弟のパジャマが変えた息子のこだわり、そして現在

そんな息子にも、転機が訪れました。年長の夏の終わり頃、下の子が(かつて息子が着なかった)半袖パジャマを着ているのを見て、突然「半袖のパジャマを着る」と言い出したのです。小さめのお下がりしかありませんでしたが、本人が「それでもいい」と言うので着せてみると、意外にも平気そうでした。

現在11歳になった息子は、半袖を着られるようになりました。 ただ、膝が出る感覚が嫌だという「感覚過敏」は残っており、今でも夏は「半袖+長ズボン」か「半袖+七分丈」が定番です。学校でも事情を説明し、体操着は長ズボンで過ごしています。

親の「常識」を手放して、その子の「感覚」に寄り添う

当時の私は自分の常識で「暑いから半袖半ズボン!」と頭ごなしに強制してしまっていました。でも今は、息子が言葉で気持ちを伝えられるようになったこともあり、私も「不快な気持ちやこだわり」を受け止められるようになりました。「半袖半ズボンは嫌なんだね。でも長袖だと熱中症が心配だから、半袖だけでもどう?」今ならそんな風に、息子の感覚に寄り添った声かけができるのではと思います。
今でこそ、相談したり自分で調べたりするのが当たり前になりましたが、当時はそれにも慣れていませんでした。児童発達支援事業所やST(言語聴覚療法)も月1回利用していたので、分からないことはすぐに聞いてみればよかったのですが、周りに聞くことに慣れておらず、今思うと「もったいなかったな」と感じます。そして息子には、気持ちを受け止めつつ、無理のない範囲での提案をしてあげたかったなと思います。

発達障害がある子の子育ては、今までの自分の常識が通用しないことが多々あります。私も「普通はこうするはず」という思い込みから、息子が心の底から嫌がる気持ちを想像できていませんでした。理解するのは難しくても、まずは「その子自身の気持ちや感覚」を否定せずに受け止めることが大事なのだと、今では思っています。
イラスト/よしだ
エピソード参考/りん

専門家コメント(小児科医 新美妙美先生)

お子さんの服のこだわりに関するエピソードを聞かせて下さりありがとうございます。
衣服に関するこだわりは実に多種多様で、発達特性のあるお子さんにはよく見られる困りごとの一つです。背景には触覚過敏などの感覚の偏りがある場合が多く、肘や膝が出る感覚、布地の質感、締めつけなどが強い不快感につながることがあります。一方で、必ずしも感覚だけが理由とは限らず、変化への抵抗感や「いつもと違う」ことへの不安から特定の服装にこだわるケースも少なくありません。そのような場合には、カレンダーなどを用いた視覚的な予告が役立つことがあります。例えば「7月からは半袖」といった基準をあらかじめ示すことで、見通しが立ち、納得して移行できることもあります。

また、記事にあるように、大人の常識に当てはめるのではなく、本人が感じている感覚を尊重する姿勢も非常に大切です。どうしても半袖が難しければ、まずは薄手の七分袖にするなど折衷案を探ることは現実的で有効な対応です。安心できる選択肢を残しながら少しずつ経験を広げていくと、今回のように「興味を持って着てみたら大丈夫だった」とバリエーションが増えることもあります。このプロセスは偏食への関わりとも共通しており、無理に変えさせるのではなく、安心を土台に選択肢を広げていく視点が重要です。

児童発達支援の先生が提案された「まずは長袖で登園し、園で着替える」という柔軟な対応も印象的でした。困りごとは家庭だけで抱え込まず、周囲の支援を借りながら環境を調整することで、親子双方の負担は大きく軽減します。子どもの特性を理解しようとする姿勢と、無理のない方法を探し続ける関わりが、お子さんの安心と成長につながっていくことを教えてもらいました。(監修:小児科医 新美妙美先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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