【保護者に聞く「親なきあと」の今】重度障害がある娘の将来に必要な金額は?18歳までに任意後見、遺言や信託の準備も考え始めて

ライター:LITALICOライフ
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「保護者に聞く『親なきあと』の今」では、さまざまなご家庭がお子さんの将来に向けて「今」どんな準備をしているのか、インタビューからリアルな思いや備えをお届けします。
今回は、重度障害のお子さまを持つMさまご夫婦です。お子さまの将来の住まい、暮らしへの願いや、「親なきあと」を見据え家族全員の幸せを考えた備えについて伺いました。

特別支援学校の高等部専攻科に通うご長女

いつか必ずやってくる「親なきあと」への不安。保護者の方へのインタビューを通して、ご家庭ごとの「今、具体的にどう備えているのか」というリアルな声をお届けし、将来へのヒントを探ります。
今回は、重度障害のお子さまを持つMさまご夫婦。お子さまの将来の住まい、暮らしへの願いや、「親なきあと」を見据え家族全員の幸せを考えた備えについて伺いました。

家族構成
  • 夫婦
  • 娘:19歳(高校卒業して1年目・特別支援学校高等部専攻科在学)、知的障害・身体障害
ーーお子さまがどんなふうにこれからを過ごせたら幸せだろうなと考えていますか?

正直とても不透明で、その時その時に一番いいと思った選択をしているつもりなので、「親なきあと」のようにすごく先のことまでは考えられていません。

娘は今高校を卒業して1年目で、特別支援学校の高等部専攻科に通っています。身体障害1級、知的障害3度と障害が重めなので、働くといっても就労継続支援B型か生活介護だと思うのですが、この先長く福祉的就労をすることを考えたときに、もう少し青春させてあげたいな、と思い専攻科に通うという選択をしました。

卒業後は、しばらくは就労継続支援B型事業所に通所し、体力的についていくのが難しくなったら生活介護、というような道を検討しています。

住まいについては、娘が30歳になるくらいまでにグループホームに入れたいと考えています。親なきあと、歳をとってからグループホームに入所するのは適応するのが難しく本人もつらいと聞きますし、ほかの入居者や職員との相性もあると思うので、合わなかったら一回家に戻る選択肢もある親も子も元気なうちにグループホームに入れればと思っています。

ーーお子さまは将来どんな所に住めるといいなと考えていますか?また、そのために必要な準備は何かしていますか?

一人っ子なので、今のところはグループホーム一択かなと思い、さまざまなグループホームのリサーチや見学はしています。ただ、福祉は変わっていくので、今すべてを決めるのは難しいなとも思います。

まだ私の母も夫の母も近くで生活しているため、しばらくは引っ越しなどは考えていませんが、もし娘にとって相性のいい就労継続支援の事業所があれば引っ越しも検討しています。ただ、私も夫もこの近くで生まれ育っているので、あまり地方に行くことは考えていませんね。

ーーご家族で、障害があるお子さまに関わることについて「家族会議」のような形でお話をしたことはありますか?

福祉については私が学んでいたり、福祉に近い仕事をしていることもあり、一番詳しく、基本的には私のトップダウンで決まります。でも夫には後見などの大事な話は必ず相談しています。夫は専門外なので、複雑な制度の話などは私の説明だけでは理解は難しいようなので、親なきあとの講演会などにも一緒に参加して、理解する努力はしてくれます。

両母(娘にとって祖母たち)は娘については、私たち夫婦に任せると言ってくれています。私たちからは娘の資産を増やしすぎると成年後見などの問題も発生するため、娘に相続財産を遺さないでほしいとは伝えています。
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障害年金や手当て以外に、月々3~4万円は遺したい

ーーお子さまが将来、一生涯で「いくらお金がかかるか」具体的な金額のイメージはお持ちですか?

過去にグループホームで生活した時にかかる費用を計算したときに、両親の死後に成年後見人がつくと月2~3万円かかるし、生活費も少し余裕を持たせると、30年で2000万円くらいは遺した方がいいなと思いました。

障害年金と諸々の手当を加味すると東京では月々14~15万円くらいは収入があり、収支はトントンで生活できると聞いています。でも少し遊びに出かけたり、きれいな服を買ったり、タブレットを定期的に買い替えたり、余裕を持った生活をするには月2~3万円くらいプラスで持っている方が良いと、見学先のグループホームの方が教えてくださったこともあります。高齢になって高齢者施設に移った場合、大部屋と個室とでは費用差が3~4万円あるとも聞きました。近年の物価上昇も考えると、月々3~4万円は遺してやれないかなと思います。

ーーお子さまの将来のお金について、今から準備していることや予定していること、すでに取り組んでいることはありますか?

