【聴覚過敏/読者体験談】学校で椅子を投げパニックに。息子を救った「お守り」イヤーマフを手放すまでの10年間

ライター:ユーザー体験談
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「うちの子だけがこんなに大変なのかな」「いつまでこの状況が続くのだろう」――ASD(自閉スペクトラム症)やLD・SLD(限局性学習症)の診断がある息子の子育ては、私にとって、終わりが見えないトンネルを歩いているようでした。
困難を極めた息子の小学校時代、あるアイテムとの出合いと、私が勇気を出して踏み出した一歩についてお届けします。
【発達ナビではユーザーさんからの子育てエピソードを募集中!今回は「聴覚過敏による学校生活」についてのエピソードをご紹介します。】

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。

ザワザワ、暗黙のルール、給食……苦痛だらけの学校生活

この記事で分かること

  • 発達障害の特性を持つ子が直面しやすい、小学校での聴覚過敏や対人トラブルのリアルな葛藤
  • 「お守り」としてのイヤーマフ導入後の子どもの具体的な変化
  • 学校や周囲の保護者へ特性をカミングアウトすることで変わっていったこと
  • 成長とともに自分で環境を調整できるようになる姿と、偏食や過敏を乗り越えていく中高生以降の見通し
お子さんについて
・お子さんの年齢:17歳
・お子さんの診断内容:ASD(自閉スペクトラム症)、LD・SLD(限局性学習症)
・診断がおりた年齢:ASD(自閉スペクトラム症)6歳、LD・SLD(限局性学習症)12歳
・エピソード内でのお子さんの年齢: 6歳

わが家の息子(現在17歳)は、6歳でASD(自閉スペクトラム症)、12歳でLD・SLD(限局性学習症)の診断を受けました。生真面目で融通が利きにくい性格で、学年が上がるにつれて悩みは軽減しましたが、特に小学校時代は大変でした。
息子にとって、小学校は常に聴覚過敏にさらされる環境でした。ザワザワした場所が大嫌いな息子にとって、学校生活は本当につらいものだったと思います。

  • 授業前の休み時間や、多くの声が一度に聞こえる騒音
  • 授業中の「はい!はい!」という挙手の声
  • ピアニカやリコーダーの不協和音
こうしたさまざまな音が大きく一気に聞こえるようで、授業中座っていること自体が苦痛だったようです。耳を塞いで耐えようとするもののどうにもならず、集中できずに落ち着かない日々が続き、先生から連絡をいただくことも頻繁にありました。
聴覚過敏で学校がつらい環境に
聴覚過敏で学校がつらい環境に
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また、学校での暗黙のルール(登校後の着替えや水筒のしまい方など)が理解できず、お友だちから指摘されると怒ってしまうこともありました。また、正義感が強いゆえに、先生の注意を守れないお友だちに手が出たり、物を投げてしまったりと、トラブルにつながる行動も発生し、担任の先生から発達検査を勧められました。

当時の私は、先生から問題行動を聞くたびに、自宅で細かく学校の様子を聞き出していました。学校で先生に注意され、自宅でも私が否定的なことを言ってしまい、息子が話してくれなくなるという状況も生じました。

また、食事では偏食もありました。例えば、野菜は単品なら食べられてもサラダのように混ざると食べられない、混ぜごはんは食べられないなどです。給食が食べられない日は、学校の理解を得て、おにぎりを持参するなどの対応もしていただきました。

椅子を投げる事態に。聴覚過敏を救う「お守り」の導入

学校で問題行動が続く中、私は発達障害についての知識を得るために図書館に通い、イヤーマフの存在を知りました。すぐに担任の先生に相談したところ、特別支援学級の先生と共に校長先生や教頭先生に掛け合ってくださり、スムーズに学校でのイヤーマフ使用許可が下りました。発達障害に知見のある特別支援学級の先生が、イヤーマフの有効性を伝えてくれたのが大きかったようです。

息子には、先生が皆に説明した後で使うように伝えていました。しかし、登校してすぐ、ランドセルにイヤーマフが入っているのを見つけたクラスメートが、「いけない物を持ってきている!」と騒ぎ立ててしまいました。生真面目な息子は、取り返そうとパニックになり、近くにあった椅子を投げてしまったのです。幸い怪我人はいませんでしたが、大きな問題となりました。

担任の先生の計らいで、息子は特別支援学級でクールダウンし、その間に先生がクラスの子たちにイヤーマフは息子にとって必要なものであることを説明してくれました。特別支援学級の先生は、息子の気持ちを受容しながら、「椅子は投げてはいけないもの」だと諭してくれました。初日こそトラブルが起きてしまったものの、イヤーマフを使い始めた息子の様子は劇的に変わりました。
「これは良い!!ザワザワした感じが少なくなった!」と、息子はうれしそうに言いました。
「イヤーマフでザワザワした感じが少なくなった!」とうれしそうな息子
「イヤーマフでザワザワした感じが少なくなった!」とうれしそうな息子
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導入後に見られた主な変化は以下の通りです。
  • 手で耳を塞ぐことがなくなり、授業をきちんと聞けるように
  • LD・SLD(限局性学習症)による板書困難と忘れ物の減少
  • 過敏によるストレスが減り、それまで毎日あった学校からの連絡の減少

私にとっても、土日の買い物にも一緒に行けるようになるなど、親子で心穏やかに過ごせる時間が増えていきました。イヤーマフは、私たち親子にとって欠かせない「お守り」となったのです。

イヤーマフで変わった息子。孤独な育児と「負のループ」に陥っていた母にも徐々に変化が

イヤーマフを使い始めてから、息子の学校での様子は劇的に改善しました。しかし、私自身、学校からの連絡に怯える日々の中で、深く疲弊していたのだと思います。当時は、周りの親御さんの視線が痛く感じ、誰にも相談できず、一人で涙を流す日が多くありました。
「私には育てられないのではないか」「どうしてうちの子だけ……」と、負のループにはまり、身動きが取れず、息子にあたってしまう自分も嫌でした。

そんな中、息子がイヤーマフを使い始めたことが、私にとっても大きな転機となりました。もう限界だという思いから、保護者懇談会という場で、勇気を振り絞ってすべてを話すことを決意したのです。涙で声が詰まりながらも、息子の特性や、これまでの胸の内を、一気にカミングアウトしました。

この行動をきっかけに、職場でもカミングアウトしたところ、同じように困難な経験をされていた先輩ママが、「自分を責めないで!」と声をかけてくれました。この言葉は、孤立していた私を救ってくれました。カミングアウトしたことで、「息子くんがどんなことが苦手なのかをうちの子にも話すね」と言ってくれる保護者の方も出てきました。親から子へ、子から友だちへと伝わることで、少しずつ支援の輪が拡がっていったと感じています。
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