【実体験】不器用すぎる自閉症息子、「鼻がかめない」のに花粉症デビューで絶望…感覚過敏とこだわりを逆手にとった対策とは?

ライター:星あかり
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幼稚園の頃は「スーパー不器用BOY」として過ごしていたスバル。のちに「DCD(発達性協調運動症)」と診断されることになるのですが、身体全体を使う全身運動も道具や指先を使う微細運動も苦手で、日常生活の中ではサポートが必要なこともありました。
そんなスーパー不器用BOYの困り事の一つとして「鼻がかめない」がありました。
そして最悪なことにスバルは花粉症を発症したのでした。

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監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。 現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。

鼻がかめない不器用BOY

幼稚園の頃スバルは、鼻をかむ、シャボン玉を吹く、ろうそくの火を吹き消すのような息をコントロールする事がすべてできませんでした。そもそもスバルは幼稚園での生活の中で、明らかに飛び抜けて不器用でした。

ダンス、体操、ボール投げなどの全身運動。筆、はさみ、楽器などの道具を使う微細運動。そして日常生活の中でも服のボタンやファスナー、お弁当包みなど、あらゆることにサポートが必要でした。とにかく身体を使うことが苦手なのです。ちなみに両足ジャンプは年少の終わり頃、ケンケンは小学2年生でようやくできるようになりました。

のちに「DCD(発達性協調運動症)」と診断されるのですが、この頃は「スーパー不器用BOY」として過ごしていました。そんなスバルなので「鼻をかむ」ような高度な動きができるようになるのは、かなり先になるだろうと予想していました。

しかしある時スバルの鼻水が止まらなくなりました。なんと花粉症を発症したのです。私も花粉症ですが発症したのは大人になってからなので、こんなに早くに花粉症デビューしてしまったスバルが可哀想すぎて絶望しました。
鼻もかめないというのに……。

幼稚園では鼻がかめていない?

スバルは鼻がかめず鼻水を鼻の中に溜め込んでいるため、一度のくしゃみで飛び出る鼻水の量が半端なく、世界大会があるならば優勝が狙えるレベルでした。
なんと花粉症を発症したのです
なんと花粉症を発症したのです
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しかしスバルはティッシュを使い自分で丁寧に鼻水を拭いていたので、鼻の下はいつも綺麗でした。綺麗好きというより当時のスバルはティッシュペーパーやトイレットペーパーにこだわりがあり、ドラッグストアでお菓子をねだらずティッシュペーパーをねだるタイプの子だったのでさまざまなティッシュを使うことに喜びを感じていたのかもしれません。

そんなスバルなのに幼稚園から帰ってくると、鼻の下はいつもガビガビでした。幼稚園の教室にはティッシュが常備してあるとの事ですが、外遊びのときや活動中には、家にいるときのように頻繁に鼻が拭けないのだろうなと思いました。

鼻を拭かない理由が発覚

そんなある日、幼稚園のお迎えに行くとクラスのお友だちから呼び出され「スバルくんいつも鼻水垂らしてるから、どうにかしてくれない?」と言われました。保護者に直談判するって、よっぽど耐えかねてのことだと思います。

申し訳ない気持ちと共に、「家ではあんなにこまめに鼻を拭くのになぜ?」という疑問が浮かびました。先生に聞いてみたところ「活動中でも鼻水が出たらいつでも教室のティッシュで拭いて良いと伝えているのですが、私が気づいた時にはすでにガビガビになっていて……」と言われました。いつでも拭いて良いのなら、ティッシュ目当てで何度も拭きにいきそうなのになぜ?と謎は深まるばかりです。

本人にも「どうして鼻を拭かないのか」と聞きましたが、当時のスバルは3歳まで言葉が出なかったこともあり自分の気持ちを説明することが上手にできず、真相に辿り着けません。しかしスバルが幼稚園でだけ鼻水を拭かないのは、場所なのか環境なのか何か理由があるはずなのです。

「幼稚園で鼻水を拭くのいや?」「やぁじゃなーい」
「お友だちの前で鼻水を拭くのいや?」「やぁじゃなーい」
「教室に置いてあるティッシュのメーカーは?」「〇〇社のトイレットペーパー。シングル2倍巻き100メートル4ロールパック」

これだ!

