【高校生実例】切り替えが苦手だった息子が、スマホ、タブレットを「自ら納得してやめる」まで。親が感じた幼少期からの成長

ライター:丸山さとこ
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神経発達症(発達障害)がある息子は現在高校生です。彼が体調を崩したある日の会話をきっかけに、以前とは違う一面に気づく出来事がありました。今回は、そんな彼の変化と、かつて私が担っていた『たくさんの説明』について振り返ってみました。

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監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。 現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。

切り替えが苦手な息子と、デジタル機器の管理の難しさ

子どもには珍しくないことですが、コウは一度ゲームやPCに手をつけるとやめられなくなりがちです
子どもには珍しくないことですが、コウは一度ゲームやPCに手をつけるとやめられなくなりがちです
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GIGAスクール構想で避けられない!?デジタル機器とどう付き合う?

神経発達症(発達障害)のある息子のコウは、一度ゲームやPCでのプログラミングに手をつけると、なかなかやめられなくなりがちです。

切り替えが苦手だからなのか、それもあっての『過集中』と呼ばれる状態なのか。理由は一つではないと思いますが、ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠陥多動症)のある子どもには、比較的よく見られる傾向だと聞くことがあります。

これに関しては、程度は違うにせよ、定型発達の子どもであっても珍しくはない話だと思います。
2020年頃からは、文部科学省の『GIGAスクール構想』により、学校からタブレットが貸与されるようになってきました。そのため、デジタル機器に触れさせないという選択は、現実的には難しいご家庭も多いのではないかと思います。

わが家では、コウと相談した上で、使用時間の上限は大体一日2~3時間くらいとしています。彼の体調によっては早めの切り上げを提案することもあります。
切り替えができずにやめられなくなっている場合は、休憩を挟むことで、「あと〇分で終わろう」「今日はここまでにしておこうかな」と行動の選択がしやすくなるようです。

調子が悪いときでも「ここでやめておく」が選べるようになってきました

そんなコウが、少し前に風邪をひきました。幸い熱はすぐに下がったものの、体調が完全には戻らない中で、暇を持て余した彼がタブレットやスマートフォンに触れる時間は、少しずつ増えていきました。

私はそれを見て、「一日中ではないとはいえ、これだけ触る時間が長くて大丈夫かな……?」と、少し気になりました。というのも、彼は、タブレットやスマートフォンを長時間使っていると回復が遅くなる傾向があったからです。
スマホやタブレットの使用時間が長くなってきているコウに、提案の形で声をかけてみると……?
スマホやタブレットの使用時間が長くなってきているコウに、提案の形で声をかけてみると……?
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そこで私は、経験則として感じていることを、そのまま伝えてみました。
「これまで見ていて思うことで、根拠は弱いんだけど。コウはスマホやタブレットを使っていると、どうも回復が遅くなる気がするんだよね。そろそろやめておいたほうがいいかも」と率直に言ったのです。

すると、コウは意外なほどあっさりと「そうだね」と言い、端末をしまいました。
「え、意外~!」と私が驚くと、彼は「早く治したいからね~」と笑い、こちらに向かってピースをしてみせました。

『モチベーションが高ければ、それに比例して実行機能も上がる』なんてシンプルな展開は、普段の彼にはあまり期待できません。
それでも、「早く治りたい」という気持ちは、彼が動く助けになるのだなと、少し感心しました。

少しだけ、自分に起きていることを見られるようになったかも……?

そうして、「今日は早く寝る」と言い身支度を整え始めたコウに、私は何気なく、こんなことを言いました。

「テレビや動画を見ているときは、そこまで影響がある感じはしないんだけどね。同じデジタル機器なのに、不思議だね。楽しいから、無理して起きちゃうのもあるのかな?」と。

特に答えを求めるつもりもなく口にした言葉でしたが、息子は「あ~」と一瞬考えてから、「テレビとか動画は受け身だからじゃない?」と返しました。「スマホやタブレットは、頭がずっと動いて休まらないから、眠りの質が悪くなりやすいんだと思う」と言うのです。
私が何気なく口にした疑問に、コウは意外な言葉を返してくれました
私が何気なく口にした疑問に、コウは意外な言葉を返してくれました
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それを聞いて、「ああ、確かにそうかもしれないね」と私も納得しました。それと同時に、ふと、過去のコウとのやりとりを思い出していました。