親なきあと対策としては、任意後見である両親のたすき掛け後見を、娘が18歳になる前に契約しました。

そのうち遺言、信託なども準備しなくてはいけないなと思っていますが、まだ50代なので気持ちに余裕を持っている部分もありますね。自分の中で切りが良い「還暦までには遺言を!」と思っています。

遺言によって自分が亡くなってから信託をスタートする福祉型信託のサービスを提供する会社があると知りました。そのサービスでは金銭だけでなく自宅不動産も信託できるので、無理に売却して現金化しておく必要もなく、私も夫もギリギリまで自宅で生活できますし、遺言も一緒に準備できるので、それを利用して自分の遺産から娘に定期給付するのが一番しっくりくるかなと思っています。

ーー公的な障害年金や手当のほかに、扶養共済や生命保険、NISAなど、お子さんの将来に向けての経済面での準備はなにかしていますか?

NISAは私自身は始めようと思っていますがまだ手を付けてはいません。扶養共済については検討したこともありますが、親の年齢が高いと掛け金が高くなると知りやめました。

ーー障害がある子への相続に関しての対応や、親御さんが亡くなった後の備えとして成年後見や信託などについて検討したことはありますか?

初めて成年後見人のことについて知ったのは、仕事の関係で市民後見人養成講座を聞く機会があった時です。

市民後見人の費用は実費程度ですが、圧倒的に成り手が少なく、資産が一定程度あると専門職の成年後見人が付き、一度始めると外すこともできず、何もしなくても費用が月に2~3万円、30年で1000万円飛んで行ってしまうと知ったのは衝撃でした。また、どの後見人になるかは家庭裁判所の一存で決まる点も懸念です。後見人によってはお金の出入りのコントロールが自由にできなくなる可能性があるということも考え、わが家は任意後見を結ぶことにしました。

ただ、成年後見制度が使いやすく改正される方向だと聞くので、今後はそこまで警戒する必要はないかもしれません。そもそも成年後見は必要な制度だと思っているので。

ーー最終的に、どんな状態になっていれば、ご自身が安心して「親なきあと」を迎えられると思いますか?

財産管理に関するサービスについてはいろいろと選択肢があると思いますが、身上監護については心配が残りますね。お金を遺しても、実際に本人の生活が豊かになるために使ってもらえるのでしょうか。身上監護をしてくれる施設の人や成年後見人など、娘の支援に関わる人たちみんながつながれるネットワークができて、私たち親や本人の意思をしっかりと汲み取ってくれる状態になれば良いですね。今でも個別支援のために支援者がチームとなる「ケース会議」を行う仕組みはありますが、突出した問題がないと行われていない印象です。本来は全員に広がると良いですよね。

福祉サービスを受ける中で最近よく「意思決定支援」「権利擁護」と言う言葉を聞きます。本人の意思を汲み取る望ましい世の中の動きなんだと思いますが、実はとても不安があります。想像したり、情報媒体から知識を得る力の弱い知的障害者が経験のない事や物を選択するってあまりないと思うんです。知っていることが狭ければ、選ぶことが狭くなり、単調な生活になる……本当の幸せだとは思えません。親なきあとも娘の経験と世界を広げつつ、意思をしっかりと汲んでくれるいい支援者がそばにいてくれれば、と願っています。

とりあえず私は、できる限りの選択肢を持たせるために、娘の経験値を上げる努力を続けています。また、自分の意思を周りの支援者に伝えられることも大切です。小学校中学年になるまで発語のなかった娘ですが、Yes/Noの意思表示はもちろん、簡単な内容であれば話せるようになりました。お陰で、娘は何でも楽しめる「置かれたところに咲く子」に育っていて、実はそこそこ幸せに暮らしていけるのではないかと思っています。

障害のあるお子さまの「親なきあと」について考える

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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

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