幼稚園ではトイレットペーパーを鼻を拭いたり机を拭いたりマルチに使えるティッシュとして設置してあったようですが、スバルにとってトイレットペーパーはトイレで使うものなので鼻を拭くのが嫌だったのです。
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鼻を拭くために

真相は分かりましたが、このこだわりはASD(自閉スペクトラム症)の特性も入っているので説得してどうにかなるものではありません。
自分用のポケットティッシュを持たせれば良いと思うかもしれませんが、不器用を極めし男なのでポケットティッシュは一度に全部つまみ出してしまいます。戻すこともできないので一度に1パック使うのは現実的ではありません。

自分用の箱ティッシュを持たせることも考えましたが、もしかしたら先生に管理の手間をかけてしまう可能性があると考え、それもやめました。そこで鼻水用のハンカチを持たせることを思いつきました。

しかし「トイレットペーパーはお尻を拭くもの」と同じで「ハンカチは手を拭くもの」とインプットされているスバルに納得してもらうには一工夫必要です。スバルはハンカチはタオル素材のものしか持っていないので、ガーゼ素材のハンカチを用意しました。ガーゼ素材のハンカチを触らせ素材の違いを確認させながら「これは鼻水を拭く用のハンカチ」と刷り込みました。柄にもこだわり、鼻水を拭いても心が傷まないように可愛くないものを用意しました。
鼻水用のハンカチを持たせることを思いついたけれど……
鼻水用のハンカチを持たせることを思いついたけれど……
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それでもまだ「鼻水専用か……それならまあ……」「でもハンカチって名前だしな……」という表情をしていたので、もうあと一押し何かないかと考え、インターネットで「ヨーロッパの人はハンカチで鼻水を拭く」という内容の記事を探してきてスバルに読ませました。
するとスバルは「ヨーロッパの人がそういうなら」と納得してくれました。


こうしてスバルは幼稚園でもこまめに鼻水を拭くようになり、鼻の下がガビガビになることもなくなりました。鼻水専用ハンカチはポケットティッシュが1枚ずつ引き出せるようになった小学2年生まで活躍しました。小学校高学年の現在は「自称・鼻がかめるようになった」のですが、音を聞く限り3回に1回は明らかに吸い込んでいます。正真正銘鼻がかめるようになるまではもうしばらくかかりそうです。
執筆/星あかり

(監修:室伏先生より)
鼻がかめない時期のスバルくんの花粉症対策について、ユーモアを交えて共有くださり、ありがとうございました。私も参考にさせていただきました。幼稚園でのティッシュのメーカーの確認や、鼻水専用ハンカチの素材や柄の工夫、ハンカチで鼻水を拭くことを納得してもらうための記事など、スバルくんの思考のパターンや好みを理解しているご家族だからこそなせる技ですね。

DCD(発達性協調運動症)は、年齢に見合った運動の調整が難しく、その結果として日常生活にさまざまな支障が出る状態を指します。「協調運動」とは、身体の複数の部位が連動しながら動作を行うことをいいます。鼻をかむ動作も、片方の鼻を抑えながら、鼻から勢いよく空気を押し出すという、同時の動作が必要となります。
DCDでは、キャッチボールや縄跳びが極端に難しい、はさみや箸が思うように扱えない、文字を書くことに苦労するなど、粗大運動から微細運動まで幅広い領域に困難さが見られ、それが日常生活にも影響します。

支援としては、療育(児童発達支援)で理学療法や作業療法を行ったり、その子の苦手に合わせて段階的にレベルアップしていく練習なども大事ですが、その子ができる動きの中で、日常生活がなるべく困らないように補う工夫・環境調整もとても大事です。このようなアイデアをたくさん参考にしていきたいですね。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030830
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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