コウのための『説明』を、大量に用意していたあの頃

「距離を開けて」に「どれくらい?」と返されて

コウが小学生の頃、彼が納得するための理由は、ほとんどすべて私が用意していました。
「なんで?」「おかしい」「これはこうだったのに、どうして?」と日常の中で次々に生まれる彼の疑問。それらに対して、できるだけつまずきにくい答えを返そうと、私は四苦八苦していました。

例えば、その頃のコウは、買い物中によく私にぶつかっていました。座る距離が近すぎて私がよろけたり疲れたりすることも多く、とにかく『距離』を意識することが難しいようでした。

「距離を空けて」と伝えると、当然「どれくらい?」と聞かれます。そんな彼の疑問に、私は「座る時はこぶし二個分」「隣を歩くときは、腰に手を当てて肘が当たらない距離」「前後に並ぶときは、前ならえの距離」と、具体的に答えました。
スーパーでの買い物中などに、少しずつ『一緒に行動するときの距離』を練習していきました
スーパーでの買い物中などに、少しずつ『一緒に行動するときの距離』を練習していきました
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そして、「その距離を保つことで、急に立ち止まったり、手を伸ばしたりしても、人にぶつかりにくくなるからね」と説明しました。

「身長が大きくなれば、その分だけ手足も長くなるでしょう?一歩も大きくなるし、手をぱっと動かしたときに当たる距離も広くなるね。だから、今後コウが大きくなっても、概ね有用な距離感になると思うよ」

私がそう言うと、コウは「それは確かにそうだ」と納得していました。
その頃は、前述の説明と同時に、パーソナルスペースの概念や『関係や個人の好みによる距離感』のことも、大まかに伝えていました。

それらの説明は、小学生にする説明としては長く、入り組んでいたと思います。ですが、彼にはこれくらいの説明がないと、「普通そうでしょ」「見れば分かるでしょ」とされることを飲み込むのが難しいようでした。
また、このような説明があることで、パニックが減るという面もありました。

「自分で考えて、人と話して、納得する」ができるようになってきた今

当時、もし「30センチくらい離れて」と伝えていたら、コウはメジャーで距離を測り続けていたかもしれません。「ラップの芯くらい」と言っていたら、芯を持ち歩いていた可能性もあります。

そんなコウも、自分の身体を基準にした説明であれば、身一つで出かけていても確かめることができます。腰に手を当てて回転する子どもは少し目立つかもしれませんが、当時の息子はよく跳ねたり回ったりしていたので、腰に手を当てる動きが増えたところで全然気になりませんでした。

昔の話が長くなってしまいましたが、そんな訳で、『大量の説明を必要としていたコウが、今では自分で考え、自分なりの説明を用意できるようになっている』という姿は、私から見ると、とても感慨深いものでした。

自分が好きなものに対して、行動や気持ちの切り替えを行い、「切り替えた方がいい理由」を考えるのは、彼にとっては簡単なことではなかったはずです。
あまりに当たり前のように行うので、私もスルッと流しそうになりましたが、改めて考えてみると、小さな変化の積み重ねに驚かされます。

もちろん、今でも「なんで?」となる場面は時々あります。それでも、それを会話の中で穏やかにやり取りできるようになってきたことに、コウの変化を感じました。
コウが『当たり前のこと』のようにする行動は、小さな変化の積み重ねでできているのだなとハッとしました
コウが『当たり前のこと』のようにする行動は、小さな変化の積み重ねでできているのだなとハッとしました
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執筆/丸山さとこ

専門家コメント 室伏佑香先生(東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科)

コウくんの素敵な成長について共有していただき、ありがとうございます。読んでいて、こちらまで嬉しくなってしまうような文章でした。
神経発達症(発達障害)のあるお子さんでは、人との距離感や、相手の表情・しぐさの意味を直感的に理解することが難しい場合があります。そのため、対人関係に不安を感じたり、周囲から理不尽な注意を受けてしまったりすることも少なくありません。こうした状況に対する一つの方法として、経験の中から学び、似たシチュエーションに出会ったときに、以前うまくいったパターンを当てはめていくというプロセスが必要になることがあります。
これはご本人にとって決して簡単なことではなく、多くの努力を伴う作業です。だからこそ、ご家族がその内側でどのような試行錯誤が行われているのかを理解し、時には見守り、時には手助けをしていくことがとても大切だと思います。
コウくんがこうした学びを積み重ねてこられた背景には、ご家族の丁寧で根気強い関わりがあったのだと感じました。そして、その積み重ねが、今のコウくんが、自分自身で考えるという大切な力を育んできたのだと思います。(東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科 室伏佑香先生)
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https://h-navi.jp/column/article/35030880
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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