運動会のリレーで「バトンを渡さない」という行動を先生に「ふざけている」と誤解され、参加辞退を考えてしまうほどに追い詰められた体験談です。【発達ナビではユーザーさんからの子育てエピソードを募集中!今回は「集団行動と運動会」についてのエピソードをご紹介します】

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

この記事で分かること

  • 発達障害のあるお子さんが運動会のリレーで直面した困難と、保護者の葛藤
  • 園や学校の先生に子どもの特性が伝わらない苦悩
  • 否定形の指示ではなく、「望ましい行動」を具体的に伝えることの大切さ
  • 児童発達支援(療育)の先生への相談が、子育ての悩みを軽くするきっかけに
  • 園や学校に対して、子どもの特性や必要な配慮をあきらめずに伝える勇気の重要性

好奇心旺盛な年長息子が直面した「リレーの壁」

私の息子は現在9歳で、3歳でASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)と診断されています。好奇心旺盛で、気になることは自分の目で見て確認せずにはいられないところがあります。ボードゲームや工作が好きですが、一斉行動や運動、特にルールのある遊びは苦手な一面もあります。

息子が幼稚園の年長だったときのことです。秋の運動会に向けて、リレーの練習が始まりました。息子にとって、リレーのルールはとても理解が難しいものでした。「バトンを持って、次の友だちに渡す」という一連の流れよりも、「バトン」という気になる物をどう扱いたいかという「したいこと」が優先されてしまうようでした。
最初のうちは、練習している様子を見て「みんなと一緒に走るのが楽しそうだな」くらいに思っていたのですが、先生からのご指摘で、事態の深刻さに気づかされることになりました。

「リレーは、バトンを渡さないとつながらないですよね。『次のお友だちに渡すよー!』って言っても、息子さんは渡さずに笑っているんです」

先生方には、息子がルールを理解できていないだけでなく、ふざけていると思われていたようでした。
先生方には、息子がルールを理解できていないだけでなく、ふざけていると思われていたようでした
先生方には、息子がルールを理解できていないだけでなく、ふざけていると思われていたようでした
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「経験を奪うのか」と追い詰められた日々

「うちの子には難しいので……」と私はやんわりと運動会への参加を辞退したいという思いを伝えました。練習とはいえ、先生方の厳しい態度や、息子が「できない子」と見られる状況に、これ以上耐えられそうになかったからです。
しかし、園からの返答は予想外のものでした。

「経験させたいので、なるべく休まないように来てください」との言葉に続けて、さらに「息子さんに経験させないんですか?お母さんが、お子さんの経験の場を奪うんですか?」とも言われ、「私が、息子の可能性を奪っているの?」と胸をえぐられるような思いがしました。園では子育てについてもいろいろとご指摘を受けていたため、自分の判断に自信が持てず、ただただ戸惑いました。「経験させたい」と言われるのなら、参加させるしかない。でも、息子は先生方の望む姿に到達せず、毎回責められるような視線を浴びる……虚しさと悔しさと情けなさでいっぱいでした。

「なんでこんな思いしなきゃいけないんだろう」と泣きたい気持ちになりましたが、私は自宅での練習を決意しました。
まずは、息子にリレーのルールを伝えることから始めました。

  • クラスごとの色を教え、息子は○色チームで、次のお友だちにバトンを渡すことを説明。
  • 幼児向け番組のリレーのコーナーを繰り返し見せる。
  • 「リレーのおやくそく」として、紙に絵と一文を書いて見える化する。
  • 実際にバトンの持ち方と渡し方を練習する。

息子は、調子が良い時に練習すると「うん!」とニコニコしながら取り組みました。これで大丈夫。本番までに何とか間に合わせたい。

しかし、幼稚園での練習で、さらなる試練が待っていました。なんと、息子はバトンを転がしてしまったのです。それを見てニコニコと喜んで追いかける息子。先生からは、また厳しいご指摘がきました。

毎日「できないこと」の報告で、私の自己肯定感も下がる一方でした。この状況をどうにかしないと、息子も私も潰れてしまう――。
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