3. 今後の展望について

――今回の実証実験では、どのような点を検証する予定ですか?

研究としては、現在実施している利用者アンケートや現地調査から、実際に利用された/利用されることを想定した際のご感想や、もっとこうしてほしいというニーズを集めたいと考えています。

――さいごに、将来的な展望をお聞かせください。

将来的な整備は今のところ未定ですが、研究結果を社内外問わず広く情報展開を行い、今後のインクルーシブな駅環境整備に活かしていきたいと考えています。

実験協力をされた佐藤教授より

成田空港に整備されているカームダウン・クールダウンスペースの利用者アンケートで、空港以外で同様のスペースが必要な場所として、鉄道駅を挙げられている人がいました。鉄道利用においても当事者のニーズが潜在的に存在することが、あらためて示されたと言えます。
空港で導入されている居室型やボックス型のスペースを、鉄道駅にそのまま整備するのは難しい場合があるかもしれません。しかし、今回の実証実験で提案された「スポット」という考え方は、鉄道駅における一つの方向性を示すものだと考えています。
何より、このような「スポット」が整備されていること自体が、騒音・光・におい・混雑といった環境要因で困難を抱える人々に対し、「鉄道事業者が理解してくれている」という安心感を提供することにつながると期待しています。

実験協力をされた橋口氏より

まず親の立場として、私自身の発達障害の子育てで、息子がパニックになった際に柱や自動販売機などの傍で落ち着かせた経験をお伝えさせていただきました。
次に大阪・関西万博などこれまでカームダウン・クールダウンに携わってきたユニバーサルデザインコンサルタントとしては、カームダウン・クールダウンにはさまざまな期待や要望がある一方で、不特定多数の方が利用する駅への設置は防犯や安全対策なども考えると、できること・できないことの制約があるため、今回のスポットは音や光、においなどがあることを前提とした上で、混雑や人の動線から外れ立ち止まって落ち着けることを目的としている旨を事前に伝える大切さをお伝えいたしました。
また、今回の取り組みは障害者差別解消法の「合理的配慮は『環境の整備』を基礎とする」という一文にあり障害者差別解消法の3つ目の柱となる『環境の整備』に値する好事例となる取り組みであることもお伝えしました。

とかくこのような取り組みはゼロか100か、正しいかそうでないかで議論されがちなため、事業主側がチャレンジに躊躇してしまうことも多々ある中で、今回の取り組みは果敢に勇気を持って今できることを一歩踏み出したとても画期的な取り組みだと感じています。また取り組みの背景には、昨年度から発達障害を手掛かりとした駅環境整備をテーマに研究に取り組まれてきたプロセスがあり、そのプロセスに価値があるまさしく「プロセスエコノミー」の取り組みだと感じています。ユニバーサルデザインで大切なことの一つはプロセスであるため、このプロセスも含め、日本を代表する鉄道会社のJR東日本のこの取り組みが好事例となって社会に広がっていくことを切に期待いたします。
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精神障害者保健福祉手帳でも鉄道運賃が割引に!保護者も対象?JR、私鉄、地下鉄…適用条件一覧表も【2025年最新】

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